『東京新聞』も『週刊金曜日』も、30年前の天安門事件をとりあげている。天安門事件は、中国に於ける民主主義を求める運動であった。しかしそれは、共産党権力(軍隊)によって押しつぶされた。▲中国は有史以来、一貫して大国であり続けた。王朝の盛衰・交代はあったが、それぞれの王朝はそれぞれの時代において大国であり、同時に富国であった。中国が弱体化したのは、近代化が課題となった20世紀だけである。21世紀の現在は、政治大国であり、経済大国であり、また軍事大国である。その中心にあるのが中国共産党である。中国共産党王朝といってもよいだろう。▲中国の歴代の王朝は、専制的な国家体制で、あの広大な領土とそこに住む人々を支配してきた。広い領土と多数の人口をひとつの国家体制の下に治めるためには、おそらく専制的でない方法はあり得ないのだろう。現在でもそれはあてはまる。中国共産党による支配体制を維持するためには、民主的であってはならないのである。▲しかし、とは言っても、そこに住む人々に飴を配分しなければ、過去、王朝が倒れるときにおきた様々な蜂起に脅かされる可能性がある。飴と鞭、それは支配体制を維持するためにどこでも普遍的に行われてきた統治方法である。現在の飴はカネ、経済である。カネがばらまかれ、カネ儲けの機会が次々と生まれ、富豪が増えていく。庶民であっても経済生活が活発化していく。人口が多いから需要はある、カネがまわりはじめればカネ儲けはそう難しくはない。▲そうした経済活動の活発化を促進するために、インフラ整備も進む。またそこでカネが動く。富豪層だけでなく、中流階層も増大し、海外旅行にもでかけていく。中国共産党の政治は、人びとの経済生活を満足させてきた。▲変わらないもの、それは、専制的な政治である。変わるもの、それは人びとの生活であり、また中国の自然や文化である。『週刊金曜日』のジャーナリストであり作家の翰光は、「経済発展の名の下に中国人民に負の遺産を背負わせる」という文章には、その変化が綴られてる。高速道路や高速鉄道の整備が進む中、人びとの生活が犠牲にされている現実、豊かな文化を持つ風光明媚な麗江の変化(経済開発による自然破壊、文化の喪失など)・・・・。しかし同じようなことは日本でも存在する。私は既視感を持ちながら読み進めた。日本でも、「負の遺産」を庶民におしつける。日本でも、専制的な政治が行われている、ただはっきりと見えないだけだ。
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