ずっと昔、岩波書店から『転換期における人間』という全11巻の講座が発行された。ボクはそれを、書店からもらった。注文した人が、中途解約したらしい。ボクが注文した本ではないので、今まで書庫にしまったままだった。
一昨日、書庫から取り出して、そのなかの一巻「国家とは」の月報を読みはじめた。最初は、立松和平さんの文だ。彼は与那国島にサトウキビ畑に働きに来ていた。
与那国島、そこは台湾の隣の島である。だから当然、台湾と与那国島の住人とは、昔行き来が頻繁だったという。当たり前だ。隣の島だからだ。
彼は末尾にこう記す。
与那国島からの視座で見るかぎり、島の前と台湾との間の国境線は、ただ理不尽なものなのである。
1970年代はじめ、ウェールズの木賃宿に宿泊した川北稔さんは、その宿の息子さんと英語で会話したという。会話中、その妹が出てきたので英語で話しかけたら、息子さんが「妹はまだ学校に行っていないので、ウェールズ語しか話せないんだ」といわれたそうだ。イギリスの「国民国家」は、20世紀後半においても、確立していなかった。
片倉もとこさんは、遊牧アラブのことを記す。国境というものを意識していない。国境をこえる彼らの日常の生活圏は、300~400㌔もの行動半径があるという。
「地球的規模をもつウンマ(宗教共同体)の確立をめざすイスラーム世界においては、国家は、小さな存在となる」「かれらのアイデンティティは、国家とは関係なく、イスラームによって確立している」
なるほど、西欧的概念でイスラーム世界をみてはいけないというわけだ。
そのイスラーム世界が、相互に殺しあっている。それはなぜか、が問われている。
この本は、1989年の出版である。それからの変化は、急激だ。この時代が牧歌的に見えてくる。
一昨日、書庫から取り出して、そのなかの一巻「国家とは」の月報を読みはじめた。最初は、立松和平さんの文だ。彼は与那国島にサトウキビ畑に働きに来ていた。
与那国島、そこは台湾の隣の島である。だから当然、台湾と与那国島の住人とは、昔行き来が頻繁だったという。当たり前だ。隣の島だからだ。
彼は末尾にこう記す。
与那国島からの視座で見るかぎり、島の前と台湾との間の国境線は、ただ理不尽なものなのである。
1970年代はじめ、ウェールズの木賃宿に宿泊した川北稔さんは、その宿の息子さんと英語で会話したという。会話中、その妹が出てきたので英語で話しかけたら、息子さんが「妹はまだ学校に行っていないので、ウェールズ語しか話せないんだ」といわれたそうだ。イギリスの「国民国家」は、20世紀後半においても、確立していなかった。
片倉もとこさんは、遊牧アラブのことを記す。国境というものを意識していない。国境をこえる彼らの日常の生活圏は、300~400㌔もの行動半径があるという。
「地球的規模をもつウンマ(宗教共同体)の確立をめざすイスラーム世界においては、国家は、小さな存在となる」「かれらのアイデンティティは、国家とは関係なく、イスラームによって確立している」
なるほど、西欧的概念でイスラーム世界をみてはいけないというわけだ。
そのイスラーム世界が、相互に殺しあっている。それはなぜか、が問われている。
この本は、1989年の出版である。それからの変化は、急激だ。この時代が牧歌的に見えてくる。