「もっと知りたい!モーツァルト」 N響アワー(NHK教育) 2/19

TVのスイッチを入れたら、いきなりモーツァルトの肖像画がドアップにて出て来たので、そのまましばらく見続けてみました。昨晩、NHK教育で放送されていた「N響アワー」です。

タイトルは「もっと知りたい!モーツァルト」。メモリアルイヤーに合わせた「池辺晋一郎の音楽百科」シリーズの特集ということで、池辺さんがモーツァルトの魅力について軽妙洒脱(?)に語っていきます。もちろん毎度恒例の、N響公演録画放送もあり、魔笛の序曲やピアノ協奏曲第23番、そして交響曲第41番が流れていました。これらは全て、昨年の8月から9月にかけて演奏された、スタインバーグ指揮のN響定期公演のようです。

池辺さんによれば、モーツァルトの中でも特に重要なのは、オペラ、ピアノ協奏曲、交響曲の順なのだそうです。(私としては、最後の交響曲のかわりにピアノソナタを推したいところですが、それではN響の出る幕がなくなり番組が成立しません…。)そしてもちろん上に挙げた3曲も、これらのジャンルからそれぞれ1曲ずつ選択されたものです。2曲目のピアノ協奏曲第23番は、第2楽章からの演奏でしたが、これは嬰ヘ短調からイ長調へと移り変わるこの曲魅力、強いてはモーツァルトの短調と長調の異なる魅力を味わって欲しいという配慮によるものでした。(第23番の2楽章の憂いはたまらなく魅力的!)私もモーツァルトのピアノ協奏曲は大好きで、池辺さんの仰られる通り、特に第20番以降の作品が優れているのかとも思いますが、不思議と常日頃CDラックにのっているのは、第8番と9番、それに第16番から19番あたりです。後期のシンフォニックな様式よりも、ピアノとオーケストラがまるで内緒話のように囁き合う、こじんまりとしたものを好むのかもしれません。

先にも書いたように、オペラからは魔笛の序曲が取り上げられていましたが、私もモーツァルトのオペラの序曲の中では、まず第一にこの曲を推したいと思います。晩年の透明感のある響きを、簡素な構成感にて、しかもオペラの主題を巧みに取り込む形にて表現した魔笛の序曲。特に展開部冒頭の三和音の力強い響きは、このオペラの神秘的な雰囲気を予感させます。(フリーメイソン?)もちろん、モーツァルトのオペラ序曲は、(特にドン・ジョバンニなど。)劇の中心的なエッセンスを器用に取り込んだものが多いのですが、魔笛の序曲ほど古典派的な美意識を感じさせてくれるものはありません。空疎で乾いた響きが、不思議と曲に厳格さを与えているショルティの旧盤などがお気に入りです。

交響曲第41番は、かつて私がモーツァルトにハマった頃、最も頻繁に聴いていた曲でした。先にも交響曲よりピアノソナタを挙げたいと言った私としては、モーツァルトの交響曲全般についてはそれほどに魅力を感じませんが、(むしろハイドンの交響曲の方が魅力的。)この第41番だけは何故か取り憑かれたように心に迫ります。ベートーヴェンの運命の扉に匹敵するほどに印象的なジュピターの第1主題。それが何度も何度も回帰して、まさに大伽藍のように、ブルックナーに負けないほどに(言い過ぎかもしれませんが…。)壮大な音響空間を作り上げる。音楽学者のアインシュタインが、「ギャラントなものと学問的なものとの融合が、フィナーレにおいてハッキリ示される。それは音楽史上の永遠の一瞬である。」と述べた第4楽章も、音符があれだけ堅牢に、また緻密に組み合わされているのにも関わらず、不思議と熱気を帯びていき、怒濤の二重フーガを築き上げます。この熱気を感じとれる演奏と言えば、やはりバーンスタインのものか、またそれとは別の意味での熱気(没入的ではない。)ということでのヴェーグ盤などでしょうか。また逆に、崩壊寸前のテンポ感がむしろ音楽をスリリングなものにしてしまっているというクレンペラー盤なども興味深い演奏です。常日頃楽しめるような、クセのないものとしてはヴァント旧盤などでしょうか。(もちろん、いわゆる古楽器演奏による名盤も多数ありますが。)

N響アワーでは、どうしても「オケ物」ばかり取り上げることになるのでしょうが、ヴァイオリンソナタや弦楽四重奏曲、さらにはいくつかのセレナーデや宗教曲なども素晴らしいものが多いので、是非それらも取り上げて欲しいと思いました。(そう言えば、先日N響定期にて聴いたブロムシュテットの大ミサは放送されるのでしょうか?)
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