都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「雪舟と水墨画」 千葉市美術館
千葉市美術館(千葉市中央区中央3-10-8)
「岡山県立美術館所蔵 雪舟と水墨画」
2008/12/20-2009/1/25
岡山県立美術館の主に水墨画コレクションを概観します。千葉市美術館で開催中の「雪舟と水墨画」へ行ってきました。
前半に牧谿、一休、雪舟らの南宋や室町期の作品が並び、後半部にて主に江戸期の武蔵、玉堂、鉄斎、または岡山出身の柴田義重と岡本豊彦が紹介されています。事実上、室町以前と江戸時代の水墨絵画に分かれた二部構成の展覧会と捉えて問題ありません。「雪舟」とあると全て室町絵画で占められているように思えてしまいますが、その辺は注意が必要です。(出品数全66点。うち室町を含むそれ以前の作品は約30点。)
冒頭、伝夏珪の「山水図」(南宋時代)の明快なパースペクティブには雪舟の原点を見ることが出来ます。葉のざわめく木立の向こうに楼閣がたち、そこから広がる湖の先には仄かに望む山々が幾重にも連なっていました。湖面に漂う靄もまた幻想的です。きっと楼閣には心地よい風が吹いているに違いありません。
重文を含む雪舟の「山水図」の三点の響宴には強く惹かれました。「山水図 倣玉潤」における瑞々しい溌墨は、まさに抽象画の美感と即興の緊張感が同時に表されています。画面左下方、横に伸びた墨の線は、水に浮かぶ一艘の小舟なのでしょうか。簡素極まりない山水の光景にも確かにドラマが存在していました。
雪村の大作、「瀟湘八景図屏風」(室町末から桃山時代)が出ています。彼にしてはやや大人しい印象を与えられましたが、まるで波頭か触手のようにして迫り出す奇岩にはやはりオリジナリティがあるのではないでしょうか。うっすらと輝く金泥もまた華やかでした。
円山四条派のDNAを岡山で受け継いだ岡本豊彦の「松鶴波涛図屏風」も見応えある一枚です。緑青の鮮やかな色遣い、もしくは明朗な鶴のモチーフなどは、其一を連想させるものがありました。また玉堂、鉄斎だけでも合計10点は展示されています。岡山県立美術館の水墨画の代表作はほぼ一揃え紹介されているのかもしれません。
同時開催中の収蔵品展「カラーズ」(出品リスト)も秀逸でした。さりげなく渓斎英泉や月岡芳年が出ています。
今月25日までの開催です。
「岡山県立美術館所蔵 雪舟と水墨画」
2008/12/20-2009/1/25
岡山県立美術館の主に水墨画コレクションを概観します。千葉市美術館で開催中の「雪舟と水墨画」へ行ってきました。
前半に牧谿、一休、雪舟らの南宋や室町期の作品が並び、後半部にて主に江戸期の武蔵、玉堂、鉄斎、または岡山出身の柴田義重と岡本豊彦が紹介されています。事実上、室町以前と江戸時代の水墨絵画に分かれた二部構成の展覧会と捉えて問題ありません。「雪舟」とあると全て室町絵画で占められているように思えてしまいますが、その辺は注意が必要です。(出品数全66点。うち室町を含むそれ以前の作品は約30点。)
冒頭、伝夏珪の「山水図」(南宋時代)の明快なパースペクティブには雪舟の原点を見ることが出来ます。葉のざわめく木立の向こうに楼閣がたち、そこから広がる湖の先には仄かに望む山々が幾重にも連なっていました。湖面に漂う靄もまた幻想的です。きっと楼閣には心地よい風が吹いているに違いありません。
重文を含む雪舟の「山水図」の三点の響宴には強く惹かれました。「山水図 倣玉潤」における瑞々しい溌墨は、まさに抽象画の美感と即興の緊張感が同時に表されています。画面左下方、横に伸びた墨の線は、水に浮かぶ一艘の小舟なのでしょうか。簡素極まりない山水の光景にも確かにドラマが存在していました。
雪村の大作、「瀟湘八景図屏風」(室町末から桃山時代)が出ています。彼にしてはやや大人しい印象を与えられましたが、まるで波頭か触手のようにして迫り出す奇岩にはやはりオリジナリティがあるのではないでしょうか。うっすらと輝く金泥もまた華やかでした。
円山四条派のDNAを岡山で受け継いだ岡本豊彦の「松鶴波涛図屏風」も見応えある一枚です。緑青の鮮やかな色遣い、もしくは明朗な鶴のモチーフなどは、其一を連想させるものがありました。また玉堂、鉄斎だけでも合計10点は展示されています。岡山県立美術館の水墨画の代表作はほぼ一揃え紹介されているのかもしれません。
同時開催中の収蔵品展「カラーズ」(出品リスト)も秀逸でした。さりげなく渓斎英泉や月岡芳年が出ています。
今月25日までの開催です。
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