N響オーチャード定期 「ドヴォルザーク:交響曲第8番」他 エリシュカ

NHK交響楽団 第52回オーチャード定期演奏会

ドヴォルザーク スラブ狂詩曲第1番
モーツァルト フルートとハープのための協奏曲
ドヴォルザーク 交響曲第8番

フルート アンドレア・グリミネッリ
ハープ 平野花子
管弦楽 NHK交響楽団(コンサートマスター 篠崎史紀)
指揮 ラドミル・エリシュカ

2009/1/31 オーチャードホール

チェコのドヴォルザーク協会会長をつとめ、2008年には札幌交響楽団の首席客演指揮者に就任したラドミル・エリシュカがN響に初共演します。オーチャード定期へ行ってきました。

ともかく指揮者とオーケストラに関するならば、休憩を挟んだメインの「ドボ8」こそが全てであったと言えるのではないでしょうか。当然ながらこの曲を知り尽くしたエリシュカのこと、初共演となるN響相手にどこまで解釈を徹底出来るかにかかっていましたが、そうした初顔合わせの一種の齟齬は微塵もなく、まさに息の合った演奏を披露していました。エリシュカは決して奇を衒うことをせず、音楽の四隅を真面目なほどにピシッと揃え、常に前へと進む力を意識させる、力強くも大味にならない「ドボ8」を作り上げます。また第三楽章での甘美な旋律ではテンポを幾分落としてじっくり歌い、反面の快活なフィナーレでは時に情熱に満ちた指揮振りでN響から意外な烈しさを引き出し、音楽にメリハリのある表情を付けていました。率直なところ、この曲は「新世界」のようなドラマを感じさせるものでもない、ようは捉え難い面がありますが、それを散漫にせず、全編を太い芯で貫いたようなまとまりのある「ドボ8」を提示していたと思います。見事でした。

「ドヴォルザーク:交響曲第6番/エリシュカ」

エリシュカの指揮に応えたN響の好サポートにも触れないわけにはいきません。このところのN響は一時期に比べ、安定感を取り戻している印象がありますが、今回もまた集中力に長けた演奏を聴くことが出来ました。フィナーレの金管トランペットも無難にこなし、フルートの動機や哀愁を帯びたヴァイオリンも決して「ボヘミアの豊かな自然」(解説冊子より)を思わせるものではなかったものの、指揮に食らい付きながら美しい響きを奏でています。初共演というと今月初旬のジンマンも同様ですが、その時に感じた双方の手探り感はほぼありません。基本的に手堅く、また明快なエリシュカの指揮は、N響の音楽の志向とも良くマッチしていたようです。

前半ではフルートのグリミネッリが秀逸でした。またピアニッシモに注視されたN響の小気味良いサポートとも悪くありません。

オーチャードで聴くN響も新鮮でした。今回は縁あって三階の右バルコニーに座ることが出来ましたが、何かと音像がボヤけてしまう同ホールでも、確かにここなら音が飛んできます。ともかく『当たり席』の少ないホールではありますが、席を選べば音響の問題もかなり軽減されるようです。

Dvorak Symphony No. 8 (Szell/RCO)

*セルの「ドボ8」第4楽章。行進曲が軍楽隊風です。映像はありません。

明日、明後日のA定期、同コンビの「我が祖国」にも期待出来るのではないでしょうか。もちろん私も聴くつもりです。
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