「ルドゥーテ『美花選』展」 Bunkamura ザ・ミュージアム

Bunkamura ザ・ミュージアム
「ルドゥーテ『美花選』展」
5/29-7/3



Bunkamura ザ・ミュージアムで開催中の「ルドゥーテ『美花選』展」のプレスプレビューに参加してきました。

いつも華やいだムードのあるBunkamuraのミュージアムですが、今回ほどより麗しく思えたことなかったかもしれません。



それもそのはず、館内にずらりと並ぶのは、鮮やかな色をまとった花、そしてブーケ、さらには瑞々しい果実の描かれた版画、もしくは水彩画です。

革命期のフランスにて、時に「バラの画家」とも「花のラファエロ」とも呼ばれたルドゥーテの作品、全240点が、まさに艶やかに会場を彩っていました。

構成は以下の通りです。

1.早春の可憐な花々
2.初夏の庭ーバラの花園
3.ヨーロッパの花々 - アルプスから地中海まで
4.美しき実り - 果物の肖像
5.庭の新しい仲間たち - 遠方からの導入種
6.東洋の憧れ
7.エキゾチックな植物
8.ブーケの魅力


実はBunkamuraではこれまで2回ほどルドゥーテの展覧会が行われてきましたが、この3回目は晩年の「美花選」シリーズを中心とした版画作品が展示されていました。

そしてそのハイライトこそ美花選に他なりません。ルドゥーテ晩年の1827-33年、全36分冊で出版された一連のシリーズには、144枚の植物画が収められています。



もちろんそれらの花を素直に愛でても十分に楽しめますが、技術面で特徴的な要素として挙げられるのが「スティップル法」と呼ばれる凸版の版画技法です。

これは輪郭を線描せず、銅版に直接点刻し、その点だけで図像を象る技法ですが、確かにルドゥーテ作品における点描の細かさには目を奪われるものがあります。



そもそもルドゥーテの描く花や果実の作品は、植物学の面から捉えてもかなり正確だそうですが、花の表面の軽やかな質感、そして茎に生える毛、さらには葉脈などの描写は驚くほど細やかでした。



もちろん図版でもその美しさを堪能出来ますが、やはり実際の作品に接することで初めて浮かび上がってくる魅力があるとしても過言ではありません。透明感をたたえたバラには思わずうっとりさせられました。

いつもさり気なく凝った会場を演出する文化村ですが、今回も作品のイメージにぴったりの雅やかな空間が待ち構えています。


ビーズ刺繍デザイナー、田川啓二氏によるバラのオートクチュール・ドレス展示

それはずばりビーズ刺繍デザイナー、田川啓二氏によるバラのオートクチュール・ドレスの演出と、デザイナー吉谷博光氏による空間演出です。


デザイナー吉谷博光氏による空間演出

吉谷氏の手がけた空間は、「女性のための城」とも呼ばれたパリのマルメゾン宮殿の室内からインスピレーションを得たそうですが、確かに邸宅風の会場は作品の魅力をより引き立てていました。

そして最後に見逃してはならないのが、このマルメゾン宮殿にある5点の水彩画です。


ベラムに描かれた水彩画

実は今回、震災の影響で水彩画の展示がかなり難しくなっていたそうですが、開催前に急遽出品が決定し、会場のラストをより華やかに仕立てあげました。

ちなみにこの水彩の支持体は、子牛などの動物の皮からつくられるベラムという素材です。乳白色にも灯り、滑らかな質感を見せるその表面に描かれた花の味わいは、また版画とは大きく異なります。版画のみの展示と思っていた私には嬉しいサプライズでした。



月並みな表現で恐縮ですが、この展覧会はともかくひたすらに癒されます。見終えたあと、これほどほっとした気持ちになったのも久しぶりでした。

「薔薇空間 宮廷画家ルドゥーテとバラに魅せられた人々」

会期はやや短めです。7月3日まで開催されています。

注)会場の写真の撮影と掲載は主催者の許可を得ています。

「ルドゥーテ『美花選』展」 Bunkamura ザ・ミュージアム
会期:5月29日(日)~7月3日(日)
休館:無休
時間:10:00~19:00。毎週金・土は21:00まで開館。
住所:渋谷区道玄坂2-24-1
交通:JR線渋谷駅ハチ公口より徒歩7分。東急東横線・東京メトロ銀座線・京王井の頭線渋谷駅より徒歩7分。東急田園都市線・東京メトロ半蔵門線・東京メトロ副都心線渋谷駅3a出口より徒歩5分。
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