上原ひろみ THE TRIO PROJECT
featuring アンソニー・ジャクソン&サイモン・フィリップス
世界を舞台に活躍する人気ピアニストとスタープレイヤー2人による最強のトリオ
去る4月に行なわれたソロ・ピアノ公演も大反響。ヨーロッパでのツアーを経て、FUJI ROCK FESTIVAL 2015ではメインのGREEN STAGEに登場、世界を舞台に活躍するグラミー・ウィナー上原ひろみがこの冬 “HIROMI THE TRIO PROJECT”でブルーノート東京に帰ってくる。同プロジェクトは2011年、コントラバス・ギターのアンソニー・ジャクソン(矢野顕子、スティーヴ・ガッド、ミシェル・ペトルチアーニ等と共演)、ドラムスのサイモン・フィリップス(ジェフ・ベックやミック・ジャガー等と共演)と結成。これまで3作品をリリースし、目下の最新作であるアルバム『ALIVE』はiTunesジャズアルバムランキング1位に輝いた。来たる結成5周年を前に、一層の進化・発展を続けるザ・トリオ・プロジェクト。不動のメンバーならではの鉄壁のアンサンブル、無限に広がるイマジネーションに浸りたい。
Hiromi Uehara(p) 上原ひろみ(ピアノ)
Anthony Jackson(b) アンソニー・ジャクソン(ベース)
Simon Phillips(ds) サイモン・フィリップス(ドラムス)
昨年12月に来日公演を観た「世界を駆ける鍵盤の異端児」上原ひろみが、今年も年末興行中。「楽屋で温かい食事が食べられることが何より嬉しい」と語る裏には、他国で散々冷や飯を喰わされた苦い想いがあるに違いない。その悔しさを晴らそうと、ブルーノートのシェフと共同で特別メニューを開発、餃子をアレンジした<鶏餃子 柚子胡椒のコンディモン>とどら焼きの「どら」が麩になった<アンコのアイスとマスカルポーネクリームのどら焼き>のふたつのフードと、<DARK SIDE>と<LIGHT SIDE(ノンアル)>のふたつのカクテルを饗した。しかしながら迂闊にも、筆者はいつもの癖で一番安いオレジューとフラポテをオーダーしてしまって食せなかった。2016年は「慌てる乞食は貰いが少ない」を心の標語に刻んで生きていきたい。
⇒上原ひろみ ザ・トリオ・プロジェクト feat.アンソニー・ジャクソン&サイモン・フィリップス『ALIVE』 日本ツアー2014
東京国際フォーラムやフジロックの大ステージで観ると、まるでショック療法のような三つ巴の音のサバイバルゲームを繰り広げる三者であるからして、キャパ10分の1のジャズクラブで殺戮行為が行われる危険性もなくもなくない。はなはだ不謹慎であるが、この3人のうち誰かがテロリストに改宗している可能性もゼロではない。まさか踏み絵で隠れテロリストが発見できる訳もない。そもそもジャズの神様が誰なのか、ルイ・アームストロングとジョン・コルトレーンとマイルズ・デイヴィズの三つ巴の大論戦に決着はつかないまま既に半世紀過ぎた。迂闊に誰かの写真を踏めと言ったら、肖像権の冒涜で裁判沙汰になるかもしれない(特に米国は注意のこと)。
ふたを開けてみれば、2016年節分リリース予定の最新アルバム『SPARK(スパーク)』からの新曲中心に、怒濤の変拍子ミュージック炸裂ではあったが、中央に座るアンソニー・ジャクソンがスタンドプレイは控えめに通奏低音を紡ぎ出し、右の上原、左のサイモンが見つめあって拮抗・対峙・共感する様は、以前の「亀甲縛り」「対自核」「阿鼻叫喚」を見事に止揚(アウフヘーベン)し、弁証法的唯物論に於ける「否定の否定の法則」あるいは「らせん的発展」が、トリオの発展の過程で広く作用していくプロセスの完全無比なる証明に喩えられる。すなわち、ブルーノートで演奏する際に上原が用いた手法とは、ピアノの88の鍵盤をひとつずつ、満員の観客ひとりずつに割り振り、ひとつの鍵盤を弾く度に、特定の観客に気持ちが届くよう祈りを籠めてプレイするという目から鱗の技法だった。500人のオーディエンス全員がピアノの鍵盤を通じて音楽と一体になり、ドラムとベースの自由な音の波に乗って、ジャズの彼方へ「スパーク」したのである。
このコズミックな体験は、150年後に音楽が世界を救う時代が到来した時に、悟りを求める子孫の心魂の指針となるべき貴重なドキュメントとして末永く語られることになるだろう。
生きている
ひろみゅーじっく
スパークだ
上原ひろみ - SPARK (コメント映像)