「十二の旅:感性と経験のイギリス美術」 世田谷美術館

世田谷美術館世田谷区砧公園1-2
「十二の旅:感性と経験のイギリス美術」
1/10-3/1



19世紀以降、現代までのイギリス人作家、計12名を紹介します。世田谷美術館で開催中の「十二の旅:感性と経験のイギリス美術」へ行ってきました。

上のちらし表紙を見ると、さもターナーやコンスタブルばかりがあるように思えてしまいますが、実際には上でも触れたように、あくまでも古典より『現代』までのイギリス美術を紹介する展覧会でした。よって出品作の3分の2近くは20世紀絵画、もしくは現代美術です。ちらしのイメージは捨てた方が無難かもしれません。

 

とは言え、イギリス絵画好きには、冒頭に登場するターナーとコンスタブルだけでもそれなりに楽しめます。両者とも油彩は少なく、大半は版画でしたが、ロランの構図に倣うというコンスタブルの牧歌的な「テダムの谷」(1805)、また荒々しいデヴォンの波打ち際を捉えたターナーの「イングランド南岸のピクチャレスクな光景」(1814)などにはそれぞれに魅力を感じました。ちなみにタイトルの『旅』に関して言えば、コンスタブルは終世イギリスに留まっていた反面、ターナーは仏、伊、独、アルプスの各地へ頻繁に旅して風景を描いていたそうです。そのした両者の対比点もまた興味深く思いました。

 

古典を通過するとリーチの陶芸、ムーアの彫刻、またはニコルソンの抽象を経て、一気にイギリス現代アートの世界へと突入します。率直なところ、今回の構成には相当の違和感を感じましたが、自然と作為を危ういバランスで成り立たせるゴールズワージーの他、木材と格闘し、力強く動的な彫刻を手がけるナッシュには惹かれるものがありました。ちなみに美術館エントランスのオブジェも彼の作品です。『きこり』の作家とも呼ばれ、近作では奥日光の森へと入り込み、木を切り出すことから始めるという姿勢は、まさに旅の記憶を肉体のレベルにまで深く受け止めている証なのかもしれません。

『旅』というキーワードは悪くありませんが、ターナーもムーアも、またホックニーも、やはり単体の展示で見られればと思いました。(もしくは一層のことイギリス現代美術展でも構わなかったかもしれません。)

3月1日まで開催されています。

*砧公園にて。





梅もほころんでいました。(先週)先日の暖気で、今ではもっと華やいでいるのではないでしょうか。この香りを伝えられないのが残念です。
コメント ( 5 ) | Trackback ( 0 )