都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「3.11大津波と文化財の再生」 東京国立博物館
東京国立博物館・本館特別2室・4室
「3.11大津波と文化財の再生」
1/14-3/15

東京国立博物館・本館特別2室・4室で開催中の「3.11大津波と文化財の再生」を見て来ました。
今年の3月で発生から4年となる東日本大震災。かの大地震に大津波と原発事故。その痛ましい記憶は未だ頭から離れることもありません。

被災後の陸前高田市博物館(2011.3)
3.11の津波によって被災した文化財の修復がテーマです。出品資料のほぼ全ては津波で市内中心部が壊滅的な被害を受けた陸前高田の文化財でした。
冒頭は時計です。3時27分前後をさして止まっています。津波の到達時間なのでしょう。地震からおおよそ40分後。時計の置かれていた部屋の写真もパネルで紹介されていましたが、見るも無惨なほどに破壊されています。かの津波の恐ろしさを物語っています。

紙資料に付着した汚れと塩分を洗浄して取り除く(2012.2)
土偶や土器などの考古資料が目立ちます。被災直後は文化財が瓦礫と混雑した状態です。まずは救い出すことが先決です。そして泥をとったり脱塩するなどの「安定化処理」を行い、その後に本格的な修理を施していきます。

石碑拓本掛軸を解体した後に本紙を洗浄(2011.12)
江戸時代後期をルーツとする高田歌舞伎に関する資料もありました。「絹地染小紋型長着」は町方の歌舞伎の際に着た衣装です。これも波を被ってしまいましたが、仕立て糸を一部解いては解体し、裏から布で補強して修復したそうです。

吉田家文書に真空凍結乾燥処理を行う(2011.5)
吉田家文書も重要です。吉田家とは江戸時代に気仙一帯の行政を担っていた家のことです。文書には同時代を伝える貴重な地誌が記されていましたが、津波で流出こそ免れたものの、多くが海水に浸かってしまいました。
そのうちの「高田村絵図」にはかつて国の名勝でもあった高田松原も描かれています。そして松原も津波で根こそぎ流されてしまいました。その後、唯一のこった松が「奇跡の一本松」として呼ばれたのはよく知られているところです。

「青い目の人形」 20世紀 陸前高田市立気仙小学校
海に面した街のゆえでしょう。漁撈道具が多く出ています。そのほかにはアメリカから市内の小学校へ贈られた「青い目の人形」も目を引きました。人形は泥に埋もれ、小学校から流出した金庫の中から見つかります。こびり付いた一粒一粒の砂を顕微鏡を覗きながらピンセットで取り除いたそうです。修復には多大なる労力があることを伺い知れます。

昆虫標本の修復作業(2011.8)
被災状況を保存するためにあえて残された資料もありました。「昆虫類ドイツ標本箱」です。言うまでもなく虫の標本箱、修復前のものはドロドロでもはや原型を留めていません。隣に並ぶのが修復後です。すっかりきれいに整理されていました。
本館の正面階段には陸前高田の博物館で被災した「リードオルガン」も展示されています。

「リードオルガン」 明治末期~大正初期 陸前高田市立博物館
このオルガンも瓦礫に埋もれてしまったものです。部品の取り替えは最小限にとどめ、錆を除去。汚れを筆で丁寧に取り除いています。(被災時の姿がパネルで掲載されています。)

「実習船 かもめ」 昭和時代 陸前高田市立博物館
本館入口前の一隻の船に目が留まりました。名は「かもめ」、陸前高田高校の実習船です。津波にさらわれた後、太平洋を彷徨い続け、何と二年後になってカリフォルニアに漂着しました。ちなみに漂流時に付着した貝類の一部は後に標本として陸前高田に収蔵されたそうです。
展示の内容が昨年に江戸東京博物館で行われた「平成の大津波被害と博物館」と重複する部分もありました。
「2011.3.11 平成の大津波被害と博物館ー被災資料の再生をめざして」@江戸東京博物館(はろるど)
震災から4年。被災資料を全て修理するには今後10年かかるとも言われているそうです。修復はまさに今も続いています。毎年どのような形であれ、修復の仕事を世に伝えていくことが重要だと言えそうです。
いわゆる常設展内での展示です。総合文化展料金で観覧出来ます。(みちのくの仏像展のチケットでも観覧出来ます。)
3月15日まで開催されています。
「3.11大津波と文化財の再生」 東京国立博物館・本館特別2室・4室(@TNM_PR)
会期:1月14日(水)~3月15日(日)
時間:9:30~17:00。但し3月6日(金)と3月13日(金)は20時まで開館。
休館:月曜日。
料金:一般620(520)円、大学生410(310)円、高校生以下無料。
*( )は20名以上の団体料金。
*「みちのくの仏像」展チケットで観覧可。
住所:台東区上野公園13-9
交通:JR上野駅公園口より徒歩10分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅、京成電鉄上野駅より徒歩15分。
「3.11大津波と文化財の再生」
1/14-3/15

東京国立博物館・本館特別2室・4室で開催中の「3.11大津波と文化財の再生」を見て来ました。
今年の3月で発生から4年となる東日本大震災。かの大地震に大津波と原発事故。その痛ましい記憶は未だ頭から離れることもありません。

被災後の陸前高田市博物館(2011.3)
3.11の津波によって被災した文化財の修復がテーマです。出品資料のほぼ全ては津波で市内中心部が壊滅的な被害を受けた陸前高田の文化財でした。
冒頭は時計です。3時27分前後をさして止まっています。津波の到達時間なのでしょう。地震からおおよそ40分後。時計の置かれていた部屋の写真もパネルで紹介されていましたが、見るも無惨なほどに破壊されています。かの津波の恐ろしさを物語っています。

紙資料に付着した汚れと塩分を洗浄して取り除く(2012.2)
土偶や土器などの考古資料が目立ちます。被災直後は文化財が瓦礫と混雑した状態です。まずは救い出すことが先決です。そして泥をとったり脱塩するなどの「安定化処理」を行い、その後に本格的な修理を施していきます。

石碑拓本掛軸を解体した後に本紙を洗浄(2011.12)
江戸時代後期をルーツとする高田歌舞伎に関する資料もありました。「絹地染小紋型長着」は町方の歌舞伎の際に着た衣装です。これも波を被ってしまいましたが、仕立て糸を一部解いては解体し、裏から布で補強して修復したそうです。

吉田家文書に真空凍結乾燥処理を行う(2011.5)
吉田家文書も重要です。吉田家とは江戸時代に気仙一帯の行政を担っていた家のことです。文書には同時代を伝える貴重な地誌が記されていましたが、津波で流出こそ免れたものの、多くが海水に浸かってしまいました。
そのうちの「高田村絵図」にはかつて国の名勝でもあった高田松原も描かれています。そして松原も津波で根こそぎ流されてしまいました。その後、唯一のこった松が「奇跡の一本松」として呼ばれたのはよく知られているところです。

「青い目の人形」 20世紀 陸前高田市立気仙小学校
海に面した街のゆえでしょう。漁撈道具が多く出ています。そのほかにはアメリカから市内の小学校へ贈られた「青い目の人形」も目を引きました。人形は泥に埋もれ、小学校から流出した金庫の中から見つかります。こびり付いた一粒一粒の砂を顕微鏡を覗きながらピンセットで取り除いたそうです。修復には多大なる労力があることを伺い知れます。

昆虫標本の修復作業(2011.8)
被災状況を保存するためにあえて残された資料もありました。「昆虫類ドイツ標本箱」です。言うまでもなく虫の標本箱、修復前のものはドロドロでもはや原型を留めていません。隣に並ぶのが修復後です。すっかりきれいに整理されていました。
本館の正面階段には陸前高田の博物館で被災した「リードオルガン」も展示されています。

「リードオルガン」 明治末期~大正初期 陸前高田市立博物館
このオルガンも瓦礫に埋もれてしまったものです。部品の取り替えは最小限にとどめ、錆を除去。汚れを筆で丁寧に取り除いています。(被災時の姿がパネルで掲載されています。)

「実習船 かもめ」 昭和時代 陸前高田市立博物館
本館入口前の一隻の船に目が留まりました。名は「かもめ」、陸前高田高校の実習船です。津波にさらわれた後、太平洋を彷徨い続け、何と二年後になってカリフォルニアに漂着しました。ちなみに漂流時に付着した貝類の一部は後に標本として陸前高田に収蔵されたそうです。
展示の内容が昨年に江戸東京博物館で行われた「平成の大津波被害と博物館」と重複する部分もありました。
「2011.3.11 平成の大津波被害と博物館ー被災資料の再生をめざして」@江戸東京博物館(はろるど)
震災から4年。被災資料を全て修理するには今後10年かかるとも言われているそうです。修復はまさに今も続いています。毎年どのような形であれ、修復の仕事を世に伝えていくことが重要だと言えそうです。
いわゆる常設展内での展示です。総合文化展料金で観覧出来ます。(みちのくの仏像展のチケットでも観覧出来ます。)
3月15日まで開催されています。
「3.11大津波と文化財の再生」 東京国立博物館・本館特別2室・4室(@TNM_PR)
会期:1月14日(水)~3月15日(日)
時間:9:30~17:00。但し3月6日(金)と3月13日(金)は20時まで開館。
休館:月曜日。
料金:一般620(520)円、大学生410(310)円、高校生以下無料。
*( )は20名以上の団体料金。
*「みちのくの仏像」展チケットで観覧可。
住所:台東区上野公園13-9
交通:JR上野駅公園口より徒歩10分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅、京成電鉄上野駅より徒歩15分。
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