「ランドスケープ 柴田敏雄 展」 東京都写真美術館

東京都写真美術館目黒区三田1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内)
「ランドスケープ 柴田敏雄 展」 
2008/12/13-2009/2/8



「自然の中に人間が作り上げた景色」(eyesより)を鮮やかに切り取ります。東京都写真美術館で開催中の柴田敏雄の個展へ行ってきました。



自然へと果敢に飛び込み、息づく人間の『業』を捉える柴田のアプローチは、かつてのモノクロより近作のカラーに至るまで一貫して変わることがありません。緑深き山をコンクリートやブロックで覆う作為の痕跡は、当然ながら「環境問題」(ちらしより引用)を考えさせないわけではありませんが、そこに敢然と存在する人工美の世界を否定することは容易ではないでしょう。木々を押しのけて切り開かれたダムより落ちる水を捉えた「相馬郡鹿島町」(1990)では、あたかもシルクのカーテンを開くかのような緩やかな曲線美と相まってか、モダンアートを見るようなスタイリッシュさと、一方での泰然とした水自体の深遠な力を引き出すことに成功しています。轟々たる水の音はかき消され、静寂の一瞬間が克明に示されていました。

 

あるがままの人工美を提示するという観点からすれば、モノクロームよりも、被写体をオブラートに包まないカラーの方がより高い次元に達しています。何本もの白い水の筋が錆の跡と鮮やかなコントラストを描く「栃木県日光市」(2007)や、紅葉に染まる山道を一面の人工岸壁が覆った「埼玉県秩父市」(2006)などは、混沌としていたであろう原風景に別種の造形的美が現れたかのような感覚、もしくは言わば錯覚を与えていました。また柴田は、『破壊』して生まれた美の現象と、根本的に自然を変え続けなくてはならない人間のある種の後ろめたさを並列的に引き出しています。自然と人工の安易な対立はここに戒められていました。

ハイライトをカラー作品とするなら、展示の順路はむしろ逆でも良かったのではないでしょうか。前半のカラーの印象はあまりにも強烈でした。

2月8日までの開催です。
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