「黒田記念館リニューアルオープン」 東京国立博物館

東京国立博物館
「黒田記念館リニューアルオープン」
1/2-2/1



東京国立博物館の黒田記念館を見てきました。

洋画家、黒田清輝(1866~1924)の遺言によって昭和3年に竣工した黒田記念館。長らく東京文化財研究所の所屋として使われたものの、2007年に東京国立博物館へと移管。その後、しばらく公開されていましたが、ともかく古い建物です。2012年より耐震改修工事のために休館していました。


黒田記念館全景(左手が上島珈琲。右奥が入口です。)

この年明け、1月2日のリニューアルオープンです。場所は東博の西側、ちょうど上野駅側から見て正門のさらに奥、芸大方向の右手です。本館や東洋館のある東博の構内ではありません。目印は1階にカフェとして併設された上島珈琲です。スクラッチタイル張りの建物が堂々たる姿を見せています。

建物は地下1階、地上2階の3層。うち2階が展示室です。計4室。右手に黒田記念室、左に特別室があり、その間に資料室と映像室があります。当然ながらいずれも黒田清輝に関する展示が行われています。

館内の撮影が出来ました。(禁止マークのある作品は撮影が出来ません。)


「故子爵黒田清輝胸像」 高村光太郎 昭和7年(1932)

まずは記念室です。こちらは開館当初から黒田の画業を顕彰するために使われていたというスペース、入口には高村光太郎による黒田の胸像も控えています。


「黒田記念室」会場風景

中には黒田の油画に写生帖、また画稿などが並んでいました。いずれも黒田の遺族から寄贈されたコレクションです。いわゆる常設展ということでしょう。その数30点ほどでした。(6週間毎に展示替えがあります。)


「祈祷」 黒田清輝 明治22年(1899)

魅惑的な1枚に出会いました。「祈祷」です。まだ20代の若き黒田の手による一枚、女性が胸の前で手を組んで祈る姿が描かれています。衣服の白い質感も美しく、全体としても赴き深いものがあります。私はどこかコローを連想しましたが、実際には黒田がレンブラントに関心を寄せていた頃の作品だそうです。


黒田清輝愛用の画材道具

また愛用のイーゼルや絵具箱といった遺品のほか、「雲」の連作も目を引きました。ちなみにこの「雲」はいずれも鎌倉で制作されたもの。空を見上げては夕刻の雲などを描いた作品だそうです。


「雲」(6枚組) 黒田清輝 大正3~10年(1914~21)

一方で特別室です。こちらは何とも壮観、代表作のそろい踏みです。重文の「湖畔」をはじめ、同じく重文の「智・感・情」に「舞妓」、さらに「読書」などが一堂に展示されています。


重要文化財「智・感・情」 黒田清輝 明治32年(1899)

中でも目立つのは「智・感・情」です。黒田が理想的な裸婦像を表そうとした作品、さも宗教画を思わせる三幅対の構成です。元々は白馬会展に出品しましたが、当時の社会から風紀上に問題があるとして批判にもさらされます。

しかしながら後に出展したパリの万国博覧会では銀賞を受賞するなどの栄誉にも輝きました。言わば黒田の代表作であり、また問題作とも言えるでしょう。私がこれを見たのは東京国立近代美術館の「ぬぐ絵画」展以来のことかもしれません。赤い輪郭線が思いの外に強く描かれています。また照明の落ちた特別室の空間でより映える裸婦像、背景に金地を用いているからでしょうか。何とも言い難いオーラ、迫力も感じられました。


右:「読書」 黒田清輝 明治24年(1891)

なおこの特別室のみ公開日が限定されています。以下の計3期間のみの公開です。ご注意下さい。(特別室の現会期の公開は1/12まで。)

[特別室の2015年の公開日]
第1回:2015年1月2日(金)~1月12日(月・祝)
第2回:2015年3月23日(月)~4月5日(日)
第3回:2015年10月27日(火)~11月8日(日)

特別室以外は基本的に東京国立博物館の開館日に準じて公開されるそうです。(記念室の現展示の会期は2/1まで。)


黒田記念館正面

外観しかり、内部のアールヌーヴォ風の装飾など、建物自体にも見るべき点の多い黒田記念館。入場は何と無料です。

博物館の観覧の際には是非とも立ち寄られることをおすすめします。

「黒田記念館リニューアルオープン」 東京国立博物館@TNM_PR
会期:1月2日(金)~2月1日(日)
休館:月曜日。但し1月12日(月・祝)は開館。
料金:無料。
時間:9:30~17:00(入館は閉館の30分前まで) 
住所:台東区上野公園13-9
交通:JR上野駅公園口より徒歩12分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅、京成電鉄上野駅より徒歩17分。
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