「japan 蒔絵」 サントリー美術館

サントリー美術館港区赤坂9-7-4 東京ミッドタウン・ガーデンサイド)
「japan 蒔絵」
2008/12/23-2009/1/26



実のところ蒔絵はそれほど好きではありませんが、この質量ともに充実極まりない展覧会には心底驚かされました。日本の誇る蒔絵の名品が世界各地より集められています。サントリー美術館での蒔絵展へ行ってきました。



計三回の展示替えを追っかける方も多いのではないでしょうか。紹介されているのは京博や大阪市美、それにヴェルサイユ宮殿、ギメ東洋、スウェーデン王室、バリーハウス、ヴィクトリア&アルバートと、洋の東西を問わずに珠玉の蒔絵を所有する美術館の品々ばかりです。全200点弱、まさに豪華絢爛、細部にはパノラマのように広がる見事な意匠には終始圧倒されました。

代表作は公式HPを見ていただくとして、まず印象に深かったのは、西洋の銅版画をイメージしたプレケットでした。これは通常、銅版画で描かれるという肖像図を蒔絵に写し込んだもので、金に象られた男女の様子がエキゾチックなスタイルにて表されています。またこのように蒔絵を所有することにステータスがあった西洋人の一種の憧れは、時に滑稽な形で表れることもありました。その一例が「ジャパニングとワニスの技法書」などの蒔絵の言わば教本ではないでしょうか。そこには蒔絵を通して想像した何とも奇妙な日本の景色が描かれています。まさにシノワズリの極致でした。

またシノワズリ的の点においては「漆の間のあるドールハウス」も見逃せません。ここには王侯貴族が遊んだという計6室の中に、東洋趣味で統一された『中国の間』や『漆の間』が組み込まれています。もちろん必見なのは後者です。山水や花鳥モチーフの蒔絵が壁画のようにしてはめ込まれ、見るも奇妙な空間が作り上げられていました。ちなみに同様のシノワズリの関連として伊万里の大壺なども紹介されています。もちろん私は断然鍋島派ではありますが、派手な伊万里の意匠には輸出用蒔絵の感性と共通する面もありそうです。

会場前半には輸出以前、まだ西洋人も出会うべくもなかった平安から室町期の蒔絵群も展示されていました。その他、武家の趣味の色濃い桃山期の高台寺蒔絵など、里帰り作以外にも見るべき点がたくさんあります。

源氏絵から狩野派風『竹虎図』までが描かれた巨大な「マゼラン公爵家の櫃」にはたまげました。相変わらず趣味は全然合いませんが、この一点だけでも十分に行く価値のある展覧会です。



本日より会期の後半に入りました。おそらくこれほどバブリーな蒔絵展は少なくとも向こう10年はありません。お見逃しなきようご注意下さい。

今月26日までの開催です。
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