都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「横浜美術館コレクション展2014年度第2期」 横浜美術館
横浜美術館
「横浜美術館コレクション展2014年度第2期」
2014/12/6-2015/3/1
横浜美術館で開催中の「コレクション展2014年度第2期」を見て来ました。
現在、「ホイッスラー展」が行われている横浜美術館。企画展に続くコレクション展がすこぶる充実しています。テーマは2つ。「抽象画ー戦後から現代」と「光と影ー都市との対話」です。
会場内の撮影が出来ました。(フラッシュは不可。)
まずはじめのセクションは「抽象画」。戦後日本美術における抽象画の展開を追っています。
岡田謙三「垂直」 1964年 油彩、カンヴァス
岡田謙三の「垂直」です。画業半ばでアメリカに渡り、抽象表現主義へと転回した岡田。和の抽象と言ってしまうのは語弊があるかもしれません。ただそれでも色遣いなどに日本や東洋的感性を思わせるものがあります。ほかの抽象画家とは異なった画風を見せていました。
右:山口長男「B(組形)」 1957年 油彩、カンヴァス
斎藤義重、山口長男はどうでしょうか。ともに戦前から前衛的な制作を行い、日本の抽象表現における先駆者ともいうべき存在。岡田とも同世代の画家でもあります。
田中敦子「作品79X」 1979年 エナメル、カンヴァス
その後は田中敦子、白髪一雄、菅井汲を経て、中村一美へと続く展開です。カラフルなネオンサインを平面に置き換えたような田中の「作品79X」は何とも華々しいもの。白髪の激しいストロークも熱気を帯びています。前に立つだけで絵にのまれました。
中村一美「連差ー破房7」 1995年 油彩、油性ペイント、合板に貼付したカンヴァス
中村一美の「連差ー破房7」は横6メートルにも及ぶ大作です。荒れ狂う色彩のストローク、どこか装飾的にも見えないでしょうか。それにしても一口に抽象といえども画風は様々。今となっても古びることはありません。抽象表現における新たな可能性を示しています。
2つ目の「光と影」は4つのテーマに分かれています。
2-1 風景になる都市、その光と影
2-2 西洋の作家の作品に見る光の表現
2-3 満ちる光、光と影
2-4 写真展示室:光と闇ー現代の都市風景
小林清親「御茶水蛍」 1880年 多色木版 ほか
まずは「風景になる都市、その光と影」です。ここでは幕末以降、日本、そして当地横浜にも着目して都市風景画を展示しています。中でも光線画で知られる小林清親が20点超と目立っています。
川瀬巴水「東京十二題 夜の新川」 1919年 多色木版 ほか
横浜関連ではベアトが写した維新前後の「横浜」や、清水登之の「ヨコハマ・ナイト」も面白い。そして巴水です。3点と僅かですが、「東京十二題」が出ていました。
「光と影」では現代作家の展示も見逃せません。
小西真奈「滝」 2008年 油彩、カンヴァス
特に小西真奈の「滝」に安田悠の「Link」、そして奈良美智の「春少女」などはそれぞれ魅惑的ではないでしょうか。いずれも2000年以降に描かれた作家の近作です。
デヴィット・ホイックニー「フレンチ・スタイルの逆光」 1974年 エッチング
デヴィット・ホックニーの「フレンチ・スタイルの逆光」のモチーフはルーブル美術館の窓だそうです。窓から透けるのは外の淡い光。均一でぶれがありません。うっすら黄色を帯びていました。
最後は浜美ならではの写真です。これがまた非常に見応えがあります。
金村修「Keihin Machine Soul」 1996年 ゼラチン・シルバー・プリント
ここでもテーマは都市です。金村修の「Keihin Machine Soul」は横浜界隈でしょうか。いわゆる雑然とした都市空間が舞台です。自転車で溢れる商店街や、無数の電線の錯綜する交差点などをモノクロームで切り取っています。
磯田智子の「残像」も面白いもの。真っ暗闇で僅かに灯る光、おそらくは地下鉄の駅です。車内から電車が駅に進入する際を狙って写したのかもしれません。
米田知子「空地1(市内最大の仮設住宅跡地から震災復興住宅をのぞむ)」 2004年 発色現像方式印画 ほか
そして米田知子です。かの阪神大震災に取材した一連のシリーズが目を引きます。震災直後といわゆる復興後の神戸を写した作品、復興後の真新しい家々の立ち並ぶ住宅街にはまだ空き地があります。きっとそこにもかつては何らかの生活があったのでしょう。振り返ってみれば今年の1月17日は、震災から20年の節目の年でもあります。
「横浜美術館コレクション展2014年度第2期」第2展示室 会場風景
浜美に特徴的な天井高のある第2展示室も見過ごせません。ダリの「幻想的風景」やデルヴォーの「階段」といったお馴染みの作品に加え、色彩のニュアンスが素晴らしいモローの「岩の上の女神」や、今年、大回顧展を控えたマグリットの「青春の泉」なども目を引きました。
近現代美術の常設展といえば、東京近辺ではまず東近美、さらに都現美などが充実していますが、ここ横浜美術館もそれに決して劣るものではありません。
「ホイッスラー展」 横浜美術館(はろるど)
ホイッスラー展のチケットでもちろん観覧出来ます。お出かけの際はコレクション展もお見逃しなきようおすすめします。
奈良美智「春少女」 2012年 アクリル、カンヴァス
3月1日まで開催されています。
「横浜美術館コレクション展2014年度第2期」 横浜美術館(@yokobi_tweet)
会期:2014年12月6日(土)~2015年3月1日(日)
休館:木曜日。但し12/25は開館。年末年始(12/29~1/2)。
時間:10:00~18:00
*入館は17時半まで。
*12/22~24は20時まで開館。(入館は19時半まで。)
料金:一般500(400)円、大学・高校生300(240)円、中学生100(80)円。小学生以下無料。
*( )内は20名以上の団体。要事前予約。
*毎週土曜日は高校生以下無料。
*当日企画展(ホイッスラー展)チケットにて観覧可。
住所:横浜市西区みなとみらい3-4-1
交通:みなとみらい線みなとみらい駅5番出口から徒歩5分。JR線、横浜市営地下鉄線桜木町駅より徒歩約10分。
「横浜美術館コレクション展2014年度第2期」
2014/12/6-2015/3/1
横浜美術館で開催中の「コレクション展2014年度第2期」を見て来ました。
現在、「ホイッスラー展」が行われている横浜美術館。企画展に続くコレクション展がすこぶる充実しています。テーマは2つ。「抽象画ー戦後から現代」と「光と影ー都市との対話」です。
会場内の撮影が出来ました。(フラッシュは不可。)
まずはじめのセクションは「抽象画」。戦後日本美術における抽象画の展開を追っています。
岡田謙三「垂直」 1964年 油彩、カンヴァス
岡田謙三の「垂直」です。画業半ばでアメリカに渡り、抽象表現主義へと転回した岡田。和の抽象と言ってしまうのは語弊があるかもしれません。ただそれでも色遣いなどに日本や東洋的感性を思わせるものがあります。ほかの抽象画家とは異なった画風を見せていました。
右:山口長男「B(組形)」 1957年 油彩、カンヴァス
斎藤義重、山口長男はどうでしょうか。ともに戦前から前衛的な制作を行い、日本の抽象表現における先駆者ともいうべき存在。岡田とも同世代の画家でもあります。
田中敦子「作品79X」 1979年 エナメル、カンヴァス
その後は田中敦子、白髪一雄、菅井汲を経て、中村一美へと続く展開です。カラフルなネオンサインを平面に置き換えたような田中の「作品79X」は何とも華々しいもの。白髪の激しいストロークも熱気を帯びています。前に立つだけで絵にのまれました。
中村一美「連差ー破房7」 1995年 油彩、油性ペイント、合板に貼付したカンヴァス
中村一美の「連差ー破房7」は横6メートルにも及ぶ大作です。荒れ狂う色彩のストローク、どこか装飾的にも見えないでしょうか。それにしても一口に抽象といえども画風は様々。今となっても古びることはありません。抽象表現における新たな可能性を示しています。
2つ目の「光と影」は4つのテーマに分かれています。
2-1 風景になる都市、その光と影
2-2 西洋の作家の作品に見る光の表現
2-3 満ちる光、光と影
2-4 写真展示室:光と闇ー現代の都市風景
小林清親「御茶水蛍」 1880年 多色木版 ほか
まずは「風景になる都市、その光と影」です。ここでは幕末以降、日本、そして当地横浜にも着目して都市風景画を展示しています。中でも光線画で知られる小林清親が20点超と目立っています。
川瀬巴水「東京十二題 夜の新川」 1919年 多色木版 ほか
横浜関連ではベアトが写した維新前後の「横浜」や、清水登之の「ヨコハマ・ナイト」も面白い。そして巴水です。3点と僅かですが、「東京十二題」が出ていました。
「光と影」では現代作家の展示も見逃せません。
小西真奈「滝」 2008年 油彩、カンヴァス
特に小西真奈の「滝」に安田悠の「Link」、そして奈良美智の「春少女」などはそれぞれ魅惑的ではないでしょうか。いずれも2000年以降に描かれた作家の近作です。
デヴィット・ホイックニー「フレンチ・スタイルの逆光」 1974年 エッチング
デヴィット・ホックニーの「フレンチ・スタイルの逆光」のモチーフはルーブル美術館の窓だそうです。窓から透けるのは外の淡い光。均一でぶれがありません。うっすら黄色を帯びていました。
最後は浜美ならではの写真です。これがまた非常に見応えがあります。
金村修「Keihin Machine Soul」 1996年 ゼラチン・シルバー・プリント
ここでもテーマは都市です。金村修の「Keihin Machine Soul」は横浜界隈でしょうか。いわゆる雑然とした都市空間が舞台です。自転車で溢れる商店街や、無数の電線の錯綜する交差点などをモノクロームで切り取っています。
磯田智子の「残像」も面白いもの。真っ暗闇で僅かに灯る光、おそらくは地下鉄の駅です。車内から電車が駅に進入する際を狙って写したのかもしれません。
米田知子「空地1(市内最大の仮設住宅跡地から震災復興住宅をのぞむ)」 2004年 発色現像方式印画 ほか
そして米田知子です。かの阪神大震災に取材した一連のシリーズが目を引きます。震災直後といわゆる復興後の神戸を写した作品、復興後の真新しい家々の立ち並ぶ住宅街にはまだ空き地があります。きっとそこにもかつては何らかの生活があったのでしょう。振り返ってみれば今年の1月17日は、震災から20年の節目の年でもあります。
「横浜美術館コレクション展2014年度第2期」第2展示室 会場風景
浜美に特徴的な天井高のある第2展示室も見過ごせません。ダリの「幻想的風景」やデルヴォーの「階段」といったお馴染みの作品に加え、色彩のニュアンスが素晴らしいモローの「岩の上の女神」や、今年、大回顧展を控えたマグリットの「青春の泉」なども目を引きました。
近現代美術の常設展といえば、東京近辺ではまず東近美、さらに都現美などが充実していますが、ここ横浜美術館もそれに決して劣るものではありません。
「ホイッスラー展」 横浜美術館(はろるど)
ホイッスラー展のチケットでもちろん観覧出来ます。お出かけの際はコレクション展もお見逃しなきようおすすめします。
奈良美智「春少女」 2012年 アクリル、カンヴァス
3月1日まで開催されています。
「横浜美術館コレクション展2014年度第2期」 横浜美術館(@yokobi_tweet)
会期:2014年12月6日(土)~2015年3月1日(日)
休館:木曜日。但し12/25は開館。年末年始(12/29~1/2)。
時間:10:00~18:00
*入館は17時半まで。
*12/22~24は20時まで開館。(入館は19時半まで。)
料金:一般500(400)円、大学・高校生300(240)円、中学生100(80)円。小学生以下無料。
*( )内は20名以上の団体。要事前予約。
*毎週土曜日は高校生以下無料。
*当日企画展(ホイッスラー展)チケットにて観覧可。
住所:横浜市西区みなとみらい3-4-1
交通:みなとみらい線みなとみらい駅5番出口から徒歩5分。JR線、横浜市営地下鉄線桜木町駅より徒歩約10分。
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