都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「もっと知りたいパウル・クレー」(新藤真知著) 東京美術
東京美術の「もっと知りたいパウル・クレー」(新藤真知著)を読んでみました。
現在、東京国立近代美術館を巡回中の「パウル・クレー」展ですが、それにも合わせて、お馴染みの東京美術から「もっと知りたいパウル・クレー」が発売されました。
目次は以下の通りです。(東京美術サイトより転載)
クレーの「絵」
Prologue─クレーの生きた時代
Chapter1 アルプスの麓に生まれて 0→17歳(1879-1897)
クレー少年の夏
アルプスの自然のなかで
【COLUMN】クレーのノートブック
【特集もっと知りたい1】ヨーロッパの芸術運動
Chapter2 修業時代─クレーのキッチン 18→30歳(1898-1910)
画学生クレーの昼と夜
シュヴァービングの静かな日々
Chapter3 色彩との邂逅─画家の誕生 30→39歳(1911-1919)
『カンディード』或いは楽天主義説
「青騎士」の一員に
チュニジアの光に誘われ
戦禍の狭間で高まる名声
ドイツ帝国崩壊─革命の嵐のなかで
ドイツ前衛美術の騎手として
【特集もっと知りたい2】クレーの自画像
Chapter4 バウハウス時代─クレーの黄金期 40→53歳(1920-1933)
バウハウスの教授として
カンディンスキーとともに
エジプトの思い出
【特集もっと知りたい3】クレー絵画と音楽
【特集もっと知りたい4】不思議なマチエール
Chapter5 線を引かぬ日はなし 54→60歳(1934-1940)
時空を旅するクレー 画家の過去・現在・未来
力の限り描く
最期の日々
【特集もっと知りたい5】クレーの天使
Epilogue─約4000点の作品が集うクレーの殿堂 パウル・クレー・センター
日本でクレーに出会う
展覧会がクレーの製作技法等に着目した構成であったのに対し、この本ではクレーの画業を時系列に辿る内容となっています。展示に単に準拠するのではなく、むしろクレーの全体像を知るのに最適な一冊と言えるかもしれません。
冒頭はクレーが少年時代に描いた作品の紹介から始まります。クレーの作品は音楽と絡めて語られることが多くありますが、そもそも彼の父親は音楽教師であり、自身も10代前半でベルンの管弦楽団にヴァイオリニストとして活動する機会を得ていました。
クレーの青年期の作品がかなり個性的です。不気味なポーズをとる女性の姿を描いた「乙女」などは、後半のクレーからは想像もつかない特異な作品と言えるかもしれません。
画学生時代のクレーはかなり奔放です。ピアニストでクレーの生活全般を支えたリリーとの結婚生活を送りながらも、一方で恋人をつくり、妊娠までさせてしまうこともあったそうです。本書ではそうしたクレーの私生活のエピソードなどもかなり細かく紹介されていました。
青騎士やバウハウスの時代へ進むといわゆるクレーの画業も一つの頂点を迎えます。今でこそおしも推されぬ大家のクレーが、いわゆる安定した収入を得ることが出来たのは、バウハウスの教授になった40歳の頃だったとは知りませんでした。
ナチスの時代へ入るとクレーは生活そのものが脅かされます。亡命の経緯などについての詳細な解説もありましたが、頽廃芸術の烙印をおされてドイツを逃れ、スイス・ベルンの市民権を得たのは、クレーが死亡してから6日後のことでした。まさに不遇です。
時系列にクレーの生涯を追いながらも、月や星などの頻出するモチーフ、また天使、それに自画像など、各テーマにそってクレーの画業を見ていくトピックも多数用意されています。今回のクレー展に出品された作品の解説もいくつかあり、実際の作品と見比べて理解を深めるのも良いのではないでしょうか。
著者は異色の経歴をもちながらも、日本クレー協会の代表をつとめる新藤氏です。クレーの絵画らしく色や記号をふんだんに用いてのページ構成もなかなか秀逸でした。
「もっと知りたいパウル・クレー/新藤真知/東京美術」
なお東近美のクレー展の様子は以下のエントリにまとめてあります。
「パウル・クレー展」 東京国立近代美術館(拙ブログ)
またクレー展ですが、7月より夜間開館を再開し、毎週金・土は20時まで開館するそうです。これは狙い目ではないでしょうか。
7月から本館の夜間開館を再開します!(東京国立近代美術館)
まずは是非書店でご覧ください。
現在、東京国立近代美術館を巡回中の「パウル・クレー」展ですが、それにも合わせて、お馴染みの東京美術から「もっと知りたいパウル・クレー」が発売されました。
目次は以下の通りです。(東京美術サイトより転載)
クレーの「絵」
Prologue─クレーの生きた時代
Chapter1 アルプスの麓に生まれて 0→17歳(1879-1897)
クレー少年の夏
アルプスの自然のなかで
【COLUMN】クレーのノートブック
【特集もっと知りたい1】ヨーロッパの芸術運動
Chapter2 修業時代─クレーのキッチン 18→30歳(1898-1910)
画学生クレーの昼と夜
シュヴァービングの静かな日々
Chapter3 色彩との邂逅─画家の誕生 30→39歳(1911-1919)
『カンディード』或いは楽天主義説
「青騎士」の一員に
チュニジアの光に誘われ
戦禍の狭間で高まる名声
ドイツ帝国崩壊─革命の嵐のなかで
ドイツ前衛美術の騎手として
【特集もっと知りたい2】クレーの自画像
Chapter4 バウハウス時代─クレーの黄金期 40→53歳(1920-1933)
バウハウスの教授として
カンディンスキーとともに
エジプトの思い出
【特集もっと知りたい3】クレー絵画と音楽
【特集もっと知りたい4】不思議なマチエール
Chapter5 線を引かぬ日はなし 54→60歳(1934-1940)
時空を旅するクレー 画家の過去・現在・未来
力の限り描く
最期の日々
【特集もっと知りたい5】クレーの天使
Epilogue─約4000点の作品が集うクレーの殿堂 パウル・クレー・センター
日本でクレーに出会う
展覧会がクレーの製作技法等に着目した構成であったのに対し、この本ではクレーの画業を時系列に辿る内容となっています。展示に単に準拠するのではなく、むしろクレーの全体像を知るのに最適な一冊と言えるかもしれません。
冒頭はクレーが少年時代に描いた作品の紹介から始まります。クレーの作品は音楽と絡めて語られることが多くありますが、そもそも彼の父親は音楽教師であり、自身も10代前半でベルンの管弦楽団にヴァイオリニストとして活動する機会を得ていました。
クレーの青年期の作品がかなり個性的です。不気味なポーズをとる女性の姿を描いた「乙女」などは、後半のクレーからは想像もつかない特異な作品と言えるかもしれません。
画学生時代のクレーはかなり奔放です。ピアニストでクレーの生活全般を支えたリリーとの結婚生活を送りながらも、一方で恋人をつくり、妊娠までさせてしまうこともあったそうです。本書ではそうしたクレーの私生活のエピソードなどもかなり細かく紹介されていました。
青騎士やバウハウスの時代へ進むといわゆるクレーの画業も一つの頂点を迎えます。今でこそおしも推されぬ大家のクレーが、いわゆる安定した収入を得ることが出来たのは、バウハウスの教授になった40歳の頃だったとは知りませんでした。
ナチスの時代へ入るとクレーは生活そのものが脅かされます。亡命の経緯などについての詳細な解説もありましたが、頽廃芸術の烙印をおされてドイツを逃れ、スイス・ベルンの市民権を得たのは、クレーが死亡してから6日後のことでした。まさに不遇です。
時系列にクレーの生涯を追いながらも、月や星などの頻出するモチーフ、また天使、それに自画像など、各テーマにそってクレーの画業を見ていくトピックも多数用意されています。今回のクレー展に出品された作品の解説もいくつかあり、実際の作品と見比べて理解を深めるのも良いのではないでしょうか。
著者は異色の経歴をもちながらも、日本クレー協会の代表をつとめる新藤氏です。クレーの絵画らしく色や記号をふんだんに用いてのページ構成もなかなか秀逸でした。
「もっと知りたいパウル・クレー/新藤真知/東京美術」
なお東近美のクレー展の様子は以下のエントリにまとめてあります。
「パウル・クレー展」 東京国立近代美術館(拙ブログ)
またクレー展ですが、7月より夜間開館を再開し、毎週金・土は20時まで開館するそうです。これは狙い目ではないでしょうか。
7月から本館の夜間開館を再開します!(東京国立近代美術館)
まずは是非書店でご覧ください。
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