浜名史学

歴史や現実を鋭く見抜く眼力を養うためのブログ。読書をすすめ、時にまったくローカルな話題も入る摩訶不思議なブログ。

原理

2023-10-30 20:52:58 | 

 小田実の『「難死」の思想』(岩波現代文庫)を読んでいる。小田もすでに亡くなっている。小田実の本もたくさん読んできた。というのも、私は高校生の時から、「ベ平連」の一員であったからだ。

 私の青春は、ベトナム戦争とともにあった。本多勝一のベトナムでのルポなどを読み、あまりにアメリカ帝国主義がベトナムで行っている蛮行に怒りを持ち、「殺すな」ということからベトナム戦争反対の運動に入っていった。「ベ平連」の前は、確か「バートランド・ラッセル平和財団」というのがあって、そこから平和に関するシールなどを入手していたように記憶している。

 小田実は、この本に収載されている「「殺すな」から」で、「殺すな」をみずからの原理として、それが「平等」、「自決」とつながり、さらにそれらは人間関係や国家関係などに敷衍され、その結果「世直し」へと向かう道筋を書いている。

 小田の思考の軌跡は、私とも共鳴する。ベトナム戦争において、アメリカ帝国主義に対して「殺すな」を求めて、ベトナム反戦運動に加わった。私にとっても、「殺すな」は基本的な原理であり、それは原理として今も持ち続けている。

 「「殺すな」から」の前には、「「生きつづける」ということ」という文があるが、私も「生きつづける」ことの大切さを十分に認識している。あまりにヒドイ状況であっても、「生きつづけ」て見つめることが必要だ。生まれ、そして生きつづけてきた私には、この世に責任があるからだ。

 「この世」という場合、日本国内のことだけではなく、イスラエルの国際法違反の侵略行為により、「生きつづける」ことが困難になっているパレスチナの人びとが生きる現実も、もちろん包含される。

「殺すな」ということば、いや叫びは、普遍的であり、すべての思考の出発点になり得る。

 小田実の「「殺すな」から」を読み、若い頃、みずからが何を考えていたかを振り返ることができた。

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

昨日の「時代を読む」

2023-10-30 14:15:12 | 社会

 『東京新聞』の「時代を読む」は、宇野重規さんの「知の「貯蔵庫」と「心の置き場所」」であった。そして昨日の一面は、家庭における虐待などにより「身の置き場所」がない人たちが集うNPO法人サンカクシャを報じた。

 実際、「身の置き場所」がない人がたくさんいる。家庭が冷たく、子どもに無関心の場合、家庭に「心の置き場所」がなくなっていまうと、そのうち「身の置き場所」もなくなってしまう。

 宇野さんはそういうことで「心の置き場所」について書いているわけではないが、「心の置き場所」がない、つまり精神の安定が得られて落ち着けるという場所を持たない人が増えているのではないか。現在は人間関係がなかなか複雑で、私のようにリタイアした者は、もうこの人とは出会わないようにしようということができるが、しかし現役の人びとはそうはいかないだろう。

 「心の置き場所」とは、精神がゆったりとくつろげるところ、ということだろうが、若者はひとりでいられない、だれかとつながっていないと落ち着かないようだから、たいへんだろうなと思う。私の場合はひとりでいることが平気なので、ひとりでいられるところ、家庭とか畑とか、そういうところが「心の置き場所」になる。

 もうひとつ、「知の貯蔵庫」。宇野さんは、「人類の多様な考えは、きちんと整理され、保存されれば、誰でもが利用できる共通の財産となる。私たちは、時にこの「貯蔵庫」に入り込み、過去の人々の思いやその苦悩を追経験することができる。そのためにも「貯蔵庫」を大切に守り、維持していかなければならない 。/しかし、現代世界を見れば、過去からの知や思想がいとも簡単に破壊され、投げ捨てられる事例に事欠かない。図書館の本は処分され、研究予算は削減され、重要な人類の遺産を保持してきた組織や施設も廃止される。」と書いている。

 今ほど、「知」が蔑まれている時代はないように思う。「知」というものが価値を持たなくなっている、という気がしてならない。政府も、大学などの学術機関も、あるいは子どもたちも、「知」というカネ儲けににつながらないものを軽視すること甚だしい。「知」よりも忖度やゴマすりが力を持つ現代。

 宇野さんが指摘するように、「知」に大いなる価値を認め、「知の貯蔵庫」に時に入り込んで、いろいろな「知」と接することを続けなければならない。

 「知」は、いつかは必ず復権するだろうと、私は思っている。だから、「知の貯蔵庫」も大切にしなければならない。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする