都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「いま教わりたい和食」 とんぼの本(新潮社)
新潮社とんぼの本の「いま教わりたい和食:銀座『馳走 そっ啄』の仕事」を読んでみました。
「いま教わりたい和食:銀座『馳走 そっ啄』の仕事/平松洋子/とんぼの本」
エッセイストの平松洋子さんが惚れ込んでは通い続ける銀座の和食店「馳走 そっ啄」。ご主人西塚茂光氏との親交もあるのでしょうか。軽妙ながらも含蓄のあるテキストです。西塚氏の手がける和食のエッセンスを巧みに引き出しています。
それに表紙の「トマト含め煮」しかり、和食を引き立たせる器も美しい。美術ファンとしては「器の盛り方」にも注目したいところですが、それ以前に和食好きの私にとっては嬉しい本。豊富な写真で目で見ても味わえる。思わず舌を唸らせてしまいます。
「季節には味がある。」本書においても春夏秋冬、扱うのは四季折々の食材です。全24種、118品。旬のものをいかにして楽しむのか。例えば春の筍です。掘り立て茹で立てをそのまま刺身にして味わう「刺身筍」。梅肉和えです。酸味も程よく利いているのではないでしょうか。
また車エビの挟み揚げに定番の筍ご飯も。そして筍の下ごしらえです。そもそも産地によって筍の個性は異なり、例えば京都産はえぐみが少なくて柔らかいために、下茹でも必要ない。一方で名産地として知られる大多喜産は歯ごたえがあり、むしろそれを楽しむのだとか。また部位によっても料理との相性が変わってくるのだそうです。
そして西澤氏の食材への率直な評価。この辺も読むべきところかもしれません。一例が大根です。市中に出回る青首大根を「料理の素材としてはまったくつまらない。」と一刀両断。替わって使うものとして亀戸大根を挙げる。もちろん希少性高く、一般ではなかなか入手出来ないそうですが、ここはプロの視点です。一度試してみたくもなります。
とは言え、家庭でも出来る知恵がさり気なく触れられているのもポイントです。冬の野菜の代表格、鍋でも定番の白菜はどうでしょうか。ここでは切り方に注目する。繊維に沿って切るのか逆らって切るのか。しゃりしゃりした食感が欲しい時は前者、甘みを取り出したい時は後者です。また煮える時間も変わってくるそうです。
鯖に関する西塚氏のコメントが興味深く感じました。「庶民の味」とあるように、量販店の鮮魚コーナーでは定番ともいえるの鯖の切り身。価格も手頃なため、私もよく買っては焼き、また煮たりしていただきますが、氏は鯖をむしろ「高級魚」であると述べている。「いい鯖は値段も高い。」その「おいしさには、幅がある。」のだそうです。
食材の簡単な歴史。日本人との関わり。そうした記述もあります。「和食はレシピではないと思うんです。」とは西塚氏の言葉。実際にもいわゆる「レシピ」は一切載っていません。あくまでも読み物です。
西塚氏の和食にかける創意、また裏打ちされた技術。「家庭料理と和食の世界はおなじ。」料理上手になるためのシンプルなヒントは随所に記されている。「素材に教わり、素材に寄り添ってつくる。」何かと調味料に頼ってしまいがちな私にとっては耳の痛い言葉です。
実のところ家で料理当番の私にとって台所はとても身近な場所。あくまでも毎日の生活、大したことも出来ず、時にルーティン的な作業に感じられることもないわけではありません。しかしその中で少しでも見つめたい和食の奥深さ。調理において覚えておきたい約束事。常に肩肘張ると疲れてしまうかもしれませんが、何か挟持のようなものを教わったような気がしました。
またとてもお酒が飲みたくなる本でもあります。各料理にどのようなお酒が合うのか。そうしたことを想像していくのも楽しいかもしれません。
「いま教わりたい和食 銀座『馳走 そっ啄』の仕事/平松洋子/とんぼの本」
「いま教わりたい和食:銀座『馳走 そっ啄』の仕事」 とんぼの本(新潮社)
内容:平松洋子さんがほれ込む名店「馳走 そっ啄」。三年間のレッスンが伝えた和食の本質とは?味を足しすぎない、レシピはいらない、だしに頼らない。四季のめぐみを日常の中で味わうコツを伝授。24の旬の素材の活かしかた、いま教わりたい118品を収録。
著者:平松洋子
価格:1890円
刊行:2014年3月
仕様:158頁
「いま教わりたい和食:銀座『馳走 そっ啄』の仕事/平松洋子/とんぼの本」
エッセイストの平松洋子さんが惚れ込んでは通い続ける銀座の和食店「馳走 そっ啄」。ご主人西塚茂光氏との親交もあるのでしょうか。軽妙ながらも含蓄のあるテキストです。西塚氏の手がける和食のエッセンスを巧みに引き出しています。
それに表紙の「トマト含め煮」しかり、和食を引き立たせる器も美しい。美術ファンとしては「器の盛り方」にも注目したいところですが、それ以前に和食好きの私にとっては嬉しい本。豊富な写真で目で見ても味わえる。思わず舌を唸らせてしまいます。
「季節には味がある。」本書においても春夏秋冬、扱うのは四季折々の食材です。全24種、118品。旬のものをいかにして楽しむのか。例えば春の筍です。掘り立て茹で立てをそのまま刺身にして味わう「刺身筍」。梅肉和えです。酸味も程よく利いているのではないでしょうか。
また車エビの挟み揚げに定番の筍ご飯も。そして筍の下ごしらえです。そもそも産地によって筍の個性は異なり、例えば京都産はえぐみが少なくて柔らかいために、下茹でも必要ない。一方で名産地として知られる大多喜産は歯ごたえがあり、むしろそれを楽しむのだとか。また部位によっても料理との相性が変わってくるのだそうです。
そして西澤氏の食材への率直な評価。この辺も読むべきところかもしれません。一例が大根です。市中に出回る青首大根を「料理の素材としてはまったくつまらない。」と一刀両断。替わって使うものとして亀戸大根を挙げる。もちろん希少性高く、一般ではなかなか入手出来ないそうですが、ここはプロの視点です。一度試してみたくもなります。
とは言え、家庭でも出来る知恵がさり気なく触れられているのもポイントです。冬の野菜の代表格、鍋でも定番の白菜はどうでしょうか。ここでは切り方に注目する。繊維に沿って切るのか逆らって切るのか。しゃりしゃりした食感が欲しい時は前者、甘みを取り出したい時は後者です。また煮える時間も変わってくるそうです。
鯖に関する西塚氏のコメントが興味深く感じました。「庶民の味」とあるように、量販店の鮮魚コーナーでは定番ともいえるの鯖の切り身。価格も手頃なため、私もよく買っては焼き、また煮たりしていただきますが、氏は鯖をむしろ「高級魚」であると述べている。「いい鯖は値段も高い。」その「おいしさには、幅がある。」のだそうです。
食材の簡単な歴史。日本人との関わり。そうした記述もあります。「和食はレシピではないと思うんです。」とは西塚氏の言葉。実際にもいわゆる「レシピ」は一切載っていません。あくまでも読み物です。
西塚氏の和食にかける創意、また裏打ちされた技術。「家庭料理と和食の世界はおなじ。」料理上手になるためのシンプルなヒントは随所に記されている。「素材に教わり、素材に寄り添ってつくる。」何かと調味料に頼ってしまいがちな私にとっては耳の痛い言葉です。
実のところ家で料理当番の私にとって台所はとても身近な場所。あくまでも毎日の生活、大したことも出来ず、時にルーティン的な作業に感じられることもないわけではありません。しかしその中で少しでも見つめたい和食の奥深さ。調理において覚えておきたい約束事。常に肩肘張ると疲れてしまうかもしれませんが、何か挟持のようなものを教わったような気がしました。
またとてもお酒が飲みたくなる本でもあります。各料理にどのようなお酒が合うのか。そうしたことを想像していくのも楽しいかもしれません。
「いま教わりたい和食 銀座『馳走 そっ啄』の仕事/平松洋子/とんぼの本」
「いま教わりたい和食:銀座『馳走 そっ啄』の仕事」 とんぼの本(新潮社)
内容:平松洋子さんがほれ込む名店「馳走 そっ啄」。三年間のレッスンが伝えた和食の本質とは?味を足しすぎない、レシピはいらない、だしに頼らない。四季のめぐみを日常の中で味わうコツを伝授。24の旬の素材の活かしかた、いま教わりたい118品を収録。
著者:平松洋子
価格:1890円
刊行:2014年3月
仕様:158頁
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