昨日の『東京新聞』の「こちら特報部」の「本音のコラム」、宮子あずささんの「都立病院の民営化」を読みながら、現在読み進んでいる『アメリカの病』(ティモシー・スナイダー、慶応義塾大学出版会)との関連を意識した。
アメリカでは社会保障制度はきわめて不十分である。医療の最大の目的は、病やケガで苦しむ患者の苦しみを取り除き、健康を回復するというものであるはずだ。しかしアメリカでは、医療の最大の目的はカネ儲けである。医者は、カネ儲けになるように行動する。カネ儲けにならなければ医療の提供はストップ、である。
コロナ禍で多くの人が苦しんでいるとき、厚労省は病床削減に励んでいる。それと歩調をあわせながら、東京都は、財政の重荷になる公立病院を民営化するのだそうだ。民営化ということは、アメリカ化でもある。つまりカネ儲けのための経営となり、公的病院として「不採算な医療」を担ってきたのに、採算を優先する経営へと変えられる。
郵便局が民営化され、サービスが低下の一途をたどっている。あるいは不健全な経営が行われ、ばく大な損失がだされても、経営者はその責任を追及されない。
国立大学が「国立大学法人」として民営化されるなか、大学教育の質は低下の一途をたどっている。文科省はそれを理由に国立大学法人のスクラップアンドビルドを図っている。
民営化は、サービスの低下に帰結する。それでも国民は、公的機関を民営化し、公務員を減らすことに賛成する。その行き着く先は「アメリカの病」である。
『アメリカの病』は、日本政府や経済界が志向する未来の日本がどういうことになるのかを示している。読み終えたら紹介しよう。とても良い本であるという結論だけは示しておこう。