都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「博物館に初もうで」 東京国立博物館
東京国立博物館
「博物館に初もうで」
1/2~1/12

東京国立博物館で開催中の「博物館に初もうで」を見て来ました。
すっかり東博の新春イベントとして定着した「博物館に初もうで」。干支に因む文物を集めた特集展示のほか、「松林図屏風」をはじめとした新春特別公開、さらには和太鼓や獅子舞の演舞(1/2、1/3限定)などが行われています。
まずは2階の国宝室です。恒例の「松林図屏風」のお披露目。ご覧の通りの人出、さすがの人気ぶりを伺わせます。

国宝「松林図屏風」長谷川等伯 安土桃山時代・16世紀 本館2室(国宝室) *展示期間:1/12まで
とは言うもの、別に観覧の際に列が出来ているわけでもありません。最前列で等伯一流の筆致を味わうことも可能です。改めてこの屏風の独特の空気感、その仄かな光の移ろいに感心させられました。

「ひつじと吉祥」展示風景 本館特別1室
同じく2階の特別1室では「ひつじと吉祥」が開催中です。言うまでもなく羊をモチーフとした作品を集めたものですが、興味深いのは思いの外に日本の品が少ないことです。つまり中東や中国といった地域の考古品や美術品が多いのです。

重要文化財「羊図(唐絵手鑑「筆耕園」のうち)」 趙福 明時代・16世紀 *展示期間:1/12まで
それもそのはず、羊は本来、日本には生息しなかった動物です。実物が持ち込まれたのは近代、明治時代のことでした。もちろんそれ以前にも図像なりで認識されていましたが、あくまでも想像上の動物に過ぎません。また羊と山羊を混同することも少なくない。羊を吉祥のモチーフとして捉えることもなかったそうです。

「よきことを菊の十二支」 歌川国芳 江戸時代・19世紀 本館特別1室 *展示期間:1/12まで
とは言え国芳の発想力は素晴らしい。「よきことを菊の十二支」では何と干支の動物を菊の花に見立てて描いています。羊の毛も菊の花の一部でした。

「色絵荒磯文鉢」 伊万里 江戸時代・17~18世紀 本館8室 *展示期間:2/22まで
「新春特別公開」は何も松林図だけではありません。例えば伊万里の「色絵荒磯文鉢」も艶やかで美しいもの。豪華絢爛とはこのことでしょうか。波濤と鯉の紋様が目を引きます。元禄期には明の景徳鎮の流行を受け、このような金欄手の伊万里が多く作られたそうです。

「東行記」 烏丸光広 江戸時代・17世紀 本館8室 *展示期間:1/12まで
烏丸光広の「東行記」はどうでしょうか。和歌とスケッチによる旅日記です。公卿である彼は、朝廷と幕府の斡旋役として度々京都から江戸へと通ったとか。本作でもその際の紀行文が元になっています。

「十二支図三所物」 後藤延乗 江戸時代・18世紀 本館13室 *展示期間:2/15まで
出展作品中、一番小さな羊かもしれません。江戸時代の「十二支図三所物」です。いわゆる刀の飾りである三所物、十二支の動物が象られていますが、その中にも確かに羊がいます。よくよく目を凝らさないと分かりません。

「揺銭樹」 後漢時代・1~2世紀 東洋館5室 *展示期間:5/10まで
東洋館にも羊がいました。中国の「揺銭樹」です。いわゆるお目出度い金のなる木。青銅製の樹木には龍や鳳凰、仙人などがあしらわれていますが、はじめ羊がどこにいるか分かりませんでした。答えは下部、台座の部分です。こちらは陶器製。上に仙人が乗っています。実のところこれまでも何度か見て来たつもりでしたが、羊がいることには今回初めて気がつきました。
なお本館を含め、羊の作品は東洋館や法隆寺宝物館にも点在します。見つけるのも大変という声も聞こえてきそうですが、それを手軽に補ってくれたのが、ワークシート「羊めぐりマップ」でした。

「羊めぐりマップ」パネル
マップには羊の作品の一部が紹介されています。しかも裏はカレンダーという優れもの。先着10000名の配布です。館内を廻るのに重宝しました。

新春イベント「獅子舞」
本館前の特設ステージでは太鼓や獅子舞の演舞も行われていました。お正月気分を盛り上げてくれます。(1月2日、3日のみ)

「いけばな」 蔵重伸 本館エントランスホール *展示期間:1/12まで
私自身も年明けは「初もうで展」からスタートするのが習慣と化したような気がします。今年も楽しめました。

東京国立博物館正門チケットブース(1/2、14時頃)
さて混雑の情報です。私は初日2日の14時前に博物館に入りましたが、それなりに盛況でした。また正門のチケットブースでは約10分ほどの入場待ちの列も出来ていました。

東京国立博物館正門付近より
ただ館内は「松林図屏風」を除けば、凄く混んでいるというわけでもありません。思っていたよりもスムーズでした。
なおチケットはJR上野駅構内、公園口近くにある「MUSEUM TICKETS」(上野の美術館や博物館の入場券を販売しているブースです。)でも購入出来ます。
こちらは行列も皆無です。JR線を利用される方は、事前に構内ブースでチケットを買っておいた方が良さそうです。

黒田記念館
2日には長らく耐震改修工事を行っていた黒田記念館も全面リニューアルオープンしました。新設の特別室では現在、期間限定にて「湖畔」や「読書」、それに「智・感・情」などの名品も公開されています。(現公開会期は1月12日まで。)
「初もうで展」観覧の折には黒田記念館も見て回ることをおすすめします。(記念館については別エントリでまとめます。)

「羊石像」 朝鮮時代・18~19世紀 屋外 展示期間:通年
1月12日まで開催されています。
「博物館に初もうで」 東京国立博物館(@TNM_PR)
会期:1月2日(金)~1月12日(月)
休館:月曜日。但し1月12日(月・祝)は開館。
料金:一般620円(520円)、大学生410円(310円)、高校生以下無料。
* ( )内は20名以上の団体料金。
時間:9:30~17:00(入館は閉館の30分前まで)
住所:台東区上野公園13-9
交通:JR上野駅公園口より徒歩10分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅、京成電鉄上野駅より徒歩15分。
「博物館に初もうで」
1/2~1/12

東京国立博物館で開催中の「博物館に初もうで」を見て来ました。
すっかり東博の新春イベントとして定着した「博物館に初もうで」。干支に因む文物を集めた特集展示のほか、「松林図屏風」をはじめとした新春特別公開、さらには和太鼓や獅子舞の演舞(1/2、1/3限定)などが行われています。
まずは2階の国宝室です。恒例の「松林図屏風」のお披露目。ご覧の通りの人出、さすがの人気ぶりを伺わせます。

国宝「松林図屏風」長谷川等伯 安土桃山時代・16世紀 本館2室(国宝室) *展示期間:1/12まで
とは言うもの、別に観覧の際に列が出来ているわけでもありません。最前列で等伯一流の筆致を味わうことも可能です。改めてこの屏風の独特の空気感、その仄かな光の移ろいに感心させられました。

「ひつじと吉祥」展示風景 本館特別1室
同じく2階の特別1室では「ひつじと吉祥」が開催中です。言うまでもなく羊をモチーフとした作品を集めたものですが、興味深いのは思いの外に日本の品が少ないことです。つまり中東や中国といった地域の考古品や美術品が多いのです。

重要文化財「羊図(唐絵手鑑「筆耕園」のうち)」 趙福 明時代・16世紀 *展示期間:1/12まで
それもそのはず、羊は本来、日本には生息しなかった動物です。実物が持ち込まれたのは近代、明治時代のことでした。もちろんそれ以前にも図像なりで認識されていましたが、あくまでも想像上の動物に過ぎません。また羊と山羊を混同することも少なくない。羊を吉祥のモチーフとして捉えることもなかったそうです。

「よきことを菊の十二支」 歌川国芳 江戸時代・19世紀 本館特別1室 *展示期間:1/12まで
とは言え国芳の発想力は素晴らしい。「よきことを菊の十二支」では何と干支の動物を菊の花に見立てて描いています。羊の毛も菊の花の一部でした。

「色絵荒磯文鉢」 伊万里 江戸時代・17~18世紀 本館8室 *展示期間:2/22まで
「新春特別公開」は何も松林図だけではありません。例えば伊万里の「色絵荒磯文鉢」も艶やかで美しいもの。豪華絢爛とはこのことでしょうか。波濤と鯉の紋様が目を引きます。元禄期には明の景徳鎮の流行を受け、このような金欄手の伊万里が多く作られたそうです。

「東行記」 烏丸光広 江戸時代・17世紀 本館8室 *展示期間:1/12まで
烏丸光広の「東行記」はどうでしょうか。和歌とスケッチによる旅日記です。公卿である彼は、朝廷と幕府の斡旋役として度々京都から江戸へと通ったとか。本作でもその際の紀行文が元になっています。

「十二支図三所物」 後藤延乗 江戸時代・18世紀 本館13室 *展示期間:2/15まで
出展作品中、一番小さな羊かもしれません。江戸時代の「十二支図三所物」です。いわゆる刀の飾りである三所物、十二支の動物が象られていますが、その中にも確かに羊がいます。よくよく目を凝らさないと分かりません。

「揺銭樹」 後漢時代・1~2世紀 東洋館5室 *展示期間:5/10まで
東洋館にも羊がいました。中国の「揺銭樹」です。いわゆるお目出度い金のなる木。青銅製の樹木には龍や鳳凰、仙人などがあしらわれていますが、はじめ羊がどこにいるか分かりませんでした。答えは下部、台座の部分です。こちらは陶器製。上に仙人が乗っています。実のところこれまでも何度か見て来たつもりでしたが、羊がいることには今回初めて気がつきました。
なお本館を含め、羊の作品は東洋館や法隆寺宝物館にも点在します。見つけるのも大変という声も聞こえてきそうですが、それを手軽に補ってくれたのが、ワークシート「羊めぐりマップ」でした。

「羊めぐりマップ」パネル
マップには羊の作品の一部が紹介されています。しかも裏はカレンダーという優れもの。先着10000名の配布です。館内を廻るのに重宝しました。

新春イベント「獅子舞」
本館前の特設ステージでは太鼓や獅子舞の演舞も行われていました。お正月気分を盛り上げてくれます。(1月2日、3日のみ)

「いけばな」 蔵重伸 本館エントランスホール *展示期間:1/12まで
私自身も年明けは「初もうで展」からスタートするのが習慣と化したような気がします。今年も楽しめました。

東京国立博物館正門チケットブース(1/2、14時頃)
さて混雑の情報です。私は初日2日の14時前に博物館に入りましたが、それなりに盛況でした。また正門のチケットブースでは約10分ほどの入場待ちの列も出来ていました。

東京国立博物館正門付近より
ただ館内は「松林図屏風」を除けば、凄く混んでいるというわけでもありません。思っていたよりもスムーズでした。
なおチケットはJR上野駅構内、公園口近くにある「MUSEUM TICKETS」(上野の美術館や博物館の入場券を販売しているブースです。)でも購入出来ます。
こちらは行列も皆無です。JR線を利用される方は、事前に構内ブースでチケットを買っておいた方が良さそうです。

黒田記念館
2日には長らく耐震改修工事を行っていた黒田記念館も全面リニューアルオープンしました。新設の特別室では現在、期間限定にて「湖畔」や「読書」、それに「智・感・情」などの名品も公開されています。(現公開会期は1月12日まで。)
「初もうで展」観覧の折には黒田記念館も見て回ることをおすすめします。(記念館については別エントリでまとめます。)

「羊石像」 朝鮮時代・18~19世紀 屋外 展示期間:通年
1月12日まで開催されています。
「博物館に初もうで」 東京国立博物館(@TNM_PR)
会期:1月2日(金)~1月12日(月)
休館:月曜日。但し1月12日(月・祝)は開館。
料金:一般620円(520円)、大学生410円(310円)、高校生以下無料。
* ( )内は20名以上の団体料金。
時間:9:30~17:00(入館は閉館の30分前まで)
住所:台東区上野公園13-9
交通:JR上野駅公園口より徒歩10分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅、京成電鉄上野駅より徒歩15分。
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