A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

夢の力を信じた恐るべき子供達~谷口宗一(BAKU)とパワー・オブ・ドリームズ

2013年03月07日 00時23分47秒 | ロッケンロール万歳!


年齢について思いめぐらしている。人間の若さ=青臭さが一番発揮された音楽は何かと考えて辿り着いたのがビートパンク。死ぬまで青春のジュンスカをはじめ1980年代末~90年代初めのバンドブーム時代のアーティストを"オレの庭"=BOOK-OFF250円コーナーで探し出し聴きまくっている。ジュンスカの作為のない青春一直線ロックもいいが個人的に再評価したいのがBAKU。全盛期には武道館公演を成功させ人気音楽TV番組にも出演していた大人気バンドでありながら活動期間3年と短命に終わりバンドブームの徒花としてロック史から完全に抹殺されている彼らの「歌える歌」をキャッチスレーズにした純真無垢なポップンロールには時代の閉塞感の突破口となるパワーがあると思うのだがどうだろう。

BAKU 「LIVE OK~ぞうきん~POWER OF DREAMS」


BAKUのオリコン3位の大ヒット作「聞こえる ~Power of Dreams~」(1991)のタイトルを見てハッとした。先日ビートパンク特集をしたときBAKUのヴォーカル谷口宗一の名前がスラッと頭に浮かんだのは何故か?その鍵は"Power of Dreams=夢の力"にあった。

パワー・オブ・ドリームズとは1980年代末にアイルランドから登場したギターロック・バンドの名前である。デビュー時の平均年齢17歳、結成時は15歳という若さに加え「思春期とは死に最も近い季節である」(デビュー・アルバム「イミグランツ・エミグランツ&ミー」日本盤解説[ロッキング・オン岩見吉朗]より)というフレーズにピッタリの大人社会への痛烈な断罪意識と思春期特有の虚無感に満ちた歌が高く評価され、特に日本で「恐るべき子供達」としてセンセーショナルに取り上げられた。現在ではブリットポップ以前1990年前後のUKロック・シーンにはマッドチェスターとシューゲイザーしかなかったような評価だが、他にもパワーズをはじめとしてジーザス・ジョーンズ、トラッシュ・キャン・シナトラズ、ワンダー・スタッフ、レヴェラーズなど個性的なバンドが多く存在しそれぞれ人気だったが結果としてひとつのムーヴメントに纏まらないので不等に無視されていることを指摘しておきたい。

Power Of Dreams - Stay


それはともかくBAKUがパワーズに強い仲間意識を持っていたことは明白である。日本と英国/アイルランドの社会環境・表現方法の違いはあるが、どちらも若さを武器に夢の力を信じてロック表現をしたことは共通する。1992年「バクは夢を食べ続けなければならない」というメッセージを残してBAKUを解散しソロ活動をスタートした谷口宗一はUKロックに接近し憧れのパワー・オブ・ドリームズとアルバムを共作。1995年にはパワーズをバックに武道館公演を成功させる。当時メジャー契約を切られインディーに戻って地道に活動していたパワーズにとってはデビュー時高く評価された日本のアーティストと共演し8000人の前で演奏したことはキャリア最大の出来事に違いない。90年代UKロック・バンドで武道館公演を果たしたのはブラー、オアシス、ハッピー・マンデーズ+ビッグ・オーディオ・ダイナマイト(この2マン公演は不入りでガラガラだった)くらいじゃないだろうか。2010年再結成したパワー・オブ・ドリームズのサイトには90年代の日本の雑誌記事が掲載されている。パワーズとの武道館公演の映像を観ると谷口の感性が当時の日本ロック界で如何に進んでいたかがよく分かる。当時海外ロックシーンと日本のロックのコラボはボアダムスや少年ナイフなどアンダーグラウンド系かフリッパーズ・ギターなど渋谷系に限られていたのでメジャーの谷口とパワーズの共演は画期的だった。

Soichi Taniguchi and Power of Dreams - 'Cyberwave Live', Japan 1995


谷口は1990年代後半から3LDK~The Trip White Hornet~手裏剣謹製(SHURIKEN)と活動、現在は写真家業の傍ら時折ソロライヴをしている。BAKUのギタリスト車谷浩司もSpiral Life~AIR~Laika Came Backと継続した活動を続けていることを考えるとBAKUは今こそ再評価されるべきバンドといって間違いない。

AIR - 夏の色を探しに (Live at Yokohama Arena)


夢食べて
パワー充電
突っ走れ

若さ故の夢の力で駆け抜けたパワーズと谷口宗一&BAKU。現在40代を迎えた両者が今何を思っているのか機会があったら尋ねてみたい。

ここまで書いたところで今年2月にBAKUの集大成DVDが発売されたことを発見。BAKUの音源の殆どはiTunesで販売されている。いよいよBAKU復活の予感?
コメント (4)
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