浜名史学

歴史や現実を鋭く見抜く眼力を養うためのブログ。読書をすすめ、時にまったくローカルな話題も入る摩訶不思議なブログ。

【本】井上ひさし『太宰治に聞く』(文春文庫)

2019-06-16 11:15:45 | 
 区役所に行く用事があった。おそらく待つ時間が長いだろうと思い書庫に行き、一冊の本をとった。それがこの本。

 実は太宰の本は何冊か持っている。しかし、『人間失格』を読みはじめて、これは自分が読むものではないと思い、そのままにした。全集も何冊かあるが、読もうという気もなかった。

 しかしこの本は、太宰という人物のエッセンスが簡単に記されていて、太宰を読む気にさせるものであった。井上ひさしによると、漱石と宮沢賢治、そしてこの太宰の三人は、死してもなお現役の作家なのだという。それほどずっと読み継がれているのだ。漱石は全集ももっていて、ときにふと読みたくなるときもある。賢治は、これも文庫版の全集をもっているが、しかし読まない。

 井上は、この三人に共通しているのは、「語りものとしてよくできている」作品を書いていることであり、「普通人の日常にあることばを書きことばに、小説言語にできるか、そしてそれができた作品が時代を越えて読み継がれていく」のだという。

 こういう指摘を読むと、読まなければならないと思ってしまう。書庫に眠っている太宰の本を読まなければならない。

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