一人ぼっちでいる青年を思い浮かべていただきたい。
数滴の雨粒が窓ガラスをつたったときに
彼は書き始めた。
彼は安アパートに鼠たちを伴侶として住んでいた。
私は彼の勇気を愛した。
ちょっと先の部屋では誰かが
一日中セゴビアのレコードを聴いていた。
彼は部屋から一歩も出なかったが、誰もそれに文句はつけられない。
夜にはもう一人がタイプを叩く音も
聞こえてきて、それで心が和んだ。
文学と音楽。
誰もがスペイソの騎士たちと
中庭を夢見た。
祭礼の行列。儀式、そして
光輝。
ポプラの木。
雨がつづき、水があふれた日々。
木の葉はとうとう地面に打ちつけれらた。
わたしの心の中の、嵐が照らし出す
この大地の一画。
レイモンド・カーヴァー “ Aspens”
村上春樹 訳 『ポプラ』
Imagine a young man, alone, without anyone.
The moment a few raindrops streaked his glass
he began to scribble.
He lived in a tenement with mice for company.
I loved his bravery.
Someone else a few doors down
played Segovia records all day.
He never left his room, and no one could blame him.
At night he could hear the other's
typewriter going, and feel comforted.
Literature and music.
Everyone dreaming of Spanish horsemen
and courtyards.
Processions. Ceremony, and
resplendence.
Aspen trees.
Days of rain and high water.
Leaves hammered into the ground finally.
In my heart, this plot of earth
that the storm lights.
【イタリア版食いしん坊万歳:ミラノ風トリッパ】
ミラノ人達はトリッパ(牛の胃)料理の中でも、ミラノ風トリッパが一番であるこ
とを誇りにしていて、彼等はこれに親しみをこめてブゼッカ(busecca)ともいって
いる(さらにここからブゼッコーニというニックネームもある)。
材 料:牛の胃 1.22kg、バター60g、タマネギ1個、ニンジン1本,セロリの茎1
本、セージの葉 数枚、スーゴ用トマト500g、ブイヨン、塩、コショウ、
パルメザンまたはパダノのおろしチーズ、インゲンマメ 400g
作り方:まず最初にトリッパはよく洗い,不要なものは取り除いて、十分柔らかく
なるまでかなり長い時間煮る(普通市販されているものは、すでに洗って
ゆでられているが,もう一度ゆで直したほうがよい)。下ごしらえがすん
だら、バターを熟しセージの葉数枚と細かく刻んだタマネギ、ニンジン、
セロリを入れ,炒める。
これらが色づいてきたら、トマトの身を細かくしたものを加え、かき混ぜ
て塩、コショウで味付け、さらに煮続ける、必要ならばブイヨンを加えて、
数回かき混ぜる。料理はこれでできあがりである。
しかし、習慣としてトリッパにはマメを添えるのが普通。煮汁と混ざった
マメの柔らかい風味は,トリッパの風味にとてもよく合う。そこでマメを
料理にアレンジ。インゲンマメ400 g を前の晩から水に漬けておき、トリ
ッパを調理している間に別の鍋でゆでて、水気を切っておく。トリッパが
できあがる10分前に同じ鍋の中に入れ、かき混ぜる。別にパルメザンかパ
ダノのおろしチーズを添えて食卓に供す。