都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「絵画の行方 -現代美術の美しさって何?- 」 府中市美術館 2/11
府中市美術館(府中市浅間町1-3 都立府中の森公園内)
「絵画の行方 -現代美術の美しさって何? -」
2005/12/10-2006/2/19
現代美術、特に絵画を手がけている6名のアーティストによるグループ展です。ベテランから若手の作家まで、抽象画を基調にした絵画の「美しさ」を競い合います。コンパクトにまとまった良質な展覧会です。
まずは一番惹かれた、二木直己の「見晴し台」シリーズです。薄い紙を貼付けた横長のキャンバスの上には、白、黒、青の三層になった色状の帯びが並びます。そしてそれぞれが、一番上の白は空、中央の黒は枠や柵、下の大部分の深い青(緑?)は台と言うようにして合わさり、一つの「見晴し台」を形成するのです。また、それぞれの色の帯はシンプルでかつ抽象的なので、あえてタイトルの「見晴し台」を意識しないでも、形の面白さだけで楽しむことが出来ます。抽象と具象の揺らぎの間が心地良い作品です。
この「見晴し台」で特に素晴らしい点は、鉛筆と色鉛筆の細かい線の交錯にて生み出された、それぞれの色合いの絶妙な移ろいです。下から上、右から左、時にはグルグルと回転しながら画面を這っている、黒や青の細く柔らかい線。それが何本も何本も寄り添いながら絡み合い、最後は束となって色の帯を形成します。エネルギーを蓄えているような黒の深みと、まるで水面の揺らぎのようなワサワサした青。また、赤を一切使っていないのに、補色効果により所々が赤らんで見えるのも興味深い所です。まるでパステル画のようなしっとりした色合いの美しさは、思わず頬ずりしたくなるような優し気な雰囲気すら漂わせています。鉛筆と色鉛筆によって生み出された、たまらなく魅力的なこの質感。強く惹かれます。
二木の作品以外では、まず小林俊介の質感に優れたモノトーン絵画が一押しです。縦横2メートルほどの大きなキャンバスに、たっぷりと瑞々しく配された黄色やオレンジの顔料。何でも油で溶いた樹脂とテンペラを何層にも塗り重ねて制作したとのことですが、まるで淡い光をたくさん取り込んだような明るさと、その反面の影を映し出したような深みのある画面は、展示室の場の雰囲気をインスタレーションとして一変させる力を持っています。その色に包み込まれるかのようにして味わいたい作品です。
もう一方、詩的なタイトルと和をイメージさせる画風の調和が美しい、水上央子の作品もおすすめです。抽象的なデザインながらも、まるで琳派を思わせるような大胆な文様。それが和を思わせる落ち着いた彩色の上に飾られています。またテープで貼ったような光沢感のある模様も魅力的です。背景の色と穏やかに微睡むかのように美しく映えています。
同時開催の常設展「戦後の日本美術を中心に」と、併設の牛島憲之記念館「初期の作品を中心に」もかなり楽しめました。企画展を含め、全て次の日曜日(2/19)までの開催ですが、是非おすすめしたいと思います。(美術館へは京王線東府中駅からコミュニティバスの『ちゅうばす』を使いました。時間は約7、8分。値段は100円!30分間隔ですがこれは便利です。)
「絵画の行方 -現代美術の美しさって何? -」
2005/12/10-2006/2/19
現代美術、特に絵画を手がけている6名のアーティストによるグループ展です。ベテランから若手の作家まで、抽象画を基調にした絵画の「美しさ」を競い合います。コンパクトにまとまった良質な展覧会です。
まずは一番惹かれた、二木直己の「見晴し台」シリーズです。薄い紙を貼付けた横長のキャンバスの上には、白、黒、青の三層になった色状の帯びが並びます。そしてそれぞれが、一番上の白は空、中央の黒は枠や柵、下の大部分の深い青(緑?)は台と言うようにして合わさり、一つの「見晴し台」を形成するのです。また、それぞれの色の帯はシンプルでかつ抽象的なので、あえてタイトルの「見晴し台」を意識しないでも、形の面白さだけで楽しむことが出来ます。抽象と具象の揺らぎの間が心地良い作品です。
この「見晴し台」で特に素晴らしい点は、鉛筆と色鉛筆の細かい線の交錯にて生み出された、それぞれの色合いの絶妙な移ろいです。下から上、右から左、時にはグルグルと回転しながら画面を這っている、黒や青の細く柔らかい線。それが何本も何本も寄り添いながら絡み合い、最後は束となって色の帯を形成します。エネルギーを蓄えているような黒の深みと、まるで水面の揺らぎのようなワサワサした青。また、赤を一切使っていないのに、補色効果により所々が赤らんで見えるのも興味深い所です。まるでパステル画のようなしっとりした色合いの美しさは、思わず頬ずりしたくなるような優し気な雰囲気すら漂わせています。鉛筆と色鉛筆によって生み出された、たまらなく魅力的なこの質感。強く惹かれます。
二木の作品以外では、まず小林俊介の質感に優れたモノトーン絵画が一押しです。縦横2メートルほどの大きなキャンバスに、たっぷりと瑞々しく配された黄色やオレンジの顔料。何でも油で溶いた樹脂とテンペラを何層にも塗り重ねて制作したとのことですが、まるで淡い光をたくさん取り込んだような明るさと、その反面の影を映し出したような深みのある画面は、展示室の場の雰囲気をインスタレーションとして一変させる力を持っています。その色に包み込まれるかのようにして味わいたい作品です。
もう一方、詩的なタイトルと和をイメージさせる画風の調和が美しい、水上央子の作品もおすすめです。抽象的なデザインながらも、まるで琳派を思わせるような大胆な文様。それが和を思わせる落ち着いた彩色の上に飾られています。またテープで貼ったような光沢感のある模様も魅力的です。背景の色と穏やかに微睡むかのように美しく映えています。
同時開催の常設展「戦後の日本美術を中心に」と、併設の牛島憲之記念館「初期の作品を中心に」もかなり楽しめました。企画展を含め、全て次の日曜日(2/19)までの開催ですが、是非おすすめしたいと思います。(美術館へは京王線東府中駅からコミュニティバスの『ちゅうばす』を使いました。時間は約7、8分。値段は100円!30分間隔ですがこれは便利です。)
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )