「成層圏 Vol.2 増山士郎」 ギャラリーαM

ギャラリーαM
「成層圏 Vol.2 増山士郎」
5/21-6/25



ギャラリーαMで開催中の「成層圏Vol.2」、増山士郎個展を見てきました。

増山士郎のプロフィールと展示概要については同ギャラリーのWEBサイトをご覧ください。

vol.2 増山士郎 Shiro MASUYAMA@ギャラリーαM

最近ではロンドンのTenderpixel Galleryでの個展の他、市原市水と彫刻の丘美術館の「Intervention」展などに出品がありました。

さて現在、北アイルランドのベルファストに住む増山ですが、今回の展示でテーマとなる場所もそこに他なりません。



ともかく会場を入ってすぐ目に飛び込んでくるのは巨大なジオラマです。これは言うまでもなくベルファストの街のミニチュアですが、灰色に染まる街の風景はどこか冷たい表情をしていました。

そしてここではまず建物の上に靡く旗に注目です。屋根にはアイルランドやイギリスの国旗が掲げられています。それが一体何を意味するのかという点が大きなポイントでもありました。

結論から述べればここで増山はコミュニティーの諸問題を鋭くついています。ベルファストを含む北アイルランドはカトリックとプロテスタントの対立の他、イギリスからの分離独立運動などかかえたいわゆる紛争地帯ですが、増山はあくまでも異邦人の視点から、その相互の抱える問題を視覚的に提示していました。



そしてさらに重要なのは映像作品です。現地で生活を営む増山は、そこでとある日常的に受けた嫌がらせを切っ掛けに、ベルファストでは決して珍しくはないテロの問題までをどこかアイロニカルな視点で見つめています。この深く介入するともまた全く不作為にもならないという立場こそ、増山ならではの絶妙なアプローチと言えるかもしれません。



ジオラマの街の中心部では衝突の現場が生々しい形で再現されていました。この紛争地帯における暴力や危険性は、我々日本人にとってもジオラマを通してリアルな体験として浮き上がってくるのではないでしょうか。

なおこうした対立や境界の問題は、もうひとつの映像作品、「crossing the border」でも見ることが出来ます。国際空港を舞台にした何気ない増山のアクションは、対立云々を乗り越えたボーダレスな地点の在処を抉り出していました。

ご本人のツイッター(@ozingerm)によると明日の最終日は在廊されるそうです。お話を伺いながら見るのも良いのではないでしょうか。

作家の戦略的な視点が際立った展示です。ジオラマと映像からまさかこのような社会的なテーマが引き出されるとは思いませんでした。

6月25日までの開催です。

「成層圏 Vol.2 増山士郎」 ギャラリーαM
会期:5月21日(土)~6月25日(土)
休廊:日・月・祝
時間:12:00~17:00
住所:千代田区東神田1-2-11アガタ竹澤ビルB1F
交通:都営新宿線馬喰横山駅A1出口より徒歩2分、JR総武快速線馬喰町駅西口2番出口より徒歩2分、日比谷線小伝馬町駅2、4番出口より徒歩6分
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