都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「素朴美の系譜」 渋谷区立松濤美術館
渋谷区立松濤美術館(渋谷区松濤2-14-14)
「素朴美の系譜 - 江戸から大正・昭和へ」
2008/12/9-2009/1/25
『素朴美』というキーワードにて、近現代に至るまでの日本絵画を概観します。松濤美術館で開催中の「素朴美の系譜」へ行ってきました。
率直なところ、聞き慣れない「素朴美」のイメージは最後まで掴めませんでしたが、展示前半、中世より江戸期までの言わばヘタウマ系の絵画群(お伽草子、仏画、大津絵など。)を見るだけでもかなり楽しめるのではないでしょうか。冒頭、東博所蔵にも関わらず見る機会の少なかった「鼠草子絵巻」からして、思わずニヤリとさせられるように面白い作品です。まだばれる前の『鼠人間』が、取り澄ました様子で婚礼の席についています。展観は残念ながら一部分でしたが、クライマックスは同様の作品を絵本に仕立てたサントリー美術館のグッズにでも当たるのが手っ取り早いかもしれません。
史上最強に下手な「洛中洛外図屏風」が久々にご登場です。不釣り合いなほどに状態の良い金地に描かれているのは、それこそ大地震でも起こって地面がめちゃくちゃに隆起し、また建物が傾いたかのような京都の歪みきった町並みでした。屋根にまで届く大男や大女が、鳥居や神社も引き裂かれたシュールな空間を何食わぬ顔で行き交っています。また仰々しい落款にも注目です。これはやはり『狙って』描かれたのでしょう。
品川は長徳寺に伝わるという江戸後期の仏画、「六道絵」には度肝を抜かれました。渦巻く大波や火炎が四方八方に飛び散り、まさに阿鼻叫喚の地獄絵図が烈しいタッチで描かれています。ねっとりとした濃厚な色彩感をはじめ、主題からしても恐ろしい表現はとても素朴とは思えません。ですが、一推しは紛れもなくこれです。
白隠はともかく、細やかな点描にてシニャック顔負けの野山の景色を描く玉堂に素朴さを見いだすのは困難でしたが、その他にも好きな芋銭をはじめ、岸田劉生や熊谷守一、さらには萬鉄五郎の作品なども紹介されていました。ちなみに『素朴美』という奇怪な言葉はともかく、私が一番素朴であると感じたのは作家、武者小路実篤の描いた小品です。正面から捉えられた南瓜にはまさに彼の「心情が率直に表現」(美術館HPより)されています。気取った様はまるでありませんでした。
今月25日までの開催です。
「素朴美の系譜 - 江戸から大正・昭和へ」
2008/12/9-2009/1/25
『素朴美』というキーワードにて、近現代に至るまでの日本絵画を概観します。松濤美術館で開催中の「素朴美の系譜」へ行ってきました。
率直なところ、聞き慣れない「素朴美」のイメージは最後まで掴めませんでしたが、展示前半、中世より江戸期までの言わばヘタウマ系の絵画群(お伽草子、仏画、大津絵など。)を見るだけでもかなり楽しめるのではないでしょうか。冒頭、東博所蔵にも関わらず見る機会の少なかった「鼠草子絵巻」からして、思わずニヤリとさせられるように面白い作品です。まだばれる前の『鼠人間』が、取り澄ました様子で婚礼の席についています。展観は残念ながら一部分でしたが、クライマックスは同様の作品を絵本に仕立てたサントリー美術館のグッズにでも当たるのが手っ取り早いかもしれません。
史上最強に下手な「洛中洛外図屏風」が久々にご登場です。不釣り合いなほどに状態の良い金地に描かれているのは、それこそ大地震でも起こって地面がめちゃくちゃに隆起し、また建物が傾いたかのような京都の歪みきった町並みでした。屋根にまで届く大男や大女が、鳥居や神社も引き裂かれたシュールな空間を何食わぬ顔で行き交っています。また仰々しい落款にも注目です。これはやはり『狙って』描かれたのでしょう。
品川は長徳寺に伝わるという江戸後期の仏画、「六道絵」には度肝を抜かれました。渦巻く大波や火炎が四方八方に飛び散り、まさに阿鼻叫喚の地獄絵図が烈しいタッチで描かれています。ねっとりとした濃厚な色彩感をはじめ、主題からしても恐ろしい表現はとても素朴とは思えません。ですが、一推しは紛れもなくこれです。
白隠はともかく、細やかな点描にてシニャック顔負けの野山の景色を描く玉堂に素朴さを見いだすのは困難でしたが、その他にも好きな芋銭をはじめ、岸田劉生や熊谷守一、さらには萬鉄五郎の作品なども紹介されていました。ちなみに『素朴美』という奇怪な言葉はともかく、私が一番素朴であると感じたのは作家、武者小路実篤の描いた小品です。正面から捉えられた南瓜にはまさに彼の「心情が率直に表現」(美術館HPより)されています。気取った様はまるでありませんでした。
今月25日までの開催です。
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