1994年に発売された本。竹久夢二に関わる本をひたすら読んでいるが、その一冊。辻潤と伊藤野枝との間に生まれた辻一(まこと)の妻イヴォンヌの父は武林無想庵、母親は中平文子である。なぜこれが夢二と関係するかというと、夢二の次男・不二彦は辻まことの友人であり、まこととイヴォンヌの間に生まれた野生(のぶ)が不二彦夫婦の養女になったからである。
伊藤野枝は大杉栄と一緒になった結果、まことは父親に育てられた。とはいっても父はダダイストというか放浪生活をこととし、通常の父親のように子どもを養育するということそのものに関心のない人で、したがって妹夫婦に預けられたりして成長した。一方イヴォンヌの父親・武林無想庵も、哲学者であり翻訳家でもあったが、生活能力はない男であった。
フランスに行くという武林についていきたいために文子は武林と結婚(文子は、それ以前に藤堂伸二と結婚し子どもが三人いたが、婚家をでてその後代議士の息子である林田浩平と結婚しているから、無想庵とは三度目ということになる)、武林との間に生まれたのがイヴォンヌであった。
本書は、その文子の伝記である。といっても、無想庵と別れて宮田という男と4回目の結婚をする時までである。その間、経済能力のない無想庵にかわって、カネを稼ぐために文子はきわめて行動的で、エネルギッシュに生きる。金を持っている男と関係を持ちながら、カネを貢がせ、また自分自身の欲望を満足させる。その凄まじい生き方には、感服する。
カネを得るため、欲望を満足させるため、名誉を獲得するためには、とにかく何でもする。すごい女性である。
読んでいて、私にはそういう上昇志向みたいなものはないなあと思ってしまう。
476頁という大部な本だが、厭きさせない。夢二のところからお葉を追い出した山田順子よりももっとすごい女性であった。
伊藤野枝は大杉栄と一緒になった結果、まことは父親に育てられた。とはいっても父はダダイストというか放浪生活をこととし、通常の父親のように子どもを養育するということそのものに関心のない人で、したがって妹夫婦に預けられたりして成長した。一方イヴォンヌの父親・武林無想庵も、哲学者であり翻訳家でもあったが、生活能力はない男であった。
フランスに行くという武林についていきたいために文子は武林と結婚(文子は、それ以前に藤堂伸二と結婚し子どもが三人いたが、婚家をでてその後代議士の息子である林田浩平と結婚しているから、無想庵とは三度目ということになる)、武林との間に生まれたのがイヴォンヌであった。
本書は、その文子の伝記である。といっても、無想庵と別れて宮田という男と4回目の結婚をする時までである。その間、経済能力のない無想庵にかわって、カネを稼ぐために文子はきわめて行動的で、エネルギッシュに生きる。金を持っている男と関係を持ちながら、カネを貢がせ、また自分自身の欲望を満足させる。その凄まじい生き方には、感服する。
カネを得るため、欲望を満足させるため、名誉を獲得するためには、とにかく何でもする。すごい女性である。
読んでいて、私にはそういう上昇志向みたいなものはないなあと思ってしまう。
476頁という大部な本だが、厭きさせない。夢二のところからお葉を追い出した山田順子よりももっとすごい女性であった。