「難波田史男展」(第3期収蔵品展) 世田谷美術館

世田谷美術館世田谷区砧公園1-2
「難波田史男展」(第3期収蔵品展)
2008/12/12-2009/2/27



難波田自身が経堂に生まれた縁もあってか、世田谷美術館には約700点を超える作品が所蔵されているそうです。収蔵品展より難波田史男の回顧展を見てきました。

展示は比較的初期より晩年まで、計78点の絵画で構成されています。いつぞや東京ステーションギャラリーで展示に接して以来、彼は私の偏愛の画家の一人となりましたが、今回もユートピアの中にも死の暗鬱な気配を漂わせる独特の世界を存分に楽しむことが出来ました。



初期の比較的色鮮やかな水彩作品では、薄い紙に儚さすら感じさせる極細の線が舞い、それらがおもちゃ箱をひっくり返した色彩の渦へと飛び込みながら、アニメーション的な動きをもって様々な『劇』を繰り広げています。今回、それらの集大成ともとれる超大作、「モグラの道」(1963)と「イワンの馬鹿」(1964)が出品されているのには驚かされました。縦70センチから150センチ、そして横は前者では何とゆうに10メートルを超えるというこの両作品は、まさに難波田の一代叙情詩ではないでしょうか。愉快に微笑む子どもたちが、何らの束縛もない様子にて、天地のひっくり返った自由極まりない空間を縦横無尽に駆けて跳ねています。永遠に続くパラレルワールドが現出していました。



一転しての晩年、特に70年代の半ばに差し掛かると、難波田の『劇』に異様な『影』が入り込んできます。色彩はくすみ、モチーフや歪みきって時に苦しみ出し、絵の躍動感自体も消えて、あたかも亡霊の浮かぶ彼岸のような世界が開かれてきました。「海」(1973)には言葉を失います。大地と海は大声をあげて嘆き悲しみ、そして崩れさっていきました。

「すさまじい力のある想像的空間」(現代に生きる/難波田史男)は魅力は決して衰えることがありません。父をゆうに超えた天才の心象風景が敢然と広がっていました。

率直なところ、メインの「十二の旅」よりもはるかに印象に残りました。

2月27日まで開催です。

*現在、初台のオペラシティでも難波田父子の展示(収蔵品展)を開催中です。
 収蔵品展028 難波田龍起・難波田史男(1/17-3/22)
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