都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「ミレー、コロー、クールベとバルビゾン派から印象派へ」 村内美術館
村内美術館(八王子市左入町787)
「ミレー、コロー、クールベとバルビゾン派から印象派へ」
常設展示
一度は訪ねたかった美術館です。八王子の村内美術館へ行ってきました。
(村内ファニチャーアクセス正面)
ご存知の通り同館は、家具の村内の会長、村内道昌氏の蒐集した、国内随一との評判も高いバルビゾン派絵画などを紹介する美術館です。八王子駅北口より無料の専用バスに揺られること約20分弱、中央道八王子インターにもほど近い国道16号沿いにその施設はありました。外観はまさにショッピングセンターそのものです。実際、この村内ファニチャーアクセス八王子本店内の3階(フロアマップ)に美術館が位置するわけですが、外から見る限りではまさかここにミレーやコローなどの優品があるとは思えません。噂には聞いていましたが、建物の様子には少し驚いてしまいました。
店内最奥部の階段をあがると美術館の入口が見えてきます。ゲートをくぐればそれまでの家具の売り場の雰囲気は一転、珠玉の西洋絵画が並ぶ優雅な空間が広がっていました。所々、西洋風の椅子や机、もしくは絨毯が置いてあるのは、やはり家具屋ならではの演出なのでしょう。失礼ながらも平凡な建物とは打って変わった、実に落ち着きのある展示室でした。これは期待が高まります。
(館内写真。パンフレットより引用。撮影は出来ません。)
基本的に企画展はなく、常に所蔵品を常設展として公開しています。構成は以下の通りでした。(約140点)
1.大自然に降りたつ旅人(ドービニー、ルソー)
2.田園のロマンを求めて バルビゾン派の巨匠たち(トロワイヨン、ディアズ)
3.三大巨匠の競演(ミレー、コロー、クールベ)
4.保守と革新(ブクロー、エネル)
5.印象派の光と影(マネ、ラトゥール)
6.エコール・ド・パリ(マルケ、マリー・ローランサン)
7.デッサン、水彩(ミレー、ワイエス)
8.フィナーレ 現代フランスの画家(ビュッフェ)
当然ながら圧巻なのは、バルビゾン派を含めた前半部、及び印象派です。村内のHPにも展示作品が紹介されているので参照いただきたいのですが、以下私の惹かれた作品をいつものようにあげてみます。
ルソー「バルビゾンの夕日」
農婦がわらを集める長閑な田園風景。バックライトを照らしたような雲の向こうには、輝かしき夕陽が今にも大地へと落ちようとしている。まさに雄大。
ドービニー「ヴァルモンドワ地方の砂掘場」
岸では馬に水を飲ませる馬夫が立っている。川面には舟も浮かぶ。この作品はドービニー自身が作らせたアトリエ船、「ボタン号」の上から描いたそう。
ジャック「帰舎」
羊飼いを描いた計四点の中でも特に印象深い作品。羊飼いと羊たちのあうんの呼吸を感じるようなほのぼのとした空間が流れている。暖色系を中心とする色遣いも美しい。
クールベ「フラジェの樫の木」
この迫力!地平線を望む草地に樫の木が敢然と隆起する。木肌の荒々しさはまるで岩肌のよう。視界を冴えぎるほどに漲る葉や枝には烈しい生気がある。この樫に漲る力強さはまさにクールベそのものの意思の現れかもしれない。
クールベ「ボート遊び」
ほぼ破綻したかのような大胆な構図に驚かされる一枚。青々とした底抜けに明るいブルーの海の上を、何とも妖艶な女性がボートを操って駆けている。当時の人はこの作品を見て度肝を抜かれたのではないだろうか。
コロー「アルバノ湖畔のフルート奏者」
湖を望む木立の中でフルートを手にした少年が立つ。靄にかすみ、風に巻かれた木々の様子はまさにコローならではの幻想性をたたえている。神話主題の絵を見るようだった。
エネル「横たわる裸婦」
同館のコレクションでも一際異彩を放つ作品。暗がりの中からまるで宝石のように浮かぶ青白い裸体の表現が素晴らしい。髪を振り上げて横たわる様は、あたかも天女の休憩の姿のようだった。
マネ「芍薬の花束」
かつてホテルオークラのアートコレクションでも記憶に深かった一枚。輝かしき透明感のあるガラスの質感が絶品。芍薬の花々が闇を煌煌と照らしていた。
ビュッフェ「ひまわり」
空間を刺すように花々の散らばる激情の向日葵。邪気すら漂うような強烈な存在感が感じられる。
以上です。さすがに著名なコレクションだけあって、画家の代表作の一つとして数えても申し分ないような作品がずらりと揃っていました。そう言えば西美のコロー展に出ていた「ヴィル・ダヴレーのカバスュ邸」も同館の所蔵品でした。また公式HPには他館への貸し出し情報も掲載されています。それによれば、今年夏に横浜で開催される「フランス絵画の19世紀」には同館の同じくコローが二点ほど展示されるようです。
単に名品を並べるだけでなく、ワークシート風の「村内館長さんの美術館面白クイズ」など、絵に親しみをもってもらうための工夫も随所に見られました。(ただし出品リストがないのは残念です。)
(送迎バス。八王子駅の乗り場がやや分かり難いので注意が必要です。乗り場案内図を参照下さい。)
立地も考えれば車がベストですが、40分に1本程度のバス(時刻表)もそう不便ではありませんでした。帰りのバスの時刻を気にしなくとも、鑑賞の後に店内をウィンドウショッピングでもすれば、すぐに時間など経ってしまいます。
「バルビゾン派への旅―森のなかの画家たち/村内美術館」
多摩方面へお出かけの際には必見のアートスポットではないでしょうか。水曜、及び年末年始を除き、ほぼ連日開館しています。
「ミレー、コロー、クールベとバルビゾン派から印象派へ」
常設展示
一度は訪ねたかった美術館です。八王子の村内美術館へ行ってきました。
(村内ファニチャーアクセス正面)
ご存知の通り同館は、家具の村内の会長、村内道昌氏の蒐集した、国内随一との評判も高いバルビゾン派絵画などを紹介する美術館です。八王子駅北口より無料の専用バスに揺られること約20分弱、中央道八王子インターにもほど近い国道16号沿いにその施設はありました。外観はまさにショッピングセンターそのものです。実際、この村内ファニチャーアクセス八王子本店内の3階(フロアマップ)に美術館が位置するわけですが、外から見る限りではまさかここにミレーやコローなどの優品があるとは思えません。噂には聞いていましたが、建物の様子には少し驚いてしまいました。
店内最奥部の階段をあがると美術館の入口が見えてきます。ゲートをくぐればそれまでの家具の売り場の雰囲気は一転、珠玉の西洋絵画が並ぶ優雅な空間が広がっていました。所々、西洋風の椅子や机、もしくは絨毯が置いてあるのは、やはり家具屋ならではの演出なのでしょう。失礼ながらも平凡な建物とは打って変わった、実に落ち着きのある展示室でした。これは期待が高まります。
(館内写真。パンフレットより引用。撮影は出来ません。)
基本的に企画展はなく、常に所蔵品を常設展として公開しています。構成は以下の通りでした。(約140点)
1.大自然に降りたつ旅人(ドービニー、ルソー)
2.田園のロマンを求めて バルビゾン派の巨匠たち(トロワイヨン、ディアズ)
3.三大巨匠の競演(ミレー、コロー、クールベ)
4.保守と革新(ブクロー、エネル)
5.印象派の光と影(マネ、ラトゥール)
6.エコール・ド・パリ(マルケ、マリー・ローランサン)
7.デッサン、水彩(ミレー、ワイエス)
8.フィナーレ 現代フランスの画家(ビュッフェ)
当然ながら圧巻なのは、バルビゾン派を含めた前半部、及び印象派です。村内のHPにも展示作品が紹介されているので参照いただきたいのですが、以下私の惹かれた作品をいつものようにあげてみます。
ルソー「バルビゾンの夕日」
農婦がわらを集める長閑な田園風景。バックライトを照らしたような雲の向こうには、輝かしき夕陽が今にも大地へと落ちようとしている。まさに雄大。
ドービニー「ヴァルモンドワ地方の砂掘場」
岸では馬に水を飲ませる馬夫が立っている。川面には舟も浮かぶ。この作品はドービニー自身が作らせたアトリエ船、「ボタン号」の上から描いたそう。
ジャック「帰舎」
羊飼いを描いた計四点の中でも特に印象深い作品。羊飼いと羊たちのあうんの呼吸を感じるようなほのぼのとした空間が流れている。暖色系を中心とする色遣いも美しい。
クールベ「フラジェの樫の木」
この迫力!地平線を望む草地に樫の木が敢然と隆起する。木肌の荒々しさはまるで岩肌のよう。視界を冴えぎるほどに漲る葉や枝には烈しい生気がある。この樫に漲る力強さはまさにクールベそのものの意思の現れかもしれない。
クールベ「ボート遊び」
ほぼ破綻したかのような大胆な構図に驚かされる一枚。青々とした底抜けに明るいブルーの海の上を、何とも妖艶な女性がボートを操って駆けている。当時の人はこの作品を見て度肝を抜かれたのではないだろうか。
コロー「アルバノ湖畔のフルート奏者」
湖を望む木立の中でフルートを手にした少年が立つ。靄にかすみ、風に巻かれた木々の様子はまさにコローならではの幻想性をたたえている。神話主題の絵を見るようだった。
エネル「横たわる裸婦」
同館のコレクションでも一際異彩を放つ作品。暗がりの中からまるで宝石のように浮かぶ青白い裸体の表現が素晴らしい。髪を振り上げて横たわる様は、あたかも天女の休憩の姿のようだった。
マネ「芍薬の花束」
かつてホテルオークラのアートコレクションでも記憶に深かった一枚。輝かしき透明感のあるガラスの質感が絶品。芍薬の花々が闇を煌煌と照らしていた。
ビュッフェ「ひまわり」
空間を刺すように花々の散らばる激情の向日葵。邪気すら漂うような強烈な存在感が感じられる。
以上です。さすがに著名なコレクションだけあって、画家の代表作の一つとして数えても申し分ないような作品がずらりと揃っていました。そう言えば西美のコロー展に出ていた「ヴィル・ダヴレーのカバスュ邸」も同館の所蔵品でした。また公式HPには他館への貸し出し情報も掲載されています。それによれば、今年夏に横浜で開催される「フランス絵画の19世紀」には同館の同じくコローが二点ほど展示されるようです。
単に名品を並べるだけでなく、ワークシート風の「村内館長さんの美術館面白クイズ」など、絵に親しみをもってもらうための工夫も随所に見られました。(ただし出品リストがないのは残念です。)
(送迎バス。八王子駅の乗り場がやや分かり難いので注意が必要です。乗り場案内図を参照下さい。)
立地も考えれば車がベストですが、40分に1本程度のバス(時刻表)もそう不便ではありませんでした。帰りのバスの時刻を気にしなくとも、鑑賞の後に店内をウィンドウショッピングでもすれば、すぐに時間など経ってしまいます。
「バルビゾン派への旅―森のなかの画家たち/村内美術館」
多摩方面へお出かけの際には必見のアートスポットではないでしょうか。水曜、及び年末年始を除き、ほぼ連日開館しています。
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