進化生物学者の千葉聡さんの「幸運の南硫黄島」を読んだ(『図書』6月号)。人を寄せ付けない南硫黄島に上陸して新種の生物などを探索する体験を綴ったものだ。千葉さんは「陸貝」の研究者らしい。「陸貝」といわれても見たことも聞いたこともない生物だ。南硫黄島のその故郷は北海道であるということで、どのようにして北海道の「陸貝」が南硫黄島に運ばれたのか不思議ではある。▲千葉さんはこの文のなかで、進化についてこう記す。「進化は、偶然の歴史と偶然の突然変異、そして遺伝的変異に対する自然選択ーより生存率や出生率の高い変異が次世代により多くの子孫を残すことで進むプロセスの結果である。そこに意思や目的は一切ない。彼らは夢など持たない。生きるというミッションを、ただ日々果たすだけである。」と。▲「生きるというミッション」か。この世に生まれたすべての生物は、「生きるミッションを、ただ日々を果たす」。▲わが家を取り巻くサザンカの樹。今ごろの季節になると、私は目を凝らして伸びてきた新芽のなかを覗く。毛虫の集団を見つけるためだ。放っておくと葉を食い荒らしてしまうから、殺虫剤を毛虫たちに噴霧する。この毛虫たちもひたすら「生きるミッション」に忠実である。生物たちの「生きるミッション」をひたすら果たしている姿は、見事でさえある。▲人間も生物であるからには、「生きるミッション」はある。死が生を絶つまでそれは果たされ続けるのだが、人間の場合は、みずからの意思でそれを絶ちきることがある。進化の結果、人間は「生きるミッション」に忠実であることに、疑問を抱くようになった。「生きるって何?」、「生きる意味はあるのか?」等々。他の生物は、こうした疑問を持たずに「生きるミッション」を果たし続ける。▲人間は、一人では生きていけない。この世に生まれた時から他者の手助けを必要とする。他者たちの動き、ことばを見よう見まねで真似ながら、学びながら、人間は成長していく。ところが、「生きるミッション」すら、人間は学ばなければならないほどに進化してしまった。そして、「生きるミッション」とはこれだ!と教えてくれるものではなく、それぞれがみずから「発見」しなければならない。その作業は、孤独でもある。それに失敗した人間が、ときに自死を選ぶ。「生きるミッション」が学ばれる場が必要だ。
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