東京交響楽団 「モーツァルト:交響曲第39番」他 2/24

東京交響楽団 第5回川崎定期演奏会

モーツァルト:交響曲第29番
モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第5番
モーツァルト:交響曲第39番

指揮 ユベール・スダーン
ヴァイオリン イリア・グリンゴルツ
演奏 東京交響楽団

2006/2/24 19:00~ ミューザ川崎シンフォニーホール2階LA

このところ元々予定していなかったコンサートが続いていますが、昨晩は川崎まで少し足を伸ばして東響の定期演奏会を聴いてきました。演目はまるで名曲シリーズのような「オールモーツァルトプログラム」。モーツァルトに強い(?)スダーンの十八番を楽しむことが出来るコンサートです。

この日の演奏で特に挙げたいのは、ヴァイオリン協奏曲を挟んで演奏された二つの交響曲でしょう。以前このコンビでブルックナーの第8交響曲を聴いた時(昨年11月の第530回定期。)の拙い感想にも書きましたが、スダーンのスタイルはあくまでもインテンポのキビキビとしたもの。颯爽とリズム感良く音楽を進めますが、もちろん一つ一つのフレーズを御座なりにすることもない。ブルックナーではやや物足りなかった東響のこぢんまりとした響きを筋肉質にまとめあげ、小気味良いモーツァルトを聴かせてくれます。ヴァイオリンと低弦部の鮮やかな対比、またはオーケストラから柔らかく浮かび上がる管の響き、さらにはティンパニの強打による跳ね上がるようなリズム感など、在京オーケストラにて、これだけ各パート毎の役割分担がしっかり出来たモーツァルトもないと思わせるほどです。見事です。

メインの第39番も非常に興味深い演奏でした。第1楽章の序奏部分では力感溢れたアタックにて曲の輪郭をハッキリと象り、そのまま音楽を大きな塊にするかのようにして「歌うアレグロ」へと突入していく。それはまるでドン・ジョバンニの序曲冒頭のデモーニッシュさを思わせます。またアンダンテ楽章においても、交響曲第40番の第1楽章のような哀しみをたたえて、曲を深く掘り下げる。そしてメヌエット楽章も、フルートに続くヴァイオリンの旋律がソロとして歌うかのように痛切に奏でられて、メヌエット特有の愉悦感よりもむしろ静謐な響きの美感が優先されます。最後のアレグロは決して走り過ぎることがありません。先にも書きましたが、各パートの響きがハッキリと区分されるように演奏され、そこから一つの塊としての全体が生まれてくるので、ヴァイオリン主導のこの楽章においても単にメロディーラインがなぞられるだけに終らない。ジュピターに匹敵するほどの構成美を感じさせながら曲が閉じていきました。東響はそんなに状態が良いとは思えませんでしたが、そんなことはあまり問題とならないほどに、考え抜かれて構成されたモーツァルトです。

アンコール曲は、宣伝も兼ねてと言うことなのか、4月にこのコンビで上演が予定されている皇帝ティートの慈悲から序曲でした。スダーンと東響にて「モーツァルト・シリーズ」をやって欲しいとさえ思うような充実した内容です。このコンビ、やはり目が離せません。

*ミューザ川崎シンフォニーホールへは今回初めて行きましたが、川崎駅からデッキで直結していて、思いの外便利な場所にあります。ホールはいわゆるワインヤード型かと思いますが、上階席がまるで芸劇のように高く奥まった位置に作られているのは驚きです。(音圧感はどうなのでしょう。)また驚きと言ったらもう一点、私が座ったステージサイドだけかもしれませんが、床が斜めになっていることです。これは少し慣れるまでに時間がかかります。最後に肝心の響きですが、残響も長過ぎることなく、素直に楽器が響いてきました。まずは好印象です。もちろん別の座席ではまた異なった響きかと思いますので、今後も何度か足を運んでみたいと思います。(今のところは、みなとみらいよりは好きな響きかもしれません。)
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