A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

【Disc Review】NYシーンの個性派・永井晶子の即興プログレ奇想曲『Taken Shadows(影踏み)』

2015年12月28日 00時46分39秒 | ガールズ・アーティストの華麗な世界


『Shoko Nagai / Taken Shadows』

CD Animul Records ANI 108

Shoko Nagai (p, moog, nintendo DS)
Todd Reynolds (vln)
Jonathan Goldberger (g, effects)
Stomu Takeishi (b)
Jim Black (ds)

1. Intimate Wish
2. Solid Angle
3. Lucy

Recorded by Worramon Jamjod, March 10th 2014 @ Roulette, New York
Mixed by Satoshi Takeishi
Mastered by Nate Wood at Kereeboom Mastering
2014 VortexMusic

Shadow Pappet art design by Shoko Nagai
Design by Damian Olsen
Photography by Satoshi Takeishi
All composition by Shoko Nagai (ASCAP)
(C) copyright 2014



生と死の影が交錯する音の鬼ごっこ

<生と死の間に住む悪魔にとって最悪の呪いは、死ぬことが出来ないことだ。>(永井晶子『Taken Shadows』ライナーノーツより)

子供向けの童謡や童話の荒唐無稽な表面の裏には、時に深淵な、時に残酷な、時に含蓄のある豊潤な人類の記憶が刻まれている。「カゴメの歌」の謎解きは度々テレビや新聞ネタになるし、『本当は恐ろしいグリム童話』と云う本もあった。

NY在住の作曲家/ピアニスト/アコーディオン奏者の永井晶子がテーマに選んだのは「影踏み(Taken Shadows)」。影を踏まれたら鬼になるという単純なルールの遊びだが、「影」の意味を探って行くと、人間・生・再生と、鬼(悪魔)・死・滅亡の二極間を往来する輪廻転生の物語が浮かび上がる。永井は、"本当は恐ろしい"影踏みの世界を舞台に、イマジネーション豊かな音楽叙情詩を描き上げた。

ヴァイオリン切ない調べで幕を開けると、すぐにピアノがリリカルな音色でファンファーレを奏でる。ギターが鋭角のリズムで切り込み、ドラムとベースが乱調のリズムで行進する。入り乱れた合奏が、無調の電子音で中断される・・・。これがアルバム冒頭5分間の展開である。とにかく場面変換が多彩で、一瞬たりとも飽きることのない、スリリングな曲想は、メンバー5人が繰り広げる鬼ごっこのようだ。ドラマー以外の4人のメンバーが担当楽器に加え、電子器機やエフェクトも担当している。メンバーそれぞれ複数の楽器を演奏するスタイルは、単なるクインテットではなく、フランク・ザッパ言うところの「低予算の管弦楽団(Low Budget Orchestra)」と言えるだろう。

誰が次の鬼になるのか、先の読めない影踏み遊びのように、驚きと意外性に満ちた楽曲展開は、作曲と即興の半々で構成されている。現代音楽、即興ジャズ、プログレッシヴ・ロック、エレクトロニクス・ミュージックなど様々な要素を含みつつ何処にも属さない新鮮な音楽性は、1999年からニューヨークに住み、NY即興シーンの第一線で活躍する一方で、女性ばかりのクレズマー・コンボ「ISLE of KLEZBOS」でアコーディオンを弾き、映画やテレビの音楽を多数手がけるマルチな才能の持ち主の永井に相応しい。

2014年3月10日、NYのルーレットに於ける同名コンサートのライヴ録音。YouTubeで公開されているコンサートの映像を観ると、バックスクリーンに映像が映し出され、聴き手を影の向こう側の世界に誘い込むようなヴィジュアル・コンセプトを持った作品であることが判る。こんなステージを生で体験したら、自分も鬼になって音符と追いかけっこをするスリルが味わえるに違いない。

Shoko Nagai's tAKE'N sHADOWS1@ Roulette NY


Shoko Nagai's tAKE'N sHADOWS II (KAGEFUMI) @Roulette NY


Shoko Nagai's tAKE'N sHADOWS III (KAGEFUMI) @Roulette NY

Shoko Nagai公式サイト

【Album Download】⇒cdbaby

ニューヨーク
異端女子の
攪乱作

ISLE of KLEZBOS


1998年にドラマーのEve Sicularにより結成された女性だけのクレズマー楽団。アメリカはもちろん、ヨーロッパやカナダをツアーし、そのユニークな活動は公共TV番組で特集された。NYをベースにライヴ活動しつつ、テレビ、ラジオや映画音楽を手がけ、キキ・スミスやシザー・シスターズなどポップ・アーティストとも共演する。グループ名はレズビアンの語源と言われるレスボス島(Isle of Lesbos)のもじり。

Debra Kreisberg, clarinet
Pamela Fleming, trumpet
Shoko Nagai, accordion
Saskia Lane, double bass
Eve Sicular, drums and bandleader

Isle of Klezbos plays Cartagena Chosidl, Joe's Pub 4/6/2014

ISLE of KLEZBOS公式サイト
コメント
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