「石内都展 - ひろしま/ヨコスカ - 」 目黒区美術館

目黒区美術館目黒区目黒2-4-36
「石内都展 - ひろしま/ヨコスカ - 」
2008/11/15-2009/1/11



切々と語られるモノローグに心打たれました。初期の「横須賀ストーリー」より最新の「ひろしま」に至るまで、石内の業績を時間軸、及び各テーマに沿って回顧します。目黒区美術館で開催中の個展へ行ってきました。

70年代後半、初期三部作の「横須賀ストーリー」、「APARTMENT」、「連夜の街」は、ざらっとした質感のモノクロームのオブラートの中から、各々の強烈な場所性が滲み出すように露となる美しい作品です。そもそも彼女は、被写体の歴史や記憶をそれ自身に語らせることに長けていますが、例えば「連夜の街」一つを取っても、汚れたタイル画やハート形の格子などから、かつて繰り広げられた卑猥な欲情の痕跡を確かに汲み取れるのではないでしょうか。また片隅捉えられた猫の姿も印象に残りました。風化し、建物からも消えつつある記憶の断片は、何食わぬ顔で歩く猫のような存在にこそ受け継がれていくのかもしれません。

身体を捉えた作品も初期作と同様、トルソーとしての面白さよりも、いかに被写体の経験を引き出すかということに強い関心が払われています。皮膚に残された生々しい傷跡やしみ、そして皺の跡は、モデルの受け継いで来た生き方の有り様を静かに語っていました。もちろんその昇華したのが「Mother's」に他なりません。石内は母の魂の居場所を口紅の中に見つけ出しました。そしてもちろん彼女は口紅と語りながら、母と過ごした日々の記憶を再生し、未来へと繋げているわけです。

「ひろしま/石内都」

「ひろしま」シリーズを私の安易な言葉で表すのは抵抗があります。有無を言わさない、肌へひしひしと伝わってくる被写体の叫びが展示室全体に谺していました。

明後日、11日までの開催です。今更ながらもおすすめします。
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