メトロポリタン・オペラ来日記者会見

メトロポリタン・オペラ来日記者会見に参加してきました。

震災、そして原発事故の影響もあり、来日直前にも大幅なキャスト変更を余儀なくされたメトロポリタン・オペラですが、6月6日、都内のホテルにて来日メンバーの記者会見が行われました。



冒頭、ピーター・ゲルブ総裁が、たった今ホテルに300人のメンバーがチェックインしたばかりだと語り、世界から注目されているこの公演をやり遂げなくてはならないとのメッセージを力強く発した上で、指揮のルイージやノセダの他、キャストのフリットリらの出席者を順に紹介していきました。

出席メンバーは主にドンカルロとボエームのキャストでしたが、ゲルブ総裁はルチア役のダムラウが赤ちゃんと母を連れて来日したことをあかし、今公演にかける思いを改めて強調していました。



続いて各出席者からそれぞれ発言がありました。そこで特に強調されたのは震災を受けた日本に対する深い思いです。フリットリは3.11の地震の様子をTVを通して見ていて、胸がとても痛んだと語った上で、被災した日本の人々に少しでも心休めることが出来るような音楽をやっていきたいとの決意を述べました。

また降板したネトレプコの代役を急遽引き受けたエリザベッタ役のポプラフスカヤもフリットリと同様、震災の様子を報道で追っていたとし、代役を告げられて4日後に飛行機に飛び乗ったほど急な話ではあったもの、それでも日本の人にベストの歌を提供したいと語りました。

なお出席者のうち、このポプラフスカヤとリーは初来日だそうです。自らがキリスト教徒であることをあかしたリーは、震災後も毎日仲間と祈りを捧げていたとの話を語りました。

その後の質疑応答ではさらに突っ込んだ話がありました。以下、その様子を一部まとめてみます。



Q 震災により紆余曲折あったと思うが、色々悩んだことや、来日に際してのメッセージを改めて聞きたい。

ゲルブ 決断はシンプル。5年に一度の来日はやめてはならないということ。メンバーに東京も名古屋も安全であることを伝えたが、その思いを皆で共有するのは確かに大変だった。キャストの変更があっても来日は正しかったと思っている。被災した日本の方に普段の、そして文化的な生活を取り戻して欲しい。外国のメディアは原発事故の報道で混乱している。色々な情報が錯綜したこともあって、ためらったメンバーも多かった。しかし自分たちが来ることで、他の人達に日本は安全であることを伝えたかった。

Q こういう状況下でどのような音楽をやっていこうと思うのか。その決意は。

ルイージ この時期だからこそ精神的、そして芸術的な支援が必要。私たちは全ての人々を幸せにすることは出来ないが、音楽は何か心の糧になるのではないか。震災後も日本の友人たちからたくさんの温かいメッセージをいただいた。その期待に応えたい。

ノセダ 私が首席指揮者をつとめるBBC交響楽団は震災時、日本ツアーの最中だった。残念ながらすぐに引き上げてしまったが、彼らからこの震災の大変な状況を色々と聞いてきた。その中で私が出来ることが何かと考えた時、やはり指揮で音楽を伝え、偉大な作曲家たちの残した希望や愛のメッセージを伝えることだと思った。それを成し遂げたい。

Q 代役にたった二人のソリストの意気込みを聞きたい。

ポプラフスカヤ 突然の話で驚いたが、自分の中でベストを尽くすつもり。

リー 実は自分がオペラにデビューしたのがドン・カルロの演目だった。そして今回が初めての来日だか、日本デビューもドン・カルロ。運命的なものを感じる。頑張りたい。

Q 役柄の変更についてどうか。

フリットリ オペラというのは公演前に入念に練習をしなくてはいけない。私も一ヶ月前からエリザベッタをずっと練習してきた。しかし今回は飛行機で日本へ着いてからの役柄の変更を告げられて正直かなり驚いている。結局一晩、といっても2時間だか寝た後、すぐに引き受けた。もちろん正しい選択だと思っている。何故ならこのツアーは絶対に実現しなくてはいかないから。ミミは一ヶ月前に歌ったこともあったので大丈夫。



その他、出席メンバーの多いドン・カルロの音楽面についての質問などがあった上で記念撮影となり、記者発表は散会となりました。なお発表会の様子はustreamのアーカイブで動画を見ることが出来ます。あわせてご覧ください。

MET来日記者会見 06/05/11@ustream

ともかくこの質疑応答にもありますが、ゲルブ総裁以下、メンバーの方々の本公演にかける気迫をひしひしと伝わってくる内容でした。メンバーは終始にこやかで、会も和気あいあいとしたものでしたが、その内側に秘められた気迫、そして熱い思いを感じてなりません。



この後、東京文化会館へ移動し、ルチアの公開ゲネプロを拝見してきました。そちらは別記事でまとめます。*6/8追記:以下リンク先に掲載しました。

「メトロポリタン・オペラ公開ゲネプロ」 東京文化会館(拙ブログ)



KDDI オペラスペシャル「メトロポリタン・オペラ(Met)」2011年6月日本公演

・名古屋公演 愛知県芸術劇場大ホール
 「ラ・ボエーム」6/4
 「ドン・カルロ」6/5 
・東京公演
 「ラ・ボエーム」6/8、6/11、6/17、6/19 NHKホール
 「ドン・カルロ」6/10、6/15、6/18 NHKホール
 「ランメルモールのルチア」6/9、6/12、6/16、6/19 東京文化会館
・MET管弦楽団特別コンサート 6/14 サントリーホール
コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )