都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「不滅のシンボル 鳳凰と獅子」 サントリー美術館
サントリー美術館
「不滅のシンボル 鳳凰と獅子」
6/8-7/24
古代から近世に至る鳳凰と獅子のイメージの変遷を辿ります。サントリー美術館で開催中の「不滅のシンボル 鳳凰と獅子」へ行ってきました。
前々にチラシを戴いた時からかなり楽しみにしていましたが、実際に見てもその期待は全く裏切られることはありませんでした。
まさにお宝集結の展覧会です。前回展はほぼサントリー美術館の館蔵品のみで構成されていましたが、今回は館外品、とりわけ寺院所蔵の作品がメインです。いつ次に見られるかどうかという品も多数ありました。
構成は以下の通りです。
第1章 暮らしの中の鳳凰と獅子 - 御輿・獅子舞・狛犬
第2章 古代における鳳凰と獅子 - 銅鏡や磚をめぐって
第3章 獅子舞と狛犬 - 正倉院の頃から始まる守護獣の歴史
第4章 仏教における獅子 - 文殊菩薩像を中心に
第5章 鳳凰降臨 - 彫像や神宝にみる高貴なシンボル
第6章 よみがえる鳳凰 - 東アジアにおける鳳凰図の展開
第7章 工芸にみる鳳凰と獅子 - 唐物や茶道具を中心に
第8章 屏風に描かれた鳳凰と獅子 -「唐獅子図屏風」から若冲まで
第9章 獅子の乱舞 - 芸能と獅子をめぐって
第10章 江戸文化にみる鳳凰と獅子 - 色絵陶磁器から水墨画まで
第11章 蘭学興隆から幕末へ - 洋風画と浮世絵をめぐって
第12章 不滅のシンボル - 人間と共に生きる鳳凰と獅子
非常に細かな章立てとなっていますが、ともかくあちこちに登場する鳳凰と獅子のモチーフを追っかけていくだけでも十分に楽しめるのでないでしょうか。それこそ飛鳥時代の磚(せん)と呼ばれるタイルから20世紀の布地までと、時代を超えての幅広い文物が紹介されていました。
「銅製貼銀流金双鳳さん猊文八稜鏡」唐時代 大和文華館蔵
鏡好きには冒頭から見逃せない作品が登場します。中国・唐時代の鏡には軽やかに天を舞う鳳凰とともに、地を力強く駆ける獅子が対になって刻まれていました。
ちなみにこの展覧会は当初、オール鳳凰のみで企画されていたそうですが、こうした昔の鏡には既に二つセットで描かれることが一般的だっただけに、今回のように鳳凰と獅子との比較展示になったとのことでした。
貴重な仏画も見どころの一つです。醍醐寺より出品の「文殊渡海図」(6/27まで)には、菩薩様の下に獅子が描かれています。なおこの獅子に関しては時代によって表現、描写が大きく変化していくのに対し、鳳凰はあまり変わりません。その辺の対比もまた展示のポイントと言えそうです。
「鳳凰石竹図」林良 明時代 相国寺蔵
私として展示のハイライトとして推したいのは、第6章における「鳳凰図日中そろい踏み」のコーナーです。ここでは中国・明時代の「鳳凰図」(6/27まで)を筆頭に、若冲の「旭日鳳凰図」(7/4まで)から探幽の「桐鳳凰図屏風」(6/27まで)、また雪佳の「白鳳図」(7/4まで)までがずらりと勢揃いしています。
「旭日鳳凰図」伊藤若冲 宝暦5年 宮内庁三の丸尚蔵館蔵
かの若冲の作は既に皇室の名宝展などでも展観され、その鮮烈な鳳凰に度肝を抜かれたところですが、それも先行例、つまりは中国の鳳凰図があったということが良く分かります。さらにはそうした定番の鳳凰を一気にグラフィック化して、自己の表現として収めた雪佳の作にもまた惹かれるものがありました。
「樹花鳥獣図屏風」伊藤若冲 江戸時代 静岡県立美術館蔵
さて若冲と言えばもう一点、人気の象さん升目描きの屏風、「樹花鳥獣図屏風」(6/20まで)が静岡より出品されています。鳳凰は鳥尽くしの左隻の中央に構えているのですぐに分かりますが、白象が目立つ右隻にも確かに獅子が描かれていました。
ここまでの4階部分の展示があまりにも見事なだけに、階下の3階についてはやや大人しい印象もありましたが、それでも注目すべき作品がいくつもありました。まずその一つとして挙げたいのが、彭城百川の「天台岳中石橋図 旧慈門院襖絵」(7/4まで)です。
ここでは石橋の上に獅子がどっしりと鎮座していますが、ともかくはその表現に注目です。頭の上には他に類例がないという赤い牡丹の花をのせています。これは歌舞伎舞踊に由来するものと考えられているそうですが、一度見たらしばらくは頭を離れそうもないその鮮烈なビジュアルには驚かされました。
沈南蘋の「獅子図」(6/27まで)がさり気なく出ているのには驚きましたが、他にも芦雪の超・脱力系の「唐獅子図屏風」(6/27まで)など、一連の獅子の表現にもまた見るべき点があります。
「大獅子図」竹内栖鳳 明治35年 藤田美術館蔵
そのような獅子の半ば総元締として登場するのが、竹内栖鳳の「大獅子図」(6/27まで)でした。ここではその下絵も並んで紹介されていましたが、実際のライオンを見て描いたこの大作の精緻な描写と言ったら比類がありません。栖鳳は渡欧中、わざわざライオンを見るために予定を三週間も延ばしてスケッチなどに精を出したそうですが、その熱心な研究の成果は本画でも確かに見ることが出来ました。
さてこの展覧会ほど展示替えリストと睨めっこしなくてはいけないこともないかもしれません。
「鳳凰と獅子」展示替えリスト@サントリー美術館
例えば若冲の二点、「樹花鳥獣図屏風」(6/20まで)と「旭日鳳凰図」(7/24まで)を同時に見るには、次の月曜日、6/20までしかチャンスが残されていません。
「桐鳳凰図屏風」狩野探幽 江戸時代 サントリー美術館蔵
その一方、例えば後半期の目玉でもある永徳・常信の「唐獅子図屏風」は、7/6から登場します。その他にも仏画、鳳凰図関連を中心に多数展示替えがあります。基本的に展示品の大部分を見るには2度(7月前半に多数入れ替わります。)ほど通う必要がありますが、場合によっては前・中・後期の3度行く必要があるかもしれません。
7月24日まで開催されています。まずはおすすめです。
「開館50周年記念 美を結ぶ。美をひらく。2 不滅のシンボル 鳳凰と獅子」 サントリー美術館
会期:6月8日(水)~7月24日(日)
休館:火曜日
時間:10:00~18:00(金・土は10:00~20:00)
場所:港区赤坂9-7-4 東京ミッドタウンガレリア3階
交通:都営地下鉄大江戸線六本木駅出口8より直結。東京メトロ日比谷線六本木駅より地下通路にて直結。東京メトロ千代田線乃木坂駅出口3より徒歩3分。
「不滅のシンボル 鳳凰と獅子」
6/8-7/24
古代から近世に至る鳳凰と獅子のイメージの変遷を辿ります。サントリー美術館で開催中の「不滅のシンボル 鳳凰と獅子」へ行ってきました。
前々にチラシを戴いた時からかなり楽しみにしていましたが、実際に見てもその期待は全く裏切られることはありませんでした。
まさにお宝集結の展覧会です。前回展はほぼサントリー美術館の館蔵品のみで構成されていましたが、今回は館外品、とりわけ寺院所蔵の作品がメインです。いつ次に見られるかどうかという品も多数ありました。
構成は以下の通りです。
第1章 暮らしの中の鳳凰と獅子 - 御輿・獅子舞・狛犬
第2章 古代における鳳凰と獅子 - 銅鏡や磚をめぐって
第3章 獅子舞と狛犬 - 正倉院の頃から始まる守護獣の歴史
第4章 仏教における獅子 - 文殊菩薩像を中心に
第5章 鳳凰降臨 - 彫像や神宝にみる高貴なシンボル
第6章 よみがえる鳳凰 - 東アジアにおける鳳凰図の展開
第7章 工芸にみる鳳凰と獅子 - 唐物や茶道具を中心に
第8章 屏風に描かれた鳳凰と獅子 -「唐獅子図屏風」から若冲まで
第9章 獅子の乱舞 - 芸能と獅子をめぐって
第10章 江戸文化にみる鳳凰と獅子 - 色絵陶磁器から水墨画まで
第11章 蘭学興隆から幕末へ - 洋風画と浮世絵をめぐって
第12章 不滅のシンボル - 人間と共に生きる鳳凰と獅子
非常に細かな章立てとなっていますが、ともかくあちこちに登場する鳳凰と獅子のモチーフを追っかけていくだけでも十分に楽しめるのでないでしょうか。それこそ飛鳥時代の磚(せん)と呼ばれるタイルから20世紀の布地までと、時代を超えての幅広い文物が紹介されていました。
「銅製貼銀流金双鳳さん猊文八稜鏡」唐時代 大和文華館蔵
鏡好きには冒頭から見逃せない作品が登場します。中国・唐時代の鏡には軽やかに天を舞う鳳凰とともに、地を力強く駆ける獅子が対になって刻まれていました。
ちなみにこの展覧会は当初、オール鳳凰のみで企画されていたそうですが、こうした昔の鏡には既に二つセットで描かれることが一般的だっただけに、今回のように鳳凰と獅子との比較展示になったとのことでした。
貴重な仏画も見どころの一つです。醍醐寺より出品の「文殊渡海図」(6/27まで)には、菩薩様の下に獅子が描かれています。なおこの獅子に関しては時代によって表現、描写が大きく変化していくのに対し、鳳凰はあまり変わりません。その辺の対比もまた展示のポイントと言えそうです。
「鳳凰石竹図」林良 明時代 相国寺蔵
私として展示のハイライトとして推したいのは、第6章における「鳳凰図日中そろい踏み」のコーナーです。ここでは中国・明時代の「鳳凰図」(6/27まで)を筆頭に、若冲の「旭日鳳凰図」(7/4まで)から探幽の「桐鳳凰図屏風」(6/27まで)、また雪佳の「白鳳図」(7/4まで)までがずらりと勢揃いしています。
「旭日鳳凰図」伊藤若冲 宝暦5年 宮内庁三の丸尚蔵館蔵
かの若冲の作は既に皇室の名宝展などでも展観され、その鮮烈な鳳凰に度肝を抜かれたところですが、それも先行例、つまりは中国の鳳凰図があったということが良く分かります。さらにはそうした定番の鳳凰を一気にグラフィック化して、自己の表現として収めた雪佳の作にもまた惹かれるものがありました。
「樹花鳥獣図屏風」伊藤若冲 江戸時代 静岡県立美術館蔵
さて若冲と言えばもう一点、人気の象さん升目描きの屏風、「樹花鳥獣図屏風」(6/20まで)が静岡より出品されています。鳳凰は鳥尽くしの左隻の中央に構えているのですぐに分かりますが、白象が目立つ右隻にも確かに獅子が描かれていました。
ここまでの4階部分の展示があまりにも見事なだけに、階下の3階についてはやや大人しい印象もありましたが、それでも注目すべき作品がいくつもありました。まずその一つとして挙げたいのが、彭城百川の「天台岳中石橋図 旧慈門院襖絵」(7/4まで)です。
ここでは石橋の上に獅子がどっしりと鎮座していますが、ともかくはその表現に注目です。頭の上には他に類例がないという赤い牡丹の花をのせています。これは歌舞伎舞踊に由来するものと考えられているそうですが、一度見たらしばらくは頭を離れそうもないその鮮烈なビジュアルには驚かされました。
沈南蘋の「獅子図」(6/27まで)がさり気なく出ているのには驚きましたが、他にも芦雪の超・脱力系の「唐獅子図屏風」(6/27まで)など、一連の獅子の表現にもまた見るべき点があります。
「大獅子図」竹内栖鳳 明治35年 藤田美術館蔵
そのような獅子の半ば総元締として登場するのが、竹内栖鳳の「大獅子図」(6/27まで)でした。ここではその下絵も並んで紹介されていましたが、実際のライオンを見て描いたこの大作の精緻な描写と言ったら比類がありません。栖鳳は渡欧中、わざわざライオンを見るために予定を三週間も延ばしてスケッチなどに精を出したそうですが、その熱心な研究の成果は本画でも確かに見ることが出来ました。
さてこの展覧会ほど展示替えリストと睨めっこしなくてはいけないこともないかもしれません。
「鳳凰と獅子」展示替えリスト@サントリー美術館
例えば若冲の二点、「樹花鳥獣図屏風」(6/20まで)と「旭日鳳凰図」(7/24まで)を同時に見るには、次の月曜日、6/20までしかチャンスが残されていません。
「桐鳳凰図屏風」狩野探幽 江戸時代 サントリー美術館蔵
その一方、例えば後半期の目玉でもある永徳・常信の「唐獅子図屏風」は、7/6から登場します。その他にも仏画、鳳凰図関連を中心に多数展示替えがあります。基本的に展示品の大部分を見るには2度(7月前半に多数入れ替わります。)ほど通う必要がありますが、場合によっては前・中・後期の3度行く必要があるかもしれません。
7月24日まで開催されています。まずはおすすめです。
「開館50周年記念 美を結ぶ。美をひらく。2 不滅のシンボル 鳳凰と獅子」 サントリー美術館
会期:6月8日(水)~7月24日(日)
休館:火曜日
時間:10:00~18:00(金・土は10:00~20:00)
場所:港区赤坂9-7-4 東京ミッドタウンガレリア3階
交通:都営地下鉄大江戸線六本木駅出口8より直結。東京メトロ日比谷線六本木駅より地下通路にて直結。東京メトロ千代田線乃木坂駅出口3より徒歩3分。
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