「荒木愛展 I SPY」 画廊くにまつ


画廊くにまつ
「荒木愛展 I SPY」 
3/20-3/31



画廊くにまつで開催中の荒木愛個展、「I SPY」を見て来ました。

2012年に東京藝術大学大学院の美術研究科デザイン専攻描画・装飾(中島千波)研究室を修了。その後も主に都内のグループ展に参加しながら作品を発表してきた日本画家、荒木愛。

「荒木愛 WEBサイト」

東京では二年ぶりの個展です。出品は大小10点ほどの日本画。モチーフはお馴染みの瑞々しき果物に可愛げな文鳥たち。新たな試みとしての立体も含みます。会場に踏み入れては開けてくる美しき色彩。まずは見惚れました。


「荒木愛展 I SPY」会場風景

さて今回、作品を見て私が感じたことを。はじめは構図です。そこに変化、言い換えれば動きのさらなる導入が見られるということです。

もちろん一昨年の個展に展示された「また会える日まで」(貝殻を従えて大きく飛び出すツバメが描れていました。)など、これまでにも躍動感のある作品はありましたが、今回はどこか鑑賞者の視線の移動を誘うかのような意図すら感じられる。例えばDM作の「LINE OF RUMOR」を挙げてみましょう。


荒木愛「LINE OF RUMOR」

斜めの枝にちょこんとのる小鳥たち。計5羽でしょうか。いずれもビーズを連ねた糸を引っ張っている。特に上の白い3羽の小鳥。殆ど絡み合うように糸をよせる。端の2羽の表情は険しい。また一番右の鳥はまるで関心のないようにそっぽを向いていは糸を口にくわえています。

そしてそこから殆ど垂直に落ちる赤い糸。地面ではとぐろをまき、その先はビーズが散っては糸も切れる。顔を出す小鳥はもう糸を口にくわえていない。静観しているのか、あえて入りこまないのか。ともかくはこの一本の赤い糸を廻って小鳥たちにドラマが生じている。それを鑑賞者側は糸を目でなぞる形で追体験していくわけです。

なおタイトルの一部に「LINE」とあるように、本作はWEB上での情報や噂のやり取りなどについてテーマとしているとか。SNSで拡散し、時に本来の文脈とは異なって受け取られる情報。その危うさ。そもそも鳥はおしゃべりでもある。また「集団思考」も同様です。単に小鳥が可愛らしく描かれているわけではない。タイトルがヒントにもなり得ます。ようは鳥たちに作家のメッセージなりがこめられているのです。


荒木愛「集団思考」

またもう一つ変化を感じたのは絵具の塗り方でしょうか。色に対する認識についてです。

というのも今回の出品作の多くは絵具をあまり盛っていません。画面は思いがけないほどにフラット。何でもこれまでに用いて来た日本画の削り出しの技法を採らなかったそうです。

もちろん例えば以前の貝や歯の作品における絵具の強い質感も魅力的でしたが、今回は薄くのばされた絵具が特徴的。より洗練されているようにも映ります。どちらが好きかと問われれば迷いますが、また一歩『深化』と捉えても良いのではないでしょうか。


荒木愛「夢見る前の夢見心地」

間を活かした空間美。そのセンス。箔を取り込んだ作品は銀色に煌めいている。琳派を思い浮かべます。また小鳥の動きはそれこそ盧雪画を連想させるものがある。江戸絵画との関連。その辺を意識しても面白いのではないでしょうか。


左:荒木愛「味見」

最後に挙げたいのが「味見」です。西瓜と鳥を取り合わせた一枚。意外にも文鳥は西瓜を食べるそうです。まず目を引くのが果肉の鮮やかな色。皿の白と背景のややグレーを帯びた白のニュアンスが微妙に異なって美しい。鋭敏な色彩感覚。折重なる和紙や箔の豊かな感触。前も触れたことがありましたが、ともかく写真でまるで分かりません。



作家の荒木さんはツイッターアカウント(@aispy)をお持ちです。そちらで在廊の情報などを逐次つぶやかれています。要チェックです。

[作家在廊予定]
3月20日(木)~23日(日)
3月26日(水)
3月28日(金)~31日(月)
*時間は未定。問い合わせは画廊まで。



3月31日まで開催されています。

「荒木愛展 I SPY」 画廊くにまつ
会期:3月20日(木)~3月31日(月)
休廊:3月24日(月)
時間:月~金:11:00~19:00、土日祝:12:00~18:00。
 *最終日は17時閉廊
住所:港区南青山2-10-14 アオヤマアネックス1F
交通:東京メトロ銀座線外苑前駅4a出口、東京メトロ銀座線・半蔵門線・都営大江戸線青山一丁目駅1、3、or5出口より徒歩5分。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )