都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「博物館に初もうで」 東京国立博物館
東京国立博物館
「博物館に初もうで」
1/2-1/31
東京国立博物館で開催中の「博物館に初もうで」を見てきました。
新春恒例の「博物館に初もうで」。今年で干支を一巡し、13年目を迎えたそうです。これまた恒例となった「松林図屏風」をはじめとする新春特別企画のほか、干支の申をテーマとした特集展示、さらにはお正月に因んだ獅子舞などのイベントなどが行われています。(イベントは1/2、1/3限定。)
まずは干支の申。その名も「猿の楽園」です。古くから人の生活に関わりもあった猿。それゆえでしょうか。美術品においても猿を描いた作品には事欠きません。
「群猿図(模本)」 伝竹模写、原本:雪村 江戸時代・享保10年(1725)
まるで猿山でした。雪村の原本を模写した「群猿図」はどうでしょうか。手長猿が何やらしかめっ面をしては群に群れています。筆致は軽快、ただし模者の伝竹については来歴が不明です。元の雪村作は6曲1双の屏風絵です。比較的忠実に写しているそうです。
「百猿図」 狩野探信 江戸時代・18世紀
群れているといえば狩野探信の「百猿図」も負けてはいません。百猿とありますが、一体何匹いるのでしょうか。これまた無数の手長猿が木にそってチェーンのように連なっています。表情は豊かです。ぶら下がっては楽しそうに遊んでいる猿もいます。探信は探幽の子です。長寿などの寓意を込めた吉祥主題の作品でもあります。
「三猿蒔絵印籠」 塩見政誠 江戸時代・19世紀
猿の主題は何も絵画だけにとどまりません。「三猿蒔絵印籠」です。いわゆる見ざる、聞かざる、言わざるの三猿をモチーフとした印籠。写真では分かりにくいかもしれませんが、確かに三匹の猿がおきまりのポーズをしています。
「猿猴図」 狩野山雪 江戸時代・17世紀
とはいえ、圧倒的に可愛らしいのは狩野山雪の「猿猴図」でした。今年の初もうで展のチラシ表紙にも掲げられた作品です。水面へ手を伸ばす猿。にんまりと笑っています。墨の滲みを活かした筆さばき見事です。思わず触りたくなるような毛並みの様子を巧みに表しています。
「松林図屏風」 長谷川等伯 安土桃山時代・16世紀 *展示期間:1月2日(土)~1月17日(日)
「新春特別公開」では国宝室に等伯の「松林図屏風」が登場。いつもながらの人出です。全体を捉えるには他の方の頭越しになってしまいますが、それでも最前列へ廻れば等伯の繊細な筆致、ないしは独特の空気感を味わうことも出来ます。
「楼閣山水図屏風」(左隻) 池大雅 江戸時代・18世紀 *展示期間:1月2日(土)~1月24日(日)
同じく特別公開では池大雅の「楼閣山水図屏風」も立派でした。舞台は中国、大雅は清代の画貼を参考にして描いたそうです。楼閣に塗られた群青、そして朱の鮮やかな色味も魅惑的でした。
「夜着 紺綸子地鳳凰唐草模様」 江戸時代・18~19世紀
なお申や吉祥由来の作品は何も特集展示にあるだけではありません。広大な本館の総合文化展内の随所に点在しています。例えばこの艶やかな「夜着」。いわゆる江戸時代の布団です。鳳凰が描かれているなど、吉祥的主題をとる作品でもあります。
「色絵寿字宝尽文鉢」 江戸時代・18世紀
またずばり壽と記された伊万里の「色絵寿字宝尽文鉢」も美しいのではないでしょうか。手本は景徳鎮。明代の金襴手を模しているそうです。ともかく金彩が見事。何を盛れば映えるでしょうか。華やいで見えます。
「猿猴芦雁図」 岩佐勝重 江戸時代・17世紀
さらにお猿の絵もまだまだ尽きません。岩佐勝重の「猿猴芦雁図」は猿と雁を描いたもの。対の作品です。猿の幅では、黒と白の猿が互いに上下を向いています。やはり可愛らしい。ちなみに岩佐勝重とは又兵衛の長男です。福井藩の絵師として活動していました。
立林何げい「松竹梅図屏風」 江戸時代・18世紀
乾山の弟子として知られる立林何げいの「松竹梅図屏風」もお正月らしいのではないでしょうか。丸みを帯びた松。マッシュルームのような形とはキャプションの言葉です。松には梅が重なってもいます。どこか図像的です。確かに乾山の画風を思わせます。
横山大観「松竹梅」 昭和13年(1938)
それにしても「初もうで展」、年々人出が増しているのかもしれません。私は会期初日から一日遅れ、三日の観覧でしたが、それでも多くの方で賑わっていました。
ほか、浮世絵の展示室では北斎の「冨嶽三十六景」も大人気です。やはり富士山を目当てにされている方も多いのかもしれません。観覧のための行列もできていました。
和太鼓や獅子舞などの新春イベントのほか、正月限定のカレンダー付きワークシートの配布は既に終了しています。また「新春特別公開」は1月17日までの限定公開です。ご注意ください。*「特集 猿の楽園」は1月末まで。
お正月気分を盛り上げる「博物館に初もうで」。いつもより多くの外国のお客さまの姿を見かけた気もします。今年も楽しめました。
1月31日まで開催されています。
「博物館に初もうで」 東京国立博物館(@TNM_PR)
会期:1月2日(土) ~1月31日(日)
休館:月曜日。ただし祝日の場合は開館。翌火曜は休館。
料金:一般620円(520円)、大学生410円(310円)、高校生以下無料。
* ( )内は20名以上の団体料金。
*特別展「始皇帝と大兵馬俑」のチケットでも観覧可。
時間:9:30~17:00(入館は閉館の30分前まで)
住所:台東区上野公園13-9
交通:JR上野駅公園口より徒歩10分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅、京成電鉄上野駅より徒歩15分。
「博物館に初もうで」
1/2-1/31
東京国立博物館で開催中の「博物館に初もうで」を見てきました。
新春恒例の「博物館に初もうで」。今年で干支を一巡し、13年目を迎えたそうです。これまた恒例となった「松林図屏風」をはじめとする新春特別企画のほか、干支の申をテーマとした特集展示、さらにはお正月に因んだ獅子舞などのイベントなどが行われています。(イベントは1/2、1/3限定。)
まずは干支の申。その名も「猿の楽園」です。古くから人の生活に関わりもあった猿。それゆえでしょうか。美術品においても猿を描いた作品には事欠きません。
「群猿図(模本)」 伝竹模写、原本:雪村 江戸時代・享保10年(1725)
まるで猿山でした。雪村の原本を模写した「群猿図」はどうでしょうか。手長猿が何やらしかめっ面をしては群に群れています。筆致は軽快、ただし模者の伝竹については来歴が不明です。元の雪村作は6曲1双の屏風絵です。比較的忠実に写しているそうです。
「百猿図」 狩野探信 江戸時代・18世紀
群れているといえば狩野探信の「百猿図」も負けてはいません。百猿とありますが、一体何匹いるのでしょうか。これまた無数の手長猿が木にそってチェーンのように連なっています。表情は豊かです。ぶら下がっては楽しそうに遊んでいる猿もいます。探信は探幽の子です。長寿などの寓意を込めた吉祥主題の作品でもあります。
「三猿蒔絵印籠」 塩見政誠 江戸時代・19世紀
猿の主題は何も絵画だけにとどまりません。「三猿蒔絵印籠」です。いわゆる見ざる、聞かざる、言わざるの三猿をモチーフとした印籠。写真では分かりにくいかもしれませんが、確かに三匹の猿がおきまりのポーズをしています。
「猿猴図」 狩野山雪 江戸時代・17世紀
とはいえ、圧倒的に可愛らしいのは狩野山雪の「猿猴図」でした。今年の初もうで展のチラシ表紙にも掲げられた作品です。水面へ手を伸ばす猿。にんまりと笑っています。墨の滲みを活かした筆さばき見事です。思わず触りたくなるような毛並みの様子を巧みに表しています。
「松林図屏風」 長谷川等伯 安土桃山時代・16世紀 *展示期間:1月2日(土)~1月17日(日)
「新春特別公開」では国宝室に等伯の「松林図屏風」が登場。いつもながらの人出です。全体を捉えるには他の方の頭越しになってしまいますが、それでも最前列へ廻れば等伯の繊細な筆致、ないしは独特の空気感を味わうことも出来ます。
「楼閣山水図屏風」(左隻) 池大雅 江戸時代・18世紀 *展示期間:1月2日(土)~1月24日(日)
同じく特別公開では池大雅の「楼閣山水図屏風」も立派でした。舞台は中国、大雅は清代の画貼を参考にして描いたそうです。楼閣に塗られた群青、そして朱の鮮やかな色味も魅惑的でした。
「夜着 紺綸子地鳳凰唐草模様」 江戸時代・18~19世紀
なお申や吉祥由来の作品は何も特集展示にあるだけではありません。広大な本館の総合文化展内の随所に点在しています。例えばこの艶やかな「夜着」。いわゆる江戸時代の布団です。鳳凰が描かれているなど、吉祥的主題をとる作品でもあります。
「色絵寿字宝尽文鉢」 江戸時代・18世紀
またずばり壽と記された伊万里の「色絵寿字宝尽文鉢」も美しいのではないでしょうか。手本は景徳鎮。明代の金襴手を模しているそうです。ともかく金彩が見事。何を盛れば映えるでしょうか。華やいで見えます。
「猿猴芦雁図」 岩佐勝重 江戸時代・17世紀
さらにお猿の絵もまだまだ尽きません。岩佐勝重の「猿猴芦雁図」は猿と雁を描いたもの。対の作品です。猿の幅では、黒と白の猿が互いに上下を向いています。やはり可愛らしい。ちなみに岩佐勝重とは又兵衛の長男です。福井藩の絵師として活動していました。
立林何げい「松竹梅図屏風」 江戸時代・18世紀
乾山の弟子として知られる立林何げいの「松竹梅図屏風」もお正月らしいのではないでしょうか。丸みを帯びた松。マッシュルームのような形とはキャプションの言葉です。松には梅が重なってもいます。どこか図像的です。確かに乾山の画風を思わせます。
横山大観「松竹梅」 昭和13年(1938)
それにしても「初もうで展」、年々人出が増しているのかもしれません。私は会期初日から一日遅れ、三日の観覧でしたが、それでも多くの方で賑わっていました。
ほか、浮世絵の展示室では北斎の「冨嶽三十六景」も大人気です。やはり富士山を目当てにされている方も多いのかもしれません。観覧のための行列もできていました。
和太鼓や獅子舞などの新春イベントのほか、正月限定のカレンダー付きワークシートの配布は既に終了しています。また「新春特別公開」は1月17日までの限定公開です。ご注意ください。*「特集 猿の楽園」は1月末まで。
お正月気分を盛り上げる「博物館に初もうで」。いつもより多くの外国のお客さまの姿を見かけた気もします。今年も楽しめました。
1月31日まで開催されています。
「博物館に初もうで」 東京国立博物館(@TNM_PR)
会期:1月2日(土) ~1月31日(日)
休館:月曜日。ただし祝日の場合は開館。翌火曜は休館。
料金:一般620円(520円)、大学生410円(310円)、高校生以下無料。
* ( )内は20名以上の団体料金。
*特別展「始皇帝と大兵馬俑」のチケットでも観覧可。
時間:9:30~17:00(入館は閉館の30分前まで)
住所:台東区上野公園13-9
交通:JR上野駅公園口より徒歩10分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅、京成電鉄上野駅より徒歩15分。
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