極東極楽 ごくとうごくらく

豊饒なセカンドライフを求め大還暦までの旅日記

どう立て直す太陽電池立国

2010年12月26日 | 時事書評


柊の 棘刺さりたる 血涙を 酒で洗いて キーを叩く





【生産量逓増の中の凋落】

2010年、世界的な景気停滞傾向が続く中、
太陽光発電モジュール各メーカーは売上
高増、生産増を続けた。太陽光発電モジ
ュールの種類では、薄膜への移行が進む
とも言われるが、結晶系の需要の根強さ
が明らかになったが、それだけでない、
日本のソーラーセルメーカの凋落が明確
となった年でもある。




世界の太陽電池産業をリードしてきた日
本メーカが「落日の危機」に直面してい
る。メーカ別生産量で2005年にトップ5
のうち4社を占めた日本勢は、10年には
5位以内から姿を消すことがほぼ確実な
情勢となった。米国や中国の専業メーカ
が積極的な投資で生産能力を一気に高め
たのに対し、増産ペースの早さに日本勢
がついていけないというのが実情だ。シ
ェアの後退は量産効果の低下をもたらし、
収益面に悪影響が出かねないため、日本
の各メーカーは巻き返し戦略を練ってい
る。



ただ、設備容量の大きなプロジェクトの
収益性力が上り、数10メガワット(MW)に
近い設備容量を持つ地上設置プラントが
多く生まれてきているが、日本の三洋電
機がイタリアで約76MWの大規模太陽光発
電所を受注した。このことは世界全体の
新規設置容量を押上げ、各国での再生可
能エネルギー導入施策の後押しと相まっ
て、2010年の太陽光発電セル生産量ラン
キングでは、前年に比べ多くの企業が増
産となってはいる。





日本勢の失速理由は、海外勢台頭だけで
はなく、自滅がある。原料であるシリコ
ンの調達失敗があり、太陽電池の需要急
増と半導体需要が重なり、シリコンメー
カへの前払い金支払いや長期契約が常態
化したが、日本メーカーはこれに躊躇し
ているうちにシリコンのスポット価格は
急騰し、手が出せなくなった
。京セラや
三洋も遅ればせながら長期契約を結んだ
が、出遅れたシャープは調達が不十分と
なり、2007年は生産能力の半分程度の363
メガワットしか生産できなかったという。

もうひとつは、足元の日本市場の停滞。
導入成長率は、
住宅向け設置補助金の打
ち切られた2005年以降横ばいとなり
、太
陽電池モジュールの国内向け価格は、

州の60~70%程度であり儲けは薄い
。日
系メーカも輸出優先でその比率は7割を
超え、国内市場が収縮する(技術革新を
続ける上でも母国市場の活性化は必須で、
エネルギー自給率が4%と低いにもかか
わらず、行政、メーカー、電力会社の思
惑が交錯し打開が遅れた)。

さらに、まず国の前提として「基幹電源
はあくまで原子力発電」(資源エネルギ
ー庁)であって、新エネルギー政策は二
の次だ
。という理由だとすると政策(国
家経営)での頓挫になるが、政府はどう
しようとするのか。ドイツで導入された
ようなFIT導入には電力会社が猛反発
し、2003年にRPS法、すなわち電気事
業者にその販売電力量に応じて一定の新
エネルギー利用量を義務づける法律が施
行された。

だが新エネルギーの選択肢が広く、しか
も利用超過分は翌年に繰り越せるなど制
度設計上の問題も多く、結果的に太陽光
発電の普及促進策としてFITに劣った

政策に市場形成の視点を欠いたまま、
市場の自立化という神話が平然とまかり
通った
」(飯田哲也・環境エネルギー政
策研究所所長)結果である。2003年、当
時の小泉純一郎内閣で特別会計のスリム
化が図られるなか、財務省は前例のない
"個人向け補助"で規模も大きかった住宅
向け設置補助金の打ち切ったのだ(2005
年)。

 

2007年には改正RPS法で、太陽光発電
システムに関しては2011年から利用量を
2倍換算と設定し、普及を促す手直しも
されたが遅きに失した。ドイツでは、電
力会社の買い取りコストが転嫁され、国
民の電気料金が約1割上がったが、脱原
発を掲げて政治主導している。このため
2009年1月に経産省が緊急提言に沿って
補助金を復活。また2009年2月には環境
省も再生可能エネルギーの導入に伴う費
用や経済効果の試算を発表し、普及政策
として固定価格買い取り制度の採用を提
案している。

2009年2月24日に経産省が初期投資の回収
年数を10年程度に短縮する助成制度の強
が発表された。当初は2010年からの実
施予定であったが前倒しされ、2009年11
月1日から開始。開始時の余剰電力の買
い取り価格は1キロワット時あたり48円、
エネファームやエコウィルなどの自家発
電装置を他に併設して居る場合は39円で
あり、設置後10年間は同じ価格で買い取
って貰える。また後から新規に設置され
た設備の買い取り価格は、年々引き下げ
られる予定である。


 

例えば11年度に設置した場合は、42円程
度になる見込み
で補助金の効果もあり、
日本の太陽電池生産量は拡大を再開し、
2010年度は関連産業の規模が1兆円近く
まで成長すると見込まれていた矢先の実
績というわけで国の政策によりもろに影
響を受けている格好となった。


2009年末には、全量買い取りの導入、太
陽光発電以外にも拡大することが検討さ
れ、検討状況が経産省のプロジェクトチ
ームのページで公開
されている。具体的
な制度については、様々な意見が出てお
り、従来のRPS制度や余剰電力買取制
度を廃止して全量買い取り制度に一本化
すべきとの意見があり、余剰電力買い取
りにも節電意識向上などの利点の指摘や
併用を提案する意見など様々な意見が提
出されているが、ヒアリング等を経て、
2010年8月に制度の大枠が示された。
2012
年度からの実施
を目指して調整が行われ
ている。

加えて、メーカ主体の問題も指摘してお
きたい。過去の経験から「薄利多売」は
やりたがらないというある種「営利官僚
的な」経営姿勢の呪縛からどう解き放つ
かという極めて主体的な問題
だ(「稼ぎ
vs. 勤め」)。「儲からなければやめる
」という民間的側面から、エネルギーと
いう極めて社会的な事業に対する民営的
インセンティブをどう獲得し、世界のト
ップに躍り出るのかという国民的自問で
ある。

           


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする