「MOTアニュアル2014」 東京都現代美術館

東京都現代美術館
「MOTアニュアル2014 フラグメントー未完のはじまり」
2/15-5/11



東京都現代美術館で開催中の「MOTアニュアル2014 フラグメントー未完のはじまり」を見て来ました。

既に第13回を数えるに至ったMOT恒例のアニュアル展。今回は以下の6名(組)の作家を紹介。テーマは欠片や破片、またPC上の不連続データなどを意味する「フラグメント」です。時に既製品や風景から「フラグメント」を取り出す。そこから各作家がどのような表現をするのか。平面や立体、また映像にインスタレーションと様々な展示が行われていました。

青田真也|高田安規子・政子|パラモデル|福田尚代|宮永亮|吉田夏奈

では順に作品の印象を挙げてみます。トップバッターは高田安規子・政子。まず目につくのが三つの白い洗面器。何が入っているのだろう。ともかくは覗いてみました。

するとコロッセオや凱旋門が建っている。古代ローマ、いずれも小さなミニチュアです。表面には無数の穴があき、作品の周囲には粉のようなものが散っている。素材を知って驚きました。軽石です。ようは軽石に彫刻を施して遺跡を作ったわけです。


*参考写真:高田安規子・政子 「ラントシャフト5」@ラディウム 2010年

そして目を転じれば長いガラスケース。中には色とりどりのカットグラスが並んでいる。こちらも素材を見て驚くこと請け合いです。何と吸盤です。先の軽石は何となく分かりましたが、今度はまるで吸盤と分からない。まさにガラス面の如く美しい光を放っています。軽石に吸盤。また苔を西洋の庭園迷路に見立てた作品もあります。身近で小さなモノや生き物が遺跡や庭園へと転換する。スケール感は大きく変化します。興味深いものがありました。

私の目当ては映像作家の宮永亮です。2011年のギャラリーαMでも個展を開催。インスタレーションを交えての見事な展示を見せてくれました。


*参考写真:宮永亮 「成層圏 vol.5」@ギャラリーαM 2011年

今回は映像一点勝負。「WAVY」です。巨大なスクリーンに映し出される風景の断片。宮永が国内各地から採取した風景が「波」を軸に交錯する。初めは黄色に靡く静かな花園です。そこから野山、穀倉地帯、海をも俯瞰する田園地帯へと進み行き、高速道路を疾走、いつしかガラス張りの高層ビルの立ち並ぶ大都会へと移り行きます。ある時に映像は上下に反転。凄まじいスピード感をもっては入れ替わり、またレイヤー状に何層も合わさっていく。波が打ち寄せては引く光景と重なるのではないでしょうか。音と映像による巨大なイリュージョン。ネタバレになるので細かには触れませんが、10分間の映像の「旅」。最初から最後までじっくり楽しみました。

もはやストイックなまでにあらゆるものを削りに削る。作家の名は青田真也です。先だっての横浜「日常/オフレコ」では何とピアノを削った作品を展示していました。


*参考写真:青田真也 「日常/オフレコ」@KAAT神奈川芸術劇場 2014年

さて今回は何か。ホワイトキューブの中の台の上に並ぶのは色とりどりのボトルです。大きさは様々。10センチにも見たない小瓶から40センチを超えるものまである。そして表面はいずれもつや消しのような質感をたたえています。言うまでもなくこれらは青田が市販のボトルの表面をヤスリがけで削り取ったものです。

ボトルの形が留まっているからでしょうか。当初あったラベルこそないものの、その形や色なりで、元々のボトルが何であったのかが推測出来る。ハイターでしょうか。アタックの容器のようなものも。それにサイダーやワインボトルもある。また白くざらりとした削り跡の由縁でしょうか。まるで土の中から取り出してきた何らかの遺品のようにも映ります。

出品作家の中でもっと身近な「かけら」を素材にしているかもしれません。福田尚代は栞や消しゴム、それに色鉛筆の芯などに作為を加えてオブジェを作り上げます。なお素材として文房具が多いのは、そもそも福田が回文の詩作など、かねてより言葉に対して強い関わりをもっているからだとか。中のくり抜かれた消しゴムの脆いフレーム。その想像されうる細かな手仕事。どれほどの手間をかけて作られたのでしょうか。見当もつきません。


*参考写真:吉田夏奈 「吉田夏奈 海は青い、森は緑」@アートフロントギャラリー 2013年

ガラリと雰囲気が変わります。このところ都内近辺でも展示の機会の多い吉田夏奈です。小豆島の景色をMOTの空間へ落とし込む。今回は立体が壁面、しかも上の方に掲げられていました。転じて地球を卵に見立てたオブジェ、「エッグエクステリア」はどうでしょうか。島や海の地層をさらに深く掘り下げてマントルや核を表現する。ランドスケープとしての広がりではなく、地球の深部へ意識。横から縦への展開です。作家の関心の在り方も変化しているのかもしれません。


「MOTアニュアル2014」 パラモデル展示室風景

ラストは人気のパラモデルです。この展示室のみ撮影が可能。アトリエと呼んでも良いのでしょうか。お馴染みのプラレール、そしてマスキングテープ。大阪の地下鉄の構内図を連ねた作品も。いずれも美術館の壁面のほぼ全体を使っての展示です。迫力がありました。


「MOTアニュアル2014」 パラモデル展示室風景

会期中は各種トーク、ワークショップが行われます。また毎週日曜日に「サンデー・ツアー」と題し、参加者のみが「見たり触れたりできる」体験ツアーも実施されるそうです。

[サンデー・ツアー]
2014年3月2日(日)から5月4日(日)までの毎週日曜日 15:00~1時間程度。
解説スタッフが展覧会ツアーを行います。参加者限定で「見たり触れたり」できるフラグメント体験あり。

会場内は余裕がありました。5月11日まで開催されています。

「MOTアニュアル2014 フラグメントー未完のはじまり」 東京都現代美術館@MOT_art_museum
会期:2月15日(土)~5月11日(日)
休館:月曜日。但し5/5は開館。5/7は休館。
時間:10:00~18:00 *入場は閉場の30分前まで。
料金:一般1000(800)円 、大学生・65歳以上800(640)円、中高生500(400)円、小学生以下無料。
 *( )内は20名以上の団体料金。
 *本展チケットで「MOTコレクション」も観覧可。「驚くべきリアル」とのセット券あり。
住所:江東区三好4-1-1
交通:東京メトロ半蔵門線清澄白河駅B2出口より徒歩9分、都営地下鉄大江戸線清澄白河駅A3出口より徒歩13分。
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