「野口里佳写真展:夜の星へ」 キヤノンギャラリーS

キヤノンギャラリーS
「野口里佳写真展:夜の星へ」 



キヤノンギャラリーSで開催中の「野口里佳写真展:夜の星へ」を見てきました。

1971年に埼玉で生まれ、現在はベルリンに在住して制作を続ける写真家、野口里佳。その野口が同地のベルリンを見据えては街の景色を写し出しました。

会場内はぐっと照度を落とした暗がり。まさしく夜の世界です。そしてベルリンも夜。街灯やネオンサインが鮮やかに浮かび上がります。



視点がやや高いことに気がつきました。例えば道端で歩く人。野口の視点はさらにその上にあります。また車のテールライトもかなり低い位置で明かりを放っています。もちろん辺りは暗く、全てを見通すことはできません。ただそれでも点々と連なる街灯も遠くまで眺められることが分かります。



答えはバスにありました。というのも野口はベルリンを走る二階建てのバスに乗っては写真を撮ったそうです。つまり車中からの窓越しの景色。だからこその視点なのでしょう。そして明かりは赤や黄色、そして青に瞬いては強く輝き出します。ハレーションと呼んでも良いのでしょうか。光は闇をさも侵食するかのように広がっていました。



夜だからこそ際立つ色の世界。街にはたくさんの明かりに溢れていました。またいずれも不鮮明。ぼんやりと景色が写されているのも特徴です。一枚の作品に目が止まりました。やはり少し高い地点から女性を写したもの。家路を急ぐのかやや前かがみになって歩いているようにも見えます。ほかは至って暗く、また霧のように白い灯りに包まれています。何があるのかすらわかりません。不思議と絵画を前にしたかのような錯覚にとらわれました。野口が光を掴む感覚はやはり独特です。



展示は写真30点に加えて映像も1点。同じくベルリンの夜を映した作品です。対象を光のオブラートで包んでは表現する野口の写真の魅力を久々に味わうことができました。

なお作家の野口は現在、銀座のギャラリー小柳でも個展を開催中。本展とほぼ同じ会期で行われています。

「野口里佳 鳥の町」@ギャラリー小柳
会期:2015年12月19日(土)~2016年1月30日(土)

タイトルは「鳥の町」。ずばり空を群れては飛ぶ鳥をモチーフとした作品です。ここキヤノンの「夜の星」とは対照的な昼間、しかもクリア。水色が目に染みる空の景色です。あわせてみるのも楽しいのではないでしょうか。

「夜の星へ/野口里佳/NOHARA」

2月8日まで開催されています。

「野口里佳写真展:夜の星へ」 キヤノンギャラリーS
会期:2015年12月17日(木)~2016年2月8日(月)
休廊:日・祝日。年末年始(12/29~1/4)。
時間:10:00~17:30
料金:無料
住所:東京都港区港南2-16-6 キヤノンSタワー1階
交通:JR品川駅港南口より徒歩約8分、京浜急行線品川駅より徒歩約10分。
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