以前、仲よくしているメディア関係者が、会社をやめたいと言っていたことがあった。私は安易に判断してはいけない、みずからの生活がきちんと維持されていること、経済的に自立できてこそ、いろいろなことがやれるのだと説得した。
フリーのライターで生きていくことはなかなか難しい。給与として支給される金額を原稿料で稼ぐことは、そう簡単ではないこと。ひょっとしたら、カネを稼ぐために、原発賛成の原稿を書かざるを得ないかも知れない(そうした記事は原稿料が高い)・・・そうなったら、フリーになる意味はない・・・などと説得した。
一人は「出世」し、ひとりはやめて山の中の生活に入り、ひとりは地方をまわっている。
生きていくための資力がないと、逆に自由を失う、おのれを偽るという結果になりかねない。
『Journalism』2月号に、アイティメディア株式会社社長の大槻利樹さんへのインタビュー記事が載せられていた。「孫正義のDNAを継いで」いる人だ。彼はこう云っている。
赤字になったらどこかに頼らないと生きていけないでしょう。「報道の自由」なんて格好いいことを言っても、誰かに依存していたら、報道の自由もへったくれもあったものじゃない。自立しているからこそ、自らのオピニオンを伝えられる。
その通りだと思う。これは朝日新聞社に対する助言なのだろうが、私たちが生きていく上でも重要な助言である。
様々な自立がある。経済的、精神的、学問的、生活的・・・・・ひとは、できうるかぎり自立を求めて生きていくことが肝要だ。もちろんそれは、批判的精神を維持するために必要なことだからだ。