グローバルネイチャークラブのガイド日記

グローバルネイチャークラブ(旧グローバルスポーツクラブ)のガイド仲間が観察した伊豆大島の自然の情報を中心にお届けします。

ジオパーク研究会主催「大島の水の話」を聞いてきました

2020年01月23日 | 火山・ジオパーク
昨日ジオパーク研究会主催の「大島の水の話」を聞きに行って来ました。

講師はジオガイド養成講座でも講師をしてくれたIさん

参加者は32名だったそうです。

まず配られた資料を見て驚きました。

全26ページ!


読みやすくてわかりやすい文章と、この資料を作るためにわざわざ取材してくださったと思われる写真がふんだんに使われていました。


これをみた時「今回のお話のためにどれほど時間をかけて準備してくれたのだろう?」と、まずそのことに感動しました。

資料は、大島がまだ6つの集落に分かれ、集落ごとに異なる暮らしぶりだった頃から始まり、いろいろな出来事を経て「今」に至るまでを、わかりやすく整理して綴られていました。

その内容を、ごくごく簡単に、まとめてみます。

「噴火の度に火山灰や穴だらけの小石(スコリア)が地面に降り積もる伊豆大島では、集落ごとに湧き水がある場所があり、そこから真水をとって桶に入れて頭上運搬で家に運び、料理やお茶に使っていた。これとは別に渇水の時のために集落近くに井戸を掘って海水の混ざったしょっぱい水を汲んで家に運び、この水は雑用や家畜用に使った」

「井戸は水が豊富な集落にはなかった(あったのは、元町、岡田、差木地の3つの集落のみ)。湧水がある場所が集落から遠い差木地では、頭上運搬で水を運ぶ桶の代わりに背負子に樽を固定して運んだ」


Iさんは、実際に昔とほぼ同じ量の水を用意してくれていて…


それを数人が実際に頭に乗せてみました。

実体験を持つ、Sさん。

ご本人は「本物の水よりやりにくい」と言ってましたが、上手でした😄

「一番若い人」とのことで、ジオパーク事務局の臼井さん。

「重いです〜!!」との感想に、みんな大受け。

背負子に乗せて運んだ樽も、実物を見せてくれました。

桶の2倍以上の量が入るようです。

「明治時代に日本にトタン板が入り、大島でもトタンを流れた天水をためるようになる。大きい母屋ではなく、小さな隠居小屋の屋根を、茅葺きからトタンに変えて、水を取る家が多かった」
水を集めるために、大島では珍しくなかった隠居小屋の屋根を変えたんですね。

「大正時代から、コンクリートで井戸や共同タンクが作られるようになった。竹製のトヨで、水源から集落まで水を引くなども行われた。昭和30年元町の八重川、34年差木地に簡易水道が引かれ、全島に水道が整った」
水道が整ってまだ60年なのですね。

「核実験で放射能が問題になって天水の危険性が心配され、エバークリーナという放射能濾過器が全戸に配られたが、1年ほどでほとんど使われなくなった」


ググってみたら、東京都衛生研究所の論文に「昭和34年度の調査では,大島町で採取した天水から飲料水の許容量を上回る放射能が検出された」、「住民に対して,降りたての雨は捨てる,砂ろ過装置を使用する等の対策を指導した」とありました。

エバークリーナの実物も見せてもらいました。


「昭和30年代後半から40年代前半に、給水区域の拡張と水道普及率の上昇で水道事業は飛躍的な進化を遂げる。昭和47年には処理能力1000㎥/1日のイオン交換膜電気透析法によるかんすい脱塩浄水場が元町に完成。しかし昭和61年の噴火で地下水が温度上昇し、水質も悪化して使えなくなり、北の山地区に移設。その後も、諸々の変遷があって、現在は島の北部(北の山)と南部に浄水場があり、元町に中央監視、各地に貯水池を置き、一度そこにためてから自然流下で各家庭に送っている」。

前回の噴火も影響していたんですね。

「台風15号の断水の時は停電で貯水池に水を貯められなくなり、断水になった。今は脱塩した地下水と、塩分を含まない水を混ぜて水道として各家庭に送っている」

様々な参加型の体験を通しての講演は、とてもとても面白く、参加者からは
「染め物の色が元町の水で染めるとピンクなのに、差木地の水で染めると紫がかるのはなぜ?」
「元町のしょっぱい水を使って美味しいコーヒーを入れるように研究したり、しょっぱい水でも美味しく飲めるお茶を売っている店があったりした」
などなど面白い質問や情報が共有されました。

講師のIさんが「大変な時代を通して今がある」と語られていたように、今の私たちの便利な暮らしは、昔からのたくさんの人の苦労や工夫の上に成り立っているのだと感じました。資料の最後には…
「蛇口からいつでも潤沢な飲料水が出てくるのが当たり前の時代、昔の人達の水を手に入れる苦労を思い出してみましょう」と結ばれていました。

本当に面白くて、感動した講習でした。
資料もぜひ、できるだけ多くの人に見ていただきたいです。

ところで調べたら、このブログの初期の頃、成瀨さんが「天水井戸 ・ いど神様」と題して、エバークリーナのことも紹介していました。
https://blog.goo.ne.jp/gscrikuguide6/e/4917797ed1839200f4ecf80ba89a5378

(かな)

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