A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

NECRONOMIDOL(ネクロ魔)@渋谷WWW 2015.12.14 (mon)

2015年12月17日 00時41分39秒 | ガールズ・アーティストの華麗な世界


NECRONOMIDOL
TENEBRAE INVICTUS




現在SF/幻想文学ファンだけでなくアニメやサブカル系にもよく知られる『クトゥルフ神話』は、筆者にとっては『ク・リトル・リトル神話』と呼ぶ方が馴染みがある。80年代半ばに神秘主義・怪奇小説のちょっとしたブームがあった。コリン・ウィルソンやスティーヴン・キングの小説が映画化されたり、H.R.ギーガーのアートが人気を集め、その流れでH.P.ラヴクラフトが特集され、『ク・リトル・リトル神話』が紹介された。ネクラな大学生の筆者は、未知の異世界に惹かれ『ダンウィッチの怪』『インスマウスの影』『クトゥルーの喚び声』等を読みふけり、中原中也詩集とラヴクラフト全集をカバンに入れて持ち歩く痛い青春時代を過ごした。



海底深くから太古の生き残りが地上に現れて世界を恐怖に陥れる、というストーリーは、冷静に考えると子供の夢想に似た荒唐無稽さだが、母なる海を種の起源とする考えは人類の記憶に深く刻まれているのか、宇宙よりも親しみ深い世界観に魅了される者が多いのも頷ける。海だけでなく大地や砂漠に夢想力を広げ、地球平面説や地球空洞説を掘り起こす歓びもあった。同時期にB級サイケ症候群に感染した筆者は、その名も「H.P. Lovecraft」という60年代サイケバンドを愛聴していた。



H. P. Lovecraft - The White Ship (1967)


それから30年近く経って、ラヴクラフトやクトゥルフが遠い記憶の彼方に消えて久しい2014年夏、某レコード店のメルマガで「NECRONOMIDOL(ネクロノマイドル)」(以下ネクロ魔)のことを知った。クトゥルフ神話の世界観を持つオカルト系アイドルという宣伝文句と、ほとんど歌もメロディもない「あたいの爪痕」は正直言って「やり過ぎ」の感があり、近づきがたい気がした。また、2014年は、でんぱ組.incの武道館公演とBiSの解散があり、もう新しいアイドルはいらない、という気分になっていたことも確かだった。それも手伝って「2015年はバンドの時代」と宣言してバンドブームの復活を夢眠(ゆめみ)もした。


遺骨猛吹雪(2014/6/1)/霊魂消滅 (2014/11/12)

NECRONOMIDOL あたいの爪痕 MV


しかしいくつかの女子バンを除いては、新世代バンドの流れに追従することが出来ず、横目で見ていたアイドル界の活況に内心憧れていた2015年10月12日体育の日、大型電気チェーン店のコンコースで偶然遭遇したアイドルイベントのラインナップにネクロ魔の名前を発見、ちょうど時間があったので怖いもの見たさで覗いてみた。蛍光灯の明るいインストアイベントでは暗黒系も形無しだが、白塗り娘を含め学生服に身を包んだメンバーのダンスは、他のアイドルとはどこか違っていて心がザワザワした。音源を聴きたいとCDを購入し「除霊会」という特典会に参加。間近で見る白塗り少女・瑳里(さり)の深い緑色の瞳の奥に、母なる海を感じて、クトゥルーの喚び声が聴こえる気がした。過去音源を入手し、発展途上ながら独自の世界を構築しようとする意欲に共感。1か月後に秋葉原のインストアで瑳里と初の接触(ツーチェキ)。瑳里が漏らした「アルバム発売情報」を口止めされた。12月1日に新宿で2回目接触。急速に心がネクロ魔色に染まっていった。


ETRANGER(2015/4/22)/EXITIUM (エクシティウム)

NECRONOMIDOL - LAMINA MALEDICTUM PV


正規のライヴは初参戦。直前まで懸命に告知・動員に励んだメンバーの努力が報われて、WWWはほぼ埋まり熱気が渦巻いていた。ステージ上には巨大なクトゥルフ像。物販で販売された塩ビのクトゥルフ人形(蛍光塗料で暗闇で光る)を手にしたファンも多い。ダークな照明の中にメンバーが登場「とおりゃんせ」の歌声が異界へ導いた。広いステージで観るとネクロ魔ダンスの特異性がよく分かる。バレエやモダンダンスを基本とした振付には、暗黒舞踏やパントマイムの要素もあり、後方移動や、円状回転の動きが多い。それはあたかもステージ上から見下ろす邪神に操られて無意識で踊る少女人形のように見える。コーラスが少なくマイクリレーで歌い回すスタイルは、アングラ演劇のせりふ回しを思わせる。バックライトやストロボを多用した照明と、壁に映し出されるカレイドスコープ模様と相まって、邪教の儀式を再現する。



セット半ばでハシダカズマ(G,箱庭の室内楽)、マモル(G, nhhmbase)、タッカー(G)、右田眞(B, nenem)、高石晃太郎(DS, peelingwards)からなる生バンドが登場すると、それまでヴォーカルに負けていたバックサウンドが、恐ろしいほどの迫力で武装強化され、歌・演奏・ヴィジュアルが三つ巴で拮抗する濃厚な音空間を創造し、オーディエンスの狂乱と昂奮を引き出した。ダイヴやリフトもクトゥルフ神の導きによる太古の獣の記憶の蘇りに違いない。会場全体が野獣の雄叫びに呼応して、別次元の時空にワープしたのかもしれない。



終演後の物販及び打ち上げは、それまでの狂乱が嘘のように静まり返り、穏やかな凪の海に浮かぶ箱舟のような安らぎの時間であった。しかしいつクトゥルフ神が凶暴に荒れ狂うか判らないのがネクロ魔の海の神秘である。

NECRONOMIDOL 12/07 下北沢 Shelter


セトリ
01.あたいの爪痕 (short .5人ver)
02.SKULLS IN THE STARS
03.暗黒少女戦隊
04.VULTURE
05.AZATHOTH改
06.ICHORE
バンドパート
07.童歌
08.ASTODAN
09.puella tenebrarum
10.SARNATH
11.LAMINA MALEDICTUM
MC~重大発表~
12.新曲


NECRONOMIDOL、1stアルバムは2月、ジャケット絵は丸尾末広

誰かくれ
ニューカレドニア
往復20万円

【発表されたこと一覧】
・ファーストアルバム NEMESIS 2月17日 全国リリース ・ジャケット 丸尾末広
・海外ツアーinニューカレドニア 3月20日~26日
・フォースワンマン 6月30日 恵比寿リキッドルーム



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