浜名史学

歴史や現実を鋭く見抜く眼力を養うためのブログ。読書をすすめ、時にまったくローカルな話題も入る摩訶不思議なブログ。

原民喜

2018-08-23 20:50:39 | 
 梯久美子の『原民喜』を読み進めている。

 私の部屋の南向きの窓には、台風の雨がたたきつける。台風は、四国辺に上陸するようだが、この辺も風は強く、ときおり強い雨が降る。午後2時半頃から、パソコンに向かい仕事をする。少しでも間違ってはいけない仕事なので、精神的に疲れる。

 そこから逃れようと、『原民喜』を読む。

 原民喜は、お見合いで貞恵さんという女性と結婚した。この本で、読む速度が速くなったのは、この結婚の時からだ。この世にたくさんの男女が生きているが、一人の男と一人の女が、まさにぴったりと「適合」するなんてことはほとんどあり得ない。だって、私たちは配偶者を、かなり狭い世界からしか選べないからだ。

 だが、大杉栄と伊藤野枝のように、原民喜と貞恵さんとは、それはそれはうまく「適合」したようだ。結婚し、貞恵さんとの家庭生活の頃、その時期だけ、原民喜の生活に光がさしているようだ。

 しかし貞恵さんは結核で早くに亡くなってしまう。短い結婚生活ではあったが、原民喜にとっては、とても幸せな日々であった。であるが故に、貞恵さん亡き後は、原にとって「余生」なのだ。

 その「余生」のさなか、広島に帰った際に、原は被ばくした。そして、被ばくの体験を書き記すという使命感をもつ。それで書いたのが、「夏の花」なのだ。

 しかし彼は、みずからが見たおびただしい死を、死ではないと記す。

 これらは「死」ではない、このやうに慌しい無造作な死が「死」と云へるだらうか

 死とは、原が妻貞恵を看取った時のようでなければならない。ヒロシマの被爆者の「死」はそうではなかった。

 
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見てしまった者

2018-08-23 09:04:39 | 
 昨夜は、1㌔ほど離れている東海道線を走る電車の音がよく聞こえた。そういうときは、雨が降るときだ。月にかかる暈と電車の音は同じようなはたらきをする。

 今朝は、風が強く、台風の影響がすでにでてきている。私は台風や大雨の時は、雨雲レーダーを眺める。どこに大雨が降っているか、五分おきにそれがわかる。赤色がこの付近にかかっているときは、ここに大雨が降る。

 今年は、台風が多い。幸いこの付近に到来した台風は一つだ。しかし一つであっても、農業をしている私としては、仕事が一挙に増える。とりわけ風により、倒れるものが多い。もうひとつは風が海の塩を運んでくるときだ。放っておくと枯れてしまう。

 さて、私は『原民喜』を読み進める。

 原は、広島で被爆した。原は原爆投下後のヒロシマを見てしまったのだ。彼の生は、それに規定される。見てしまったからだ。

 自分のために生きるな、死んだ人たちの嘆きのためにだけ生きよ。僕を生かしておいてくれるのはお前たちの嘆きだ。僕を歩かせてゆくのも死んだ人たちの嘆きだ。お前たちは星だつた。お前たちは花だつた。久しい久しい昔から僕が知つてゐるものだつた。

 無数の悲惨な死、今までふつうに生きていた人々が、一瞬に生を絶たれた。その生と死を、背負わないで生きていくことはできない。

 なぜあなたが死に、私が生きているのか。そうした不条理な問いの前に、原は佇む。

 見てしまう。イヤ見ないでも、その光景が心に浮かぶ。直接見ないでも、見えてしまう。それでも、人間はそれに規定されてしまう。

 原は、見てしまったことを全身に背負い、生き、そして自死した。原の前で、原のことが書かれている本を手に取りながら、佇む。

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高校野球の「感動」

2018-08-22 22:19:20 | 社会
 金足農業高校、部員が秋田県出身者だけ、ということ、それは正しいと思った。

 今や高校野球は、選手の異動が県境を簡単に超える。何が「〇〇県代表」かと思う。これもウソだ。高校野球部は、地元の選手ではなく、上手な選手を各地から集める。今や強豪校というのは、全国から野球のうまい生徒をどれだけ集めることができるかで決まる。

 こんなの邪道である。

 甲子園への出場は、「郷土の誇り」?もうこれもシュールの領域である。そしてもう一つ。次に紹介する記事は、夏の高校野球大会がいかにシュールであるのかを指摘する。

https://toyokeizai.net/articles/-/234656
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輪郭

2018-08-22 21:30:18 | 
 今日も暑かった。午後、電車で静岡へ。ボーッと窓の外を見ていると、遠くの山の輪郭がはっきりしていた。空の色も、緑も、その色を際立たせるように存在していた。

 途中、買ってあった『原民喜』(梯久美子 岩波新書)を読みはじめた。原民喜の自死の話しから始まっていた。彼はみずからの死に、轢死を選んだ。彼にとっては、もっとも忌避すべき死に方であった。

 読み、立ち止まり、窓外を眺める。読み、立ち止まり、窓外をみつめる。そういう読み方しかできないような内容であった。

 まだほんの少ししか読んではいないが、原民喜にはいつも死がまとわりついていたようだ。生と死の輪郭がはっきりしないそういう生を生き、最後はそういう生をみずから絶った。

 梯久美子の文は、こういうことばでしか表現できないが、とてもうまい。黒岩比佐子と同様に。

 だがこの本は、読み進めるのに苦労する。文字で描かれた世界が想像をこえ、その世界の暗部に死がこびりついているからだ。

 いったいどのくらいの時間がかかるのか。

 原民喜の「民喜」は、民が喜ぶという意味だそうだ。原民喜は1905年生まれ。その年、日露戦争勝利で、民は喜んでいた。

 原民喜のその名の輪郭は、とてもはっきりしている。

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東京五輪のボランティア

2018-08-22 21:24:40 | 政治
 ボランティアは、すべて自費でタダでつかおうとしているのに、組織委員会のメンバーには高額の報酬。

東京オリンピック組織委員会の役員報酬は年間2400万円、ボランティアに自己負担を強いる一方で宿泊・交通費なども全額支給
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官僚は、ハイエナのように

2018-08-22 21:21:52 | 政治

「障害者雇用水増し」問題 厚労省の天下りに高額役員報酬
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行政はウソをつく

2018-08-22 09:00:03 | 政治
 森友・加計問題で露呈されたように、首相はじめ政治家はもとより、官僚も堂々とウソをつきまくる人々であることが公然化した。そして今度は、民間企業には障害者の雇用をうるさく指導していた中央省庁が、障害者雇用数を平然とゴマカしていたことが明らかになった。

 日本の行政の信頼性は、地に堕ちていると言えよう。

 『東京新聞』記事。

「障害者働く場 奪われた」 水増し 数千人規模
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伊藤野枝論

2018-08-20 22:27:52 | 近現代史
 最近、某所での講演レジメをもとにして、伊藤野枝論を簡単にまとめて小冊子をつくった。

 栗原康の『村に火をつけ、白痴になれ 伊藤野枝伝』(岩波書店)が、あたかも野枝が欲望のままに生きていたかのような暴論を主張しているので、それに対する反論である。

 だいたいにして、栗原の本は乱暴である。

 たとえば女性労働運動家の山内みなが、野枝との関わりを自伝で書いている。

 みなは、野枝からこう言われたと記している。

 「あなたは労働者だから、労働者はどうしたら解放されるか勉強しなさい、社会主義でなければだめだということがわかるでしょう、本を送ってあげます」(『山内みな自伝』新宿書房、1975年、56頁)

 野枝は、実際にみな宛に本を友愛会本部へ送ってきた。

 しかし、栗原の『村に火をつけ・・・』は、みなのことばをこう記している。

 「あなたは婦人労働者として、どうしたら自分が解放されるのか、もっと勉強してください。社会主義じゃなきゃダメなんです、なんでわからないの」(139頁)

 みなが他の文献でこう記しているのなら格別、栗原の本には、先ほどの『山内みな自伝』が「参考文献」として掲げられているだけだ。

 見られるように、みなが書いたことが、見事に脚色されている。栗原の本が恣意的であることが、これだけで判明するというものだ。

 私は、栗原が書く評伝というか伝記については、あまりに自己投影していて、読んでいて気分が悪くなるほどだ。
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東京五輪が近づく

2018-08-20 20:55:28 | 社会
 アジア大会で不祥事を起こしたスポーツ選手、オリンピックへの期待を減じることだろう。

 オリンピックには、大量のボランティアが必要だという。9月から募集が始まるそうだが、私は勿論そんなものには応募しない。

 しかしこのサイトは、見るべきものがある。

東京五輪 学生ボランティア応援団

 ともかく、五輪のボランティアは、「学徒動員」だから。もう日本は全体主義国家だよ。
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作業所の困難

2018-08-18 08:00:36 | 政治
 『どんぐりの家』というマンガがあった。誰かに貸して今は手元にないが、子どもが障害をもって生まれたこと、両親がそれで苦しみ、家庭が崩壊しようとしていたとき、その子どもが全身で「生きたい」と主張したことから、両親もその子どもに教えられ、生活上の障害を乗り越えて、子どもの成長と共に両親も成長していくという感動的な話しであった。しかし学校を卒業した後、障害が重い場合、行くところがない。そこで親たちが力をあわせて作業所をつくって子どもたちの社会参加を獲得し、さらに成長を確保していく。

 そうした作業所が私の周辺にもある。「まつぼっくりの家」はパンを作っている。私もそのパン作りに参加したことがある。そしてそのパンを販売した。パン作りはなかなかたいへんな作業であるが、金銭的にはいくらにもならない。しかしそれでも、働くということは生きること、みずからを成長させる手段でもある。子どもたちは、といっても大人になっている人もいるが、必死に作業をこなす。

 また「みみの里」の会員にもなっている。

 もちろんそういうところには、国や自治体から手厚い援助がなされなければならない。いかなる人間もみずからの力を発揮しながら社会参加し、成長する權利がある。「生産性」がないからといって切り捨てることはいっさいあってはならないことだ。

 自由民主党など国会議員の中には、心ない発言をする者がいるが、もし自分が障害者であったなら、あるいは障害をもった子どもを育てていたなら・・・などと想像してみよう。そうした想像ができない議員ばかりを集めたのが自由民主党である。

 そういう政党が権力を握っているから、こうした作業所にひどい仕打ちをする。

 『東京新聞』記事。

報酬改定「福祉主眼」を直撃 B型事業所 多くが減収に
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スポーツ界はカネまみれ

2018-08-17 21:53:19 | その他
 「共同通信」配信記事。

居合道の昇段で現金授受 剣道連盟、慣例化認める


 全日本剣道連盟は17日、居合道の段位、称号審査で、受験者が合格目的で審査員らに現金を渡す不正行為が慣例化していたと明らかにした。既に関係者は処分された。連盟の中谷行道常任理事は「大変な問題。あってはならないことが起きた」と述べ、審査員の氏名を当日まで徹底的に秘匿するなどの再発防止策を講じたと説明した。

 審査員から現金を支払うよう要求されたとする受験者の男性が、内閣府公益認定等委員会に告発状を提出していたことも同日、明らかになった。

 関係者によると、男性は告発状で、2012年に八段の審査を受けた際、複数の審査員に計650万円を渡すよう求められたと訴えた。

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不正が横行する日本

2018-08-17 21:49:53 | 政治
豊洲市場に「杭打ち偽装」疑惑が浮上…施工業者が決意の告発!

 豊洲市場、最初からケチがついている物件。今後もいろいろな問題が生じてくるだろう。
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歴史研究

2018-08-17 21:10:01 | 近現代史
 様々な社会運動、あるいは戦時下の強制労働などについての研究に関する本が刊行されているが、なかには厳密性に問題があるものがある。

 歴史学にとって、一番重要なものは史料である。史料がなければ歴史を描くことはできない。たとえば井伊直虎がNHKの大河ドラマで扱われたが、井伊直虎についての史料はほとんどない。にもかかわらず、一年間NHKはそれを放送し続けた。私からすればそれはフィクションである。

 私も一応歴史研究をしているので、井伊直虎について話してくれと言われたことがあるが、もちろん私は断った。話す材料がないからだ。

 史料をもとに歴史は構成されるが、しかしその史料は信頼に足るものであるのかきちんと批判をおこなったうえで使用されなければならない。

 近現代になると、史料以外に、体験者の体験(語り、あるいは回想記など)なども資料として使用される。その場合も、その体験については、ほかの資史料を駆使して語られたあるいは記された内容が真実であるのかをできる限り点検していく。

 歴史は検証できなければならない。したがって、歴史を書く場合は、どういう史料をつかって事実を提示したかを必ず明記しなければならない。

 ところが、なかには史料を正確に明示しないで「事実」だとして提示する文献がある。したがってそこで明示された「事実」は、検証できない。私はそういう文献や論文は、参考にしない。参考文献としても掲げない。

 そういう文献が戦時下の強制労働に関する文献にもある。こういう分野こそ厳密にされなければならないのだが、しかしそうした運動に関わっている人々は決して歴史学的な訓練を受けているわけではないので、新しい研究だとしてもちあげる。メディアもその片棒を担ぐ。

 最近、とくにそうした傾向がある。戦時下の強制労働の研究者が減っているから、相互に研鑽し合うということがなくなったからだ。



 
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こんな野郎が浜松市議会議員

2018-08-17 08:26:03 | 映画
 浜松市議、議会の回線使いアダルト動画投稿 辞職願提出
 

 この議員が属しているのは、「創造浜松」。スズキ会長の主張、たとえば現在ある7つの区を2つくらいにするという考えを推進する議員団である。

 こういう人物を「創造浜松」が擁しているというのも、なるほどである。

この人、林英臣という松下政経塾一期生がやっている政経塾、まさに松下政経塾をまねて雑炊的な日本的愛国主義を鼓舞している塾の出身者で、議員控え室には「日の丸」を掲げていたそうだ。「日の丸」が泣いているだろう。

 おいしい議員生活。毎月の報酬60万円ほどもあるのに、10万円ほしさに議員控え室のパソコンからアダルトビデオをアップするなんて。

 この人の議会での質問は、つまらない、というので知られている。選挙には、「素敵な浜松を渡したい」などと訴えていた。

この人、湖西高校を卒業し、高山短期大学へ進学したようだ。
 
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8月中旬

2018-08-16 22:12:49 | その他
 今、クラシック音楽を聴きながら書いている。8月の中旬は、私の家族が集まる時期である。主に関東圏からであるが、8月14日を目標に、離ればなれになっている家族が集まる。

 今日夕方までにほとんどが帰っていった。こうして集まるのは年一回である。

 その間、ホスト役の私はてんてこ舞いの忙しさである。送迎のための浜松駅との往復、食事の世話その他、姉と私とがひたすら家族の世話をする。

 これは私が子どもの頃からの習わしでもある。一年に一回家族が集まり、共に食事をとる。

 明日の夕方までに、全員がそれぞれの生活の場に帰っていく。

 しばらくぶりに音楽を聴く。明日夜から、日常が戻る。

 仕事がいっぱいある。それらをこなしていく。

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