ロシアによるウクライナ侵攻は、まずもってロシアに批判の矛先が向けられなければならない。侵攻を停止せよ!というのが、今挙げるべき声である。何度も記しているが、戦争は殺戮と破壊である。軍隊同士の戦闘だけではなく、当然のごとく、庶民にも犠牲者が出されるし、庶民の生活の場が破壊される。だからこそ、即時停戦が求められるのだ。
私自身、このウクライナ侵攻に関心を持ち、メディアにアクセスしているが、日本メディアはまったくダメだ。共同通信配信のものでさえ、キエフからではなく、西部のリビウからである。日本メディアのスタッフは、いつものとおり、安全な場に撤収しているのだろう。
したがって、こうした事件の情報を得る場合、いつものとおり、BBC、AP、CNNなどにアクセスしなければならない。日本のテレビで流される映像は、これらの会社が配信したものばかりである。
世界各地からのナマの情報を提供できない日本が「一等国」であり得ないことは、このことでも証明される。
またこの事件についても、歴史的背景から、最近のウクライナ情勢から総合的に考えていかなければならない。
アメリカが、あたかも正義の味方のようにロシアを非難するのには、私はオマエはよくそんなことがいえるなあ、と思ってしまう。イラクへの侵攻など、アメリカが今まで世界各地で、それも何度も行ってきたことを、ロシアがやっているのだ。世界で紛争が起きているすべての地域で、アメリカは、正面から政権を倒したり、背後で暗躍したりして、平和な状態を攪乱してきた。
国連の常任理事国、それも核兵器を保有している国々こそが、世界平和を崩してきたと思う。ヨーロッパへ、アフリカ、中東などから難民が押し寄せているが、ヨーロッパ諸国、イギリス、フランス、そしてドイツが軍事行動を行って難民をつくり出してきたのである。かれらが難民の面倒を見るのは当然のことだ。
さて今回の事態は、ウクライナのNATO加盟問題が背景にある。NATOは、東部で戦乱が起きているウクライナの加盟は認めていない。NATOに加盟したウクライナがロシアと戦闘を起こせば、NATOがロシアと戦端を開いてしまう可能性が出てくる。ロシアとの戦争をしたくないNATOは、だからウクライナの加盟には応じていない。
ウクライナとしてみれば、自国の安全保障を考えたときに、NATOに加盟していれば少しは安全になると考えたとしても、不思議ではない。だがウクライナは、NATOの懸念を考慮してきたのだろうか、ロシアの動きを警戒しながらバランスをとった政策を展開してきたのだろうか。今回の衝突で証明されたように、軍事力の面で圧倒的に劣勢であることを認識した行動を、ウクライナ政府がとってきたのだろうか。
ウクライナ政府が考えるべきは、ウクライナ政府のメンツではなく、そこに住む人々の安全と生活を守ることでなければならない。まずもってロシアの侵攻は非難されるべきである、ということを前提にして、しかし同時に、ウクライナの人々の生命、生活を守らなければならないウクライナ政府の政策がロシア軍の侵攻を招いたのではないか、ということも考えるべきである。
どうしたらこうした戦争を阻止できるのか、これこそが最重要な政治課題でなくてはならない。