「DOMANI・明日展2008」 国立新美術館

国立新美術館港区六本木7-22-2
「DOMANI・明日展2008」
2008/12/13-2009/1/26(会期終了)



新宿(損保ジャパン)より六本木へと場所を移しました。文化庁の芸術家在外研修によって近年、海外へ「派遣された研修生を中心に、15名の作家とその作品を紹介」(公式HPより)します。DOMANI・明日展2008へ行ってきました。

以下、全て網羅するわけではありませんが、各作家についての印象を挙げます。

田中信太郎
鉄やFRPを使った三点のオブジェ。ガラスにガーゼのような白い生地を織り交ぜ、白熱灯に照らす「Basilica」(2002)は、まるでたゆたう波面のよう。モニュメント的な鉄塔は新美の空間を切り裂いていた。もの派的でもある。

舟越桂
最近の『奇獣系』の立体彫像数点。羽や翼などの異様な体つきと、視点の定まらない端正な顔立ちとのギャップにいつもながら戸惑う。ドローイングの方が好きだ。

山本富章
巨大な展示室だからこそ成り立つ作品。壁からオレンジ色に染まるカラフルな『円筒』がいくつも突き出していた。表面を覆うドットは草間のような生々しさを感じる。

石井勢津子
ホログラムアート。猫じゃらしの浮かび上がる草原の景色だけが妙に美しかった。

ヒグマ春夫
何枚かのスクリーンを紗幕状に連ねて映像を複層的に浮かび上がらせる。洪水(?)のモチーフは意味不明。



小林浩
オペラシティのprojectNでも印象に残った『ぬいぐるみ絵画』。藍色に染まるぬいぐるみが白い虚空を舞う。マスキングの効果なのか、ぬいぐるみの毛羽立った質感までが巧みに示されていた。

馬場磨貴
マンレイを思わせるシュールなモノクロ写真。ポートレートに魅力を見出せなかったが、女性性を見るというオブジェ写真はなかなか美しかった。

開発好明
94年から毎朝撮り続けたという顔写真ボックス。失礼ながらも作家の髪の毛が徐々に後退する様子が、逃れられない時間の変遷を示していた。

伴戸玲伊子
9.11にも喚起されたという大作の日本画数点。ノアの洪水のように全てを飲み込む力強く破滅的な水の渦が印象的だった。



菱山裕子
今展示で最もインパクトのあるインスタレーション。アルミやステンレスを利用した巨大人間が宙に浮く。右奥のおばさんの表情がリアルで楽しい。きっと身近にいる。



小山利枝子
ペンで描いたような細やかな線が大きな光の波を引き出す。蛍光色のパステルカラーが目に鮮やかな力強い日本画。その一方で、近づくと花弁の中を覗き込むかのような優しさをたたえていた。

いつもながらテーマ軸も皆無ということで総花的の極致のような展覧会でしたが、今年はさらに各作家の回顧的な様相も加わっていたかもしれません。旧作も目立っていました。

私立美術館の損保では致し方なかったとは言え、新美のような国立の施設で文化庁政策の一種の成果発表をするのであれば、入場は無料にするべきだと思います。

展覧会は既に終了しています。
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