梯久美子の『原民喜』を読み進めている。
私の部屋の南向きの窓には、台風の雨がたたきつける。台風は、四国辺に上陸するようだが、この辺も風は強く、ときおり強い雨が降る。午後2時半頃から、パソコンに向かい仕事をする。少しでも間違ってはいけない仕事なので、精神的に疲れる。
そこから逃れようと、『原民喜』を読む。
原民喜は、お見合いで貞恵さんという女性と結婚した。この本で、読む速度が速くなったのは、この結婚の時からだ。この世にたくさんの男女が生きているが、一人の男と一人の女が、まさにぴったりと「適合」するなんてことはほとんどあり得ない。だって、私たちは配偶者を、かなり狭い世界からしか選べないからだ。
だが、大杉栄と伊藤野枝のように、原民喜と貞恵さんとは、それはそれはうまく「適合」したようだ。結婚し、貞恵さんとの家庭生活の頃、その時期だけ、原民喜の生活に光がさしているようだ。
しかし貞恵さんは結核で早くに亡くなってしまう。短い結婚生活ではあったが、原民喜にとっては、とても幸せな日々であった。であるが故に、貞恵さん亡き後は、原にとって「余生」なのだ。
その「余生」のさなか、広島に帰った際に、原は被ばくした。そして、被ばくの体験を書き記すという使命感をもつ。それで書いたのが、「夏の花」なのだ。
しかし彼は、みずからが見たおびただしい死を、死ではないと記す。
これらは「死」ではない、このやうに慌しい無造作な死が「死」と云へるだらうか
死とは、原が妻貞恵を看取った時のようでなければならない。ヒロシマの被爆者の「死」はそうではなかった。
私の部屋の南向きの窓には、台風の雨がたたきつける。台風は、四国辺に上陸するようだが、この辺も風は強く、ときおり強い雨が降る。午後2時半頃から、パソコンに向かい仕事をする。少しでも間違ってはいけない仕事なので、精神的に疲れる。
そこから逃れようと、『原民喜』を読む。
原民喜は、お見合いで貞恵さんという女性と結婚した。この本で、読む速度が速くなったのは、この結婚の時からだ。この世にたくさんの男女が生きているが、一人の男と一人の女が、まさにぴったりと「適合」するなんてことはほとんどあり得ない。だって、私たちは配偶者を、かなり狭い世界からしか選べないからだ。
だが、大杉栄と伊藤野枝のように、原民喜と貞恵さんとは、それはそれはうまく「適合」したようだ。結婚し、貞恵さんとの家庭生活の頃、その時期だけ、原民喜の生活に光がさしているようだ。
しかし貞恵さんは結核で早くに亡くなってしまう。短い結婚生活ではあったが、原民喜にとっては、とても幸せな日々であった。であるが故に、貞恵さん亡き後は、原にとって「余生」なのだ。
その「余生」のさなか、広島に帰った際に、原は被ばくした。そして、被ばくの体験を書き記すという使命感をもつ。それで書いたのが、「夏の花」なのだ。
しかし彼は、みずからが見たおびただしい死を、死ではないと記す。
これらは「死」ではない、このやうに慌しい無造作な死が「死」と云へるだらうか
死とは、原が妻貞恵を看取った時のようでなければならない。ヒロシマの被爆者の「死」はそうではなかった。