三宮正満&アンサンブル・ヴィンサント 「ゼレンカ:8声のシンフォニア」他 2/8

三宮正満&アンサンブル・ヴィンサント デビュー・コンサート

バッハ:協奏曲 ニ長調(BWV42/1-1068/2-1054/3)
ゼレンカ:ヒポコンドリア(ZWV187)
パッヘルベル:カノンとジーグ ニ長調
バッハ:オーボエとヴァイオリンのための協奏曲 ニ短調(BWV1060R)
テレマン:オーボエダモーレ協奏曲 イ長調(TWV51:A12)
ゼレンカ:8声のシンフォニア イ短調(ZWV189)

演奏 アンサンブル・ヴィンサント
メンバー
 三宮正満(オーボエ)
 荒木優子(ヴァイオリン・ソロ)
 川久保洋子(ヴァイオリン1)
 長岡聡季(ヴァイオリン2)
 山口幸恵(ヴィオラ)
 懸田貴嗣(チェロ)
 西澤誠治(コントラバス)
 鈴木優人(チェンバロ)
 尾崎温子(オーボエ2)
 功刀貴子(ファゴット)

2006/2/9 19:00~ 日本福音ルーテル東京教会

元々予定していなかったのですが、いつも拝見させていただいている「eugene's blog !!」(鍵盤楽器奏者でいらっしゃる鈴木様のブログ)の告知を読んで、当日券にて聴いてきました。場所は、新大久保にある日本福音ルーテル東京教会です。

この日のコンサートで最も面白かったのは、聞き慣れないゼレンカという作曲家(1679年ボヘミア-1745年ザクセン。カトリック宗教音楽家。)の音楽でした。バッハも高く評価していたという彼の音楽は、どことなく表情がギコチナくて、目まぐるしく曲想も変化するのですが、ともかくも楽器と楽器が丁々発止と渡り合うような、まさにバロック的なスリリングさがたまらなく魅力的で、まるでロックを聴いているようなノリすら味わえます。二曲目に演奏された「ヒポコンドリア」は、それこそヒポコンドリー(心気症)による不安や落ち着きのなさをイメージさせますが、時に「鬱」から突然「躁」へも変化して、あたかも音楽がトランス状態に陥ってしまったような気配さえ漂わせます。楽譜を飛び出した音が勝手にクルクルと踊り出している。そんな印象も与える音楽でした。

メインの「8声のシンフォニア」は、「ヒポコンドリア」と比べると構成感に優れるようです。ただこの曲も、即興的な味わい、つまりそれこそトランス的な部分に強い魅力が感じられます。第4楽章のアンダンテにて突如出現する怒濤のアレグロでは、ファゴットやチェロが、もうこれ以上楽器を酷使させるのは止めてくれんとばかりに、ブーブー、ゴリゴリと、まるで動物の鳴き声のように響き渡ります。また、第1楽章でのヴァイオリンの軽快なパッセージ、さらには第2楽章の長閑なファゴットソロなども聴き応え十分です。ウィットにも富んだゼレンカの魅力。彼の音楽に出会えたことは、この日のコンサートでの最大の収穫でした。

もちろん、いわゆる名曲も決してお座なりになっていたわけではありません。特に興味深かったのは、ハッペルベルの「カノンとジーグ」です。極めて有名な「カノン」については頻繁に耳にすることがあるのですが、その後の「ジーグ」の部分はまさに初耳でした。(本来はカノンとジーグで1セットなのだそうです。)また、「G線上のアリア」や「チェンバロ協奏曲第3番」の第3楽章などが織り交ぜられた、まるで名曲メドレーのような「協奏曲ニ長調」(この日の公演のために編曲されたもの。)も楽しく聴くことが出来ます。プログラミングの妙を感じさせた面白い試みです。

アンサンブル・ヴィンサントは尻上がりに調子を上げていました。(特に休憩後の2曲が優れていました。)低音のしっとりした響きがたまらないオーボエや、曲を細かく切り刻むかのような鋭さを見せていたコントラバス、それに全体を力強く支え、尚かつ浮き上がるようなリズム感を楽しませてくれたチェンバロが強く印象に残りました。次回のアナウンスがなかったのですが、是非また聴いてみたいと思います。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )