都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「未来へつづく美生活展」 東京国立近代美術館工芸館
東京国立近代美術館工芸館
「1920~2010年代 所蔵工芸品に見る 未来へつづく美生活展」
2015/12/23~2016/2/21
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/53/7a/e786ec16c6c9aef22a5c6cec54a49860.jpg)
東京国立近代美術館工芸館で開催中の「1920~2010年代 所蔵工芸品に見る 未来へつづく美生活展」を見てきました。
暮らしと密接に関わる工芸。人は常に何らかの工芸品に囲まれて生活しています。「美しい生活とは何か。」そのヒントを与えてくれる展覧会と言えるかもしれません。
出品は140点。表題の通り全て館蔵品です。会場は二部構成です。前半は近現代の工芸品が並びます。後半は一転してデザイナーとのコラボレーションです。ファッションの皆川明、そしてインテリアの中原慎一郎の各デザイナーがインスタレーション的な展示を見せています。
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森口華弘の「縮緬地友禅笹文着物 残雪」 1969年
美しき和の装いです。森口華弘の「縮緬地友禅笹文着物 残雪」。友禅です。振り返ってみると絵画が目に飛び込んできました。中村貞以の「浄春」。いうまでも日本画です。和装の女性が正座姿で構えています。お茶の席でしょうか。黒い髪も艶やかで美しい。帯の青も鮮やかでした。
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中村貞以「浄春」 1947年
実は本展、このように工芸だけでなく、一部に絵画の参照があります。いずれも1930年から1940年代のもの。モダンを志向した当時の生活の有り様を紹介しています。
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藤井達吉「草花図屏風」 1916-20年
和室の設えも見事です。目立つのは藤井達吉の「草花図屏風」。木製でした。さらに奥には同じく藤井の電気スタンドが明かりを灯し、手前に象嵌を施した稲木東千里の「鉄刀木机」が置かれています。立ち入りは叶いませんが、思わず腰掛けては寛ぎたくなってしまいました。
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「未来へつづく美生活展」展示風景
他にも茶碗や蒔絵手箱、釜にガラス器などがずらり。お気に入りの1点を探すにはさほど時間はかかりません。
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飯塚小かん斎「竹刺編菱文提盤」 1975年
飯塚小かん(王編に千)斎の「竹刺編菱文提盤」に惹かれました。竹編みのお盆ですが、ともかく目地が細かい。菱形の文様がくっきりと浮かび上がっています。これほどの精巧な盆を作るのにいかなる労力があったのでしょうか。その技にも驚かされました。
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磯矢阿伎良「バイオリン・ケース」 1931年
磯矢阿伎良の「バイオリン・ケース」も美しい。漆絵です。文様は一見、幾何学的ですが、どこか正倉院宝物を連想させるものもあります。
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作者不詳「口紅、シガレットケース、コンパクトのセット」 1920-30年 ほか
シガレットケースやライターにも見るべき作品がありました。いわゆる七宝、なかなかのセンスです。しかしながらいずれも作者は不詳。一体どのような人物が作り上げたのでしょうか。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/79/56/bcfa9045fced612b38c966d059d8632c.jpg)
「第5室 中原慎一郎」展示風景
さて後半のコラボレーション、まずは中原慎一郎でした。コンセプトは日本のモダニズムに影響を与えたヨーロッパの工芸品です。ルーシー・リーの引用もあります。
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マルセル・ブロイヤー「肘掛け椅子」 1922-24年
チラシの表紙に掲載された吉岡堅二の「椅子にすわる女」も掛かっています。時は1931年、画家はルソーに傾倒していたそうです。モデルは青緑色のドレスを着た女性です。鉄パイプの椅子に腰掛けています。パイプの色は白、曲線が特徴的でした。そして手前には1920年代のマルセル・ブロイヤーの「肘掛け椅子」が控えます。いわゆるバウハウスの学生だった頃の作品です。素材は手に入りやすい安価な角材でした。この時代のデザインの特性を家具から見据えた展示でもあります。
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「第6室 皆川明」展示風景
皆川明は自身のデザインしたテキスタイルを紹介していました。とはいえ、単にテキスタイルを見せるだけではなく、各々に見合った工芸品を合わせ並べています。これがうまい。キャプションに「交差」とありましたが、確かにクロスオーバーを通して、工芸品の新たな魅力を引き出すことに成功しています。
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須田悦弘「葉」 2007年
お馴染み須田悦弘の木彫も登場。テキスタイルのデザインと同じ木の葉です。虫食いの穴までを細かに再現しています。本物と見間違うばかりでした。
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居心地の良い展示です。久々の工芸館でしたが、しばし時間を忘れて滞在してしまいました。
2月21日まで開催されています。
「1920~2010年代 所蔵工芸品に見る 未来へつづく美生活展」 東京国立近代美術館工芸館(@MOMAT60th)
会期:2015年12月23日(水・祝)~2016年2月21日(日)
休館:月曜日。但し1月11日は開館。年末年始(12月28日~1月1日)、1月12日(火)。
時間:10:00~17:00
*入館は閉館30分前まで
料金:一般210(100)円、大学生70(40)円、高校生以下無料。
*( )内は20名以上の団体料金。
*1月2日(土)、1月3日(日)、2月7日(日)は無料観覧日。
場所:千代田区北の丸公園1-1
交通:東京メトロ東西線竹橋駅1b出口徒歩8分。東京メトロ半蔵門線・東西線・都営新宿線九段下駅2番出口より徒歩12分。
「1920~2010年代 所蔵工芸品に見る 未来へつづく美生活展」
2015/12/23~2016/2/21
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/53/7a/e786ec16c6c9aef22a5c6cec54a49860.jpg)
東京国立近代美術館工芸館で開催中の「1920~2010年代 所蔵工芸品に見る 未来へつづく美生活展」を見てきました。
暮らしと密接に関わる工芸。人は常に何らかの工芸品に囲まれて生活しています。「美しい生活とは何か。」そのヒントを与えてくれる展覧会と言えるかもしれません。
出品は140点。表題の通り全て館蔵品です。会場は二部構成です。前半は近現代の工芸品が並びます。後半は一転してデザイナーとのコラボレーションです。ファッションの皆川明、そしてインテリアの中原慎一郎の各デザイナーがインスタレーション的な展示を見せています。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/77/ab/4bd5ea92eec470070a3171f35c48382a.jpg)
森口華弘の「縮緬地友禅笹文着物 残雪」 1969年
美しき和の装いです。森口華弘の「縮緬地友禅笹文着物 残雪」。友禅です。振り返ってみると絵画が目に飛び込んできました。中村貞以の「浄春」。いうまでも日本画です。和装の女性が正座姿で構えています。お茶の席でしょうか。黒い髪も艶やかで美しい。帯の青も鮮やかでした。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/70/f7/65eceb13447e0dc1f460238a1fc48a5e.jpg)
中村貞以「浄春」 1947年
実は本展、このように工芸だけでなく、一部に絵画の参照があります。いずれも1930年から1940年代のもの。モダンを志向した当時の生活の有り様を紹介しています。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/43/53/5267c13e7e98bdc17db6a9b0d0a06313.jpg)
藤井達吉「草花図屏風」 1916-20年
和室の設えも見事です。目立つのは藤井達吉の「草花図屏風」。木製でした。さらに奥には同じく藤井の電気スタンドが明かりを灯し、手前に象嵌を施した稲木東千里の「鉄刀木机」が置かれています。立ち入りは叶いませんが、思わず腰掛けては寛ぎたくなってしまいました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/60/64/15bf2a46828dbf3f4782ab705afe5db1.jpg)
「未来へつづく美生活展」展示風景
他にも茶碗や蒔絵手箱、釜にガラス器などがずらり。お気に入りの1点を探すにはさほど時間はかかりません。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/46/99/4e83a29898ddc8d5798efd117835c5fd.jpg)
飯塚小かん斎「竹刺編菱文提盤」 1975年
飯塚小かん(王編に千)斎の「竹刺編菱文提盤」に惹かれました。竹編みのお盆ですが、ともかく目地が細かい。菱形の文様がくっきりと浮かび上がっています。これほどの精巧な盆を作るのにいかなる労力があったのでしょうか。その技にも驚かされました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2a/02/d431ddcc495ad3c7f0d80e172d757cf4.jpg)
磯矢阿伎良「バイオリン・ケース」 1931年
磯矢阿伎良の「バイオリン・ケース」も美しい。漆絵です。文様は一見、幾何学的ですが、どこか正倉院宝物を連想させるものもあります。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/69/04/7e4d516c0ffc432b80b52709a5be90e2.jpg)
作者不詳「口紅、シガレットケース、コンパクトのセット」 1920-30年 ほか
シガレットケースやライターにも見るべき作品がありました。いわゆる七宝、なかなかのセンスです。しかしながらいずれも作者は不詳。一体どのような人物が作り上げたのでしょうか。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/79/56/bcfa9045fced612b38c966d059d8632c.jpg)
「第5室 中原慎一郎」展示風景
さて後半のコラボレーション、まずは中原慎一郎でした。コンセプトは日本のモダニズムに影響を与えたヨーロッパの工芸品です。ルーシー・リーの引用もあります。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2a/9f/8a23727ad9702a6d07680b6c89d5a5e4.jpg)
マルセル・ブロイヤー「肘掛け椅子」 1922-24年
チラシの表紙に掲載された吉岡堅二の「椅子にすわる女」も掛かっています。時は1931年、画家はルソーに傾倒していたそうです。モデルは青緑色のドレスを着た女性です。鉄パイプの椅子に腰掛けています。パイプの色は白、曲線が特徴的でした。そして手前には1920年代のマルセル・ブロイヤーの「肘掛け椅子」が控えます。いわゆるバウハウスの学生だった頃の作品です。素材は手に入りやすい安価な角材でした。この時代のデザインの特性を家具から見据えた展示でもあります。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4b/43/a23a0c2eb1800a685896ccc99f454570.jpg)
「第6室 皆川明」展示風景
皆川明は自身のデザインしたテキスタイルを紹介していました。とはいえ、単にテキスタイルを見せるだけではなく、各々に見合った工芸品を合わせ並べています。これがうまい。キャプションに「交差」とありましたが、確かにクロスオーバーを通して、工芸品の新たな魅力を引き出すことに成功しています。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3f/67/a30783eda4b1aec8936e61017de41d6d.jpg)
須田悦弘「葉」 2007年
お馴染み須田悦弘の木彫も登場。テキスタイルのデザインと同じ木の葉です。虫食いの穴までを細かに再現しています。本物と見間違うばかりでした。
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居心地の良い展示です。久々の工芸館でしたが、しばし時間を忘れて滞在してしまいました。
2月21日まで開催されています。
「1920~2010年代 所蔵工芸品に見る 未来へつづく美生活展」 東京国立近代美術館工芸館(@MOMAT60th)
会期:2015年12月23日(水・祝)~2016年2月21日(日)
休館:月曜日。但し1月11日は開館。年末年始(12月28日~1月1日)、1月12日(火)。
時間:10:00~17:00
*入館は閉館30分前まで
料金:一般210(100)円、大学生70(40)円、高校生以下無料。
*( )内は20名以上の団体料金。
*1月2日(土)、1月3日(日)、2月7日(日)は無料観覧日。
場所:千代田区北の丸公園1-1
交通:東京メトロ東西線竹橋駅1b出口徒歩8分。東京メトロ半蔵門線・東西線・都営新宿線九段下駅2番出口より徒歩12分。
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