都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「VOCA展2014」 上野の森美術館
上野の森美術館
「VOCA展2014 現代美術の展望 新しい平面の画家たち」
3/15-3/30
上野の森美術館で開催中の「VOCA展2014 現代美術の展望 新しい平面の画家たち」を見て来ました。
毎年春の恒例、上野発の現代美術の「VOCA展」。今年も専門家諸氏によって推薦された40歳以下の作家が集結。一定の「平面」というカテゴリーの中で表現された様々な作品が展示されています。
大小島真木「遺伝子/Gene」(部分)
各受賞作家は以下の通りです。
【VOCA展2014 受賞作家】
VOCA賞 田中望
VOCA奨励賞 大小島真木、金光男
佳作賞 大坂秩加、染谷悠子
大原美術館賞 佐藤香菜
それでは私の印象深かった作品を挙げてみます。まずは一階通路正面、大小2点の作品を出品した高橋大輔。燦然と輝く色彩美。チューブからそのまま出したような分厚い画肌に筆致。絵具が線と化して交わり、いつしかレイヤー状に展開していく。いわゆるステンドグラスのような煌めき。これまでにも何度か見て来たつもりでしたが、今回はふとルオーの絵画を思い出しました。
田中望「ものおくり」
VOCA賞を受賞したのは田中望です。タイトルは「ものおくり」。日本画の技法による作品です。盛られた胡粉。大きな渦を巻くのは鯨。その輪の中をたくさんの兎たちが踊っている。何でも流れ着いた鯨を祀る東北地方の習俗を素材としているとか。鯨から赤く流れる血は生々しくもある。ちなみに作家は東北芸術工科大の院生です。秋田の竿燈のようなものも見える。広がる雪景色と白い波しぶき。そこでは東北の地に因む様々な物語が展開しています。
ヴィヴィットな色遣いが目に飛び込みます。入谷葉子の「シャングリア」。ショッキングピンクにレッド、またイエローなど。輪郭線はなく、色面のみで組上げられた風景。華やかでかつトロピカルな雰囲気。しかしながら描かれているのはお葬式の景色です。祭壇でしょうか。たくさんの花と遺影も見える。参列者が反面のグレー、半ばモノトーンで表されているのも印象に残りました。
何も単に平面とはいわゆる絵画のみに限定されません。臼井良平はどうでしょうか。床面に立て掛けられたのは一枚の曇りガラス。下の方だけは曇らずに反射する。その横には木の板。上には一枚の紙。一見、何も書かれていないようにも映りますが、仄かなグレーの筆致も確認出来る。白い紙と板にガラス、さらには映り込む床。空間との関係を問うインスタレーションとして捉えても良いのかもしれません。
大坂秩加「そんなに強くなってどうするのあなた」
天井高のあるスペースを効果的に利用しています。佳作賞の大坂秩加です。それこそ天井を突きそうなほどの縦長のフォーマット。一人の女性がてっぺんからブーケを投げている。そしてそれを一生懸命受け止めようとするのもまた女性たち。あまり身なりは良くない。貧しいのでしょうか。そして長い塔のような建物はブリキで出来ている。その緻密な質感表現。一方での垂直性を活かした動きのある構図感。さすがに魅せるものがあります。
染谷悠子「かみあわぬ水に沈む月」
去年のVOCA展の感想にも書きましたが、この展示を通して初めて作家を見知り、その後、追っかけていくことも少なくありません。とは言え、長らく行われてきたVOCA展。賛否はともかくも、今年は展覧会そのものに疑問を投げかけるような作品も見受けられました。もちろん推薦者も変わるなどして来たのは事実。制度疲労という言葉は適切ではないかもしれません。しかしながらそもそも平面とは何だろうか。今後あるべき姿を考える段階はとうに過ぎているのかもしれない。漠然とした感想で恐縮ですが、そのようなことも思いました。
会期中は無休です。3月30日まで開催されています。
「VOCA展2014 現代美術の展望 新しい平面の画家たち」 上野の森美術館
会期:3月15日(土)~3月30日(日)
休館:会期中無休
時間:10:00~18:00(入場は閉館30分前まで)
料金:一般・大学生500円、高校生以下無料。インターネット割引券
住所:台東区上野公園1-2
交通:JR線上野駅公園口より徒歩3分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅徒歩5分。京成線京成上野駅徒歩5分。
「VOCA展2014 現代美術の展望 新しい平面の画家たち」
3/15-3/30
上野の森美術館で開催中の「VOCA展2014 現代美術の展望 新しい平面の画家たち」を見て来ました。
毎年春の恒例、上野発の現代美術の「VOCA展」。今年も専門家諸氏によって推薦された40歳以下の作家が集結。一定の「平面」というカテゴリーの中で表現された様々な作品が展示されています。
大小島真木「遺伝子/Gene」(部分)
各受賞作家は以下の通りです。
【VOCA展2014 受賞作家】
VOCA賞 田中望
VOCA奨励賞 大小島真木、金光男
佳作賞 大坂秩加、染谷悠子
大原美術館賞 佐藤香菜
それでは私の印象深かった作品を挙げてみます。まずは一階通路正面、大小2点の作品を出品した高橋大輔。燦然と輝く色彩美。チューブからそのまま出したような分厚い画肌に筆致。絵具が線と化して交わり、いつしかレイヤー状に展開していく。いわゆるステンドグラスのような煌めき。これまでにも何度か見て来たつもりでしたが、今回はふとルオーの絵画を思い出しました。
田中望「ものおくり」
VOCA賞を受賞したのは田中望です。タイトルは「ものおくり」。日本画の技法による作品です。盛られた胡粉。大きな渦を巻くのは鯨。その輪の中をたくさんの兎たちが踊っている。何でも流れ着いた鯨を祀る東北地方の習俗を素材としているとか。鯨から赤く流れる血は生々しくもある。ちなみに作家は東北芸術工科大の院生です。秋田の竿燈のようなものも見える。広がる雪景色と白い波しぶき。そこでは東北の地に因む様々な物語が展開しています。
ヴィヴィットな色遣いが目に飛び込みます。入谷葉子の「シャングリア」。ショッキングピンクにレッド、またイエローなど。輪郭線はなく、色面のみで組上げられた風景。華やかでかつトロピカルな雰囲気。しかしながら描かれているのはお葬式の景色です。祭壇でしょうか。たくさんの花と遺影も見える。参列者が反面のグレー、半ばモノトーンで表されているのも印象に残りました。
何も単に平面とはいわゆる絵画のみに限定されません。臼井良平はどうでしょうか。床面に立て掛けられたのは一枚の曇りガラス。下の方だけは曇らずに反射する。その横には木の板。上には一枚の紙。一見、何も書かれていないようにも映りますが、仄かなグレーの筆致も確認出来る。白い紙と板にガラス、さらには映り込む床。空間との関係を問うインスタレーションとして捉えても良いのかもしれません。
大坂秩加「そんなに強くなってどうするのあなた」
天井高のあるスペースを効果的に利用しています。佳作賞の大坂秩加です。それこそ天井を突きそうなほどの縦長のフォーマット。一人の女性がてっぺんからブーケを投げている。そしてそれを一生懸命受け止めようとするのもまた女性たち。あまり身なりは良くない。貧しいのでしょうか。そして長い塔のような建物はブリキで出来ている。その緻密な質感表現。一方での垂直性を活かした動きのある構図感。さすがに魅せるものがあります。
染谷悠子「かみあわぬ水に沈む月」
去年のVOCA展の感想にも書きましたが、この展示を通して初めて作家を見知り、その後、追っかけていくことも少なくありません。とは言え、長らく行われてきたVOCA展。賛否はともかくも、今年は展覧会そのものに疑問を投げかけるような作品も見受けられました。もちろん推薦者も変わるなどして来たのは事実。制度疲労という言葉は適切ではないかもしれません。しかしながらそもそも平面とは何だろうか。今後あるべき姿を考える段階はとうに過ぎているのかもしれない。漠然とした感想で恐縮ですが、そのようなことも思いました。
会期中は無休です。3月30日まで開催されています。
「VOCA展2014 現代美術の展望 新しい平面の画家たち」 上野の森美術館
会期:3月15日(土)~3月30日(日)
休館:会期中無休
時間:10:00~18:00(入場は閉館30分前まで)
料金:一般・大学生500円、高校生以下無料。インターネット割引券
住所:台東区上野公園1-2
交通:JR線上野駅公園口より徒歩3分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅徒歩5分。京成線京成上野駅徒歩5分。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )