都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「菅木志雄」展 かねこ・あーとギャラリー 7/15
かねこ・あーとギャラリー(中央区京橋3-1-2 片倉ビル1階)
「菅木志雄展 - 平面と立体 2006 - 」(京橋界隈2006)
7/3-22
これまでにも何度か個展を拝見したことがある「もの派」アーティスト、菅木志雄の個展です。それほど大きくないオブジェ作品が何点も並んでいます。今まで見てきた氏の個展とは、やや趣きの異なる展覧会でした。
素材は殆ど木です。50センチ四方の木製パネルに突起を示し、それを線でなぞっていく。パネルの上に鉄を組み合わせたものや、またホッチキス針を帯状にして並べた作品なども展示されていました。木、鉄、そしてその幾何学的造形。これまでにも貫かれた菅の創作のスタイルが見て取れる内容です。
ただ今回の作品は、どれも形、特に色のバリエーションに富んでいます。今までに私が見てきた菅の作品は、どれも木材やビニールなどの素材感を最大限に追求したものばかりだったので、これらの鮮やかな彩色には目を奪われました。思わず手元に置いて飾りたくなるようなオブジェばかり。東京国立近代美術館の常設展示にある、仰々しい、いかにも作品内部の力学を表面に出したような作品とは異なります。この素朴な味わいは新鮮です。
白い木柱にカラフルなガラス何枚も重ねた作品が魅力的でした。(「来見不見在中」)緑や茶色の透き通ったガラスの質感と、軽い感触の真っ白な木柱。まるでコーンにのった色とりどりのアイスクリームのようです。ミントやチョコのアイスをコーンへのせると、それぞれに異なった味わいがあるように、この様々なガラスの色の組み合わせが、白い木柱に差し込む光の輝きを変化させていく。難解なイメージもある菅の作品としては異質とも言えるなど、感覚的に美しい作品でした。
今月22日までの開催です。
*関連エントリ
「菅木志雄個展 『空気の流路』」 東京画廊 3/9
「菅木志雄展」 小山登美夫ギャラリー 3/4
「菅木志雄展 - 平面と立体 2006 - 」(京橋界隈2006)
7/3-22
これまでにも何度か個展を拝見したことがある「もの派」アーティスト、菅木志雄の個展です。それほど大きくないオブジェ作品が何点も並んでいます。今まで見てきた氏の個展とは、やや趣きの異なる展覧会でした。
素材は殆ど木です。50センチ四方の木製パネルに突起を示し、それを線でなぞっていく。パネルの上に鉄を組み合わせたものや、またホッチキス針を帯状にして並べた作品なども展示されていました。木、鉄、そしてその幾何学的造形。これまでにも貫かれた菅の創作のスタイルが見て取れる内容です。
ただ今回の作品は、どれも形、特に色のバリエーションに富んでいます。今までに私が見てきた菅の作品は、どれも木材やビニールなどの素材感を最大限に追求したものばかりだったので、これらの鮮やかな彩色には目を奪われました。思わず手元に置いて飾りたくなるようなオブジェばかり。東京国立近代美術館の常設展示にある、仰々しい、いかにも作品内部の力学を表面に出したような作品とは異なります。この素朴な味わいは新鮮です。
白い木柱にカラフルなガラス何枚も重ねた作品が魅力的でした。(「来見不見在中」)緑や茶色の透き通ったガラスの質感と、軽い感触の真っ白な木柱。まるでコーンにのった色とりどりのアイスクリームのようです。ミントやチョコのアイスをコーンへのせると、それぞれに異なった味わいがあるように、この様々なガラスの色の組み合わせが、白い木柱に差し込む光の輝きを変化させていく。難解なイメージもある菅の作品としては異質とも言えるなど、感覚的に美しい作品でした。
今月22日までの開催です。
*関連エントリ
「菅木志雄個展 『空気の流路』」 東京画廊 3/9
「菅木志雄展」 小山登美夫ギャラリー 3/4
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「服部知佳」展 ギャラリー椿 7/15
ギャラリー椿(中央区京橋3-3-10)
「服部知佳」展(京橋界隈2006)
7/3-15(会期終了)
まるでアクリル画のような透明感溢れる色彩と、ダイナミックに描かれた花や金魚のモチーフ。暖色系の明るい色遣いと、その伸びやかな筆遣いにも惹かれる美しい油彩画です。先日拝見した「京橋界隈2006」の中で、一際輝いて見えた展覧会。ギャラリー椿で開催されていた服部知佳の個展です。
実際の花を描いているわけではないとのことですが、まずはその花や実などを描いたような美しい作品に惹かれます。キャンバスへ滲み出し、さらには仄かに溶けていく絵具の質感を利用して、何層もの奥行き感を生み出して描かれた花々。「stars」と名付けられた、まるでほおずきのような作品は特に美感に溢れています。CGを思わせるような立体感を見せるオレンジの星たちがゆらゆら。統一された色彩感が、ギャラリーの空間を夢見心地の世界へと変化させていました。
赤やオレンジのグラデーションで描かれた金魚の作品にもまた魅力的です。背びれが水をすいすいとかき分けていく様子。白い絵具がキャンバスへと溶け出します。また、芝生の上で気持ち良さそうにうたた寝をする猫。水が大地へ染み渡るように、だらっと足を伸ばしていました。なんともほのぼのとした光景です。
これからも拝見していきたいと思いました。他の動物や花の作品も見てみたいです。
「服部知佳」展(京橋界隈2006)
7/3-15(会期終了)
まるでアクリル画のような透明感溢れる色彩と、ダイナミックに描かれた花や金魚のモチーフ。暖色系の明るい色遣いと、その伸びやかな筆遣いにも惹かれる美しい油彩画です。先日拝見した「京橋界隈2006」の中で、一際輝いて見えた展覧会。ギャラリー椿で開催されていた服部知佳の個展です。
実際の花を描いているわけではないとのことですが、まずはその花や実などを描いたような美しい作品に惹かれます。キャンバスへ滲み出し、さらには仄かに溶けていく絵具の質感を利用して、何層もの奥行き感を生み出して描かれた花々。「stars」と名付けられた、まるでほおずきのような作品は特に美感に溢れています。CGを思わせるような立体感を見せるオレンジの星たちがゆらゆら。統一された色彩感が、ギャラリーの空間を夢見心地の世界へと変化させていました。
赤やオレンジのグラデーションで描かれた金魚の作品にもまた魅力的です。背びれが水をすいすいとかき分けていく様子。白い絵具がキャンバスへと溶け出します。また、芝生の上で気持ち良さそうにうたた寝をする猫。水が大地へ染み渡るように、だらっと足を伸ばしていました。なんともほのぼのとした光景です。
これからも拝見していきたいと思いました。他の動物や花の作品も見てみたいです。
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京橋の画廊をぐるっと一周。「京橋界隈2006」
つい先日のエントリでもご紹介した「京橋界隈」に参加してきました。東京・京橋に点在する14軒の画廊が共同で開催した企画です。と言っても、特段のイベントが予定されているわけではありません。一人で京橋一帯を粛々と歩き、静かに作品と対話していく。殆どいつもの画廊巡りと変わりませんでした。
この日の東京都心の最高気温は36度です。当然ながら暑く、少し歩いているとすぐに顔から汗が噴き出してきます。しかも私が廻ろうとした矢先、激しい雷雲がこの一帯に襲いかかりました。とても外をのんびり歩けるような状態でありません。京橋の喫茶店でアイスコーヒーをすすりながら雷雨が過ぎ去るのをしばらく待ちました。雨がやんでいざ出発です。まずは、銀座線京橋駅すぐそばの「かねこ・あーとギャラリー」でパンフレットをいただきます。そこから2、3の画廊を経由して首都高を潜り銀座一丁目方向へ。「柴田悦子画廊」からは、中央通りを横切って銀座松屋裏の「ギャラリーアートもりもと」へと歩きます。この辺も大分手慣れてきました。そこからは例の奥野ビルを通過して再び首都高を潜って北へ。昭和通り近くの浅草線宝町駅の方へと向かいます。半分を超えました。もう少しです。以前にも拝見したことのある「四季彩舎」や「金井画廊」を経由し、最後は「ギャルリー東京ユマニテ」で締めました。この日は全般的に不安定な天気でしたが、歩いている間は幸いにも雨にたたられることがありません。正味2時間半程度だったでしょうか。何故か閉まっていた「シルバーシェル」を除けば、どこもじっくり拝見出来たと思います。
(各画廊外観。どれがどの画廊かもう自分でも分かりません…。)
どの画廊にもイベントのパンフレットが置かれていました。ただ、展覧会自体がこの「京橋界隈」を意識してのものなのかは全く分かりません。しかも私が廻っている間、そのパンフを持っておられる方は一人か二人程度…。もちろん回を重ねていくことも重要なのでしょうか、これではイベントとしてあまりにも寂し過ぎるようにも思いました。また、初めにも少し触れましたが、テーマ設定もなく、後日開催されるオークションを除けば特段のイベントもない。この「京橋界隈」によって初めて足を伸した画廊があったのも事実ですが、もう一歩、いや二歩、参加者に何か楽しさを与えるような企画があればとも思います。
14軒の画廊を連続して訪ねると、さすがに印象深い展示とそうでない展示に分かれてしまいます。取りあえずは、各画廊についての大まかな印象を一言で記録しておきます。
「平子真理展@いつき美術画廊」
颯爽とした、優しい雰囲気の日本画数点。可愛らしいきつねが印象的。
「菅木志雄展@かねこ・あーとギャラリー」*
重厚な片倉ビルの一室にある画廊。思いの外多く並んでいた菅のオブジェは見応えあり。
「森嘉一展@金井画廊」
キャンバスを削り、さらには絵具を塗り重ねた油彩風景画。静物画の温もり。マチエールはソフトタッチなビュフェのよう。
「寺田政明展@昭和画廊」
瑞々しい油彩画。オレンジや赤の交じる椿の美しさ。色のにじみの妙。
「服部知佳展@ギャラリー椿」*
驚くほど立体感のある美しい植物や花々。見応え満点。
「宮永匡和展@柴田悦子画廊」
テンペラの技法で描かれた静物や動物。金箔と闇の対比が特徴的。
「川島清展@ギャルリー東京ユマニテ」
電話しないと入口(ビル)の鍵が開かないという驚きの画廊。コラージュのような版画の豊かな味わい。黒い線が風に靡くかのよう。
「石山かずひこ展@ギャラリーアートもりもと」
ほのぼのとした景色。淡い彩色。模型のような鉄道。懐かしい印象の作品。
「堀本恵美子展@東邦画廊」
光の織りなす世界をキャンバスで表現。映える金の帯。小品の方が印象深い。
「奈良千秋展@森田画廊」
陶器の展示。花瓶から湯呑みまで。白磁の温もりと角の取れた造形が美しい。
「小嶋悠司展@戸村美術」
苦手な印象…。
「根開きの穴@文京アート」
河原温、小山田二郎、鶴岡政男などの、50、60年代の作品が並ぶ。さすがに壮観。
「笹井史恵展@シルバーシェル」
何故か閉まっていた画廊。土曜日はお休み??
「彩旬会展-京-@四季彩舎」*
若手作家4名のグループ展。どれも非常に力のある作品ばかり。
「*」印の付けた展覧会については、また後日、改めて記事にアップ出来ればと思います。来年は、さてどうしましょう??
(各画廊外観。どれがどの画廊かもう自分でも分かりません…。)
どの画廊にもイベントのパンフレットが置かれていました。ただ、展覧会自体がこの「京橋界隈」を意識してのものなのかは全く分かりません。しかも私が廻っている間、そのパンフを持っておられる方は一人か二人程度…。もちろん回を重ねていくことも重要なのでしょうか、これではイベントとしてあまりにも寂し過ぎるようにも思いました。また、初めにも少し触れましたが、テーマ設定もなく、後日開催されるオークションを除けば特段のイベントもない。この「京橋界隈」によって初めて足を伸した画廊があったのも事実ですが、もう一歩、いや二歩、参加者に何か楽しさを与えるような企画があればとも思います。
14軒の画廊を連続して訪ねると、さすがに印象深い展示とそうでない展示に分かれてしまいます。取りあえずは、各画廊についての大まかな印象を一言で記録しておきます。
「平子真理展@いつき美術画廊」
颯爽とした、優しい雰囲気の日本画数点。可愛らしいきつねが印象的。
「菅木志雄展@かねこ・あーとギャラリー」*
重厚な片倉ビルの一室にある画廊。思いの外多く並んでいた菅のオブジェは見応えあり。
「森嘉一展@金井画廊」
キャンバスを削り、さらには絵具を塗り重ねた油彩風景画。静物画の温もり。マチエールはソフトタッチなビュフェのよう。
「寺田政明展@昭和画廊」
瑞々しい油彩画。オレンジや赤の交じる椿の美しさ。色のにじみの妙。
「服部知佳展@ギャラリー椿」*
驚くほど立体感のある美しい植物や花々。見応え満点。
「宮永匡和展@柴田悦子画廊」
テンペラの技法で描かれた静物や動物。金箔と闇の対比が特徴的。
「川島清展@ギャルリー東京ユマニテ」
電話しないと入口(ビル)の鍵が開かないという驚きの画廊。コラージュのような版画の豊かな味わい。黒い線が風に靡くかのよう。
「石山かずひこ展@ギャラリーアートもりもと」
ほのぼのとした景色。淡い彩色。模型のような鉄道。懐かしい印象の作品。
「堀本恵美子展@東邦画廊」
光の織りなす世界をキャンバスで表現。映える金の帯。小品の方が印象深い。
「奈良千秋展@森田画廊」
陶器の展示。花瓶から湯呑みまで。白磁の温もりと角の取れた造形が美しい。
「小嶋悠司展@戸村美術」
苦手な印象…。
「根開きの穴@文京アート」
河原温、小山田二郎、鶴岡政男などの、50、60年代の作品が並ぶ。さすがに壮観。
「笹井史恵展@シルバーシェル」
何故か閉まっていた画廊。土曜日はお休み??
「彩旬会展-京-@四季彩舎」*
若手作家4名のグループ展。どれも非常に力のある作品ばかり。
「*」印の付けた展覧会については、また後日、改めて記事にアップ出来ればと思います。来年は、さてどうしましょう??
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「熊田千佳慕展/山名文夫と熊田精華展」 目黒区美術館 7/2
目黒区美術館(目黒区目黒2-4-36 目黒区民センター内)
「熊田千佳慕展/山名文夫と熊田精華展」
6/24-9/3
かなり前に行ったので今更になってしまいますが、忘れないように記録しておきたいと思います。目黒区美術館で先月末から始まった、「熊田千佳慕展」と「山名文夫と熊田精華展」です。
恥ずかしながらこの三名のお名前を今回初めて知りました。熊田千佳慕(1911-)は今も現役で活躍なさる絵本作家、美術家です。「プチ・ファーブル」の愛称でも知られ、昆虫や花を精緻なタッチで描き続けておられます。一方の熊田精華(1898-1977)は詩人として活躍した千佳慕の実兄です。そして山名文夫(1897-1980)は主にポスターなどを手がけたデザイナー。精華の親友でもあり、千佳慕の師でもあったそうです。いきなり三名の名前が挙がってくるので少しややこしいのですが、この展覧会では熊田千佳慕の画業をメインにして、精華、文夫の交流などを絵や詩で紹介します。二本立ての内容です。
まずは熊田千佳慕の絵画からいきましょう。ケント紙の上で際立つ水彩の美しさ。生々しく表現された蝶の羽や触角などはとても写実的ですが、さすがに絵本作家というだけあってどこかほのぼのとした虫たちの世界を描いています。「みつばちマーヤの冒険」(1993-96)で見る、マーヤの頭の上結ばれた可愛らしいピンクのリボン。お話に則って、虫たちが闘う様子を描いた作品もありました。そしてその一方で、近作の「あじさい」(2005)のような作品もある。細密画とでも言えば良いのでしょうか。この味わいはとても新鮮です。
熊田千佳慕の描いた挿絵が載った絵本も展示されています。こちらは、クッションの転がるカーペットの上でくつろぎながら閲覧可能です。(一応、子ども向けの展示かと思いますが、靴さえ脱いであがれば問題ありません。)当然ながらこれらは書店でも手に入ります。私も、かつては知らず知らずに彼女の描いた挿絵を眺めていたのかもしれません。そう思うと、どこか懐かしい印象も受けました。
熊田精華と山名文夫についての展示は、熊田千佳慕を紹介したコーナーと比べると小さくなっています。こちらは二人の間で交わされた書簡や、山名の手がけたポスターなどが中心です。資生堂資料館所蔵の作品が多いとのことで、その関連の広告なども展示されていました。
熊田千佳慕の絵画はかなりの数です。淡い水彩による可愛らしい花や虫たちに囲まれた展覧会。9月3日までの開催です。
「熊田千佳慕展/山名文夫と熊田精華展」
6/24-9/3
かなり前に行ったので今更になってしまいますが、忘れないように記録しておきたいと思います。目黒区美術館で先月末から始まった、「熊田千佳慕展」と「山名文夫と熊田精華展」です。
恥ずかしながらこの三名のお名前を今回初めて知りました。熊田千佳慕(1911-)は今も現役で活躍なさる絵本作家、美術家です。「プチ・ファーブル」の愛称でも知られ、昆虫や花を精緻なタッチで描き続けておられます。一方の熊田精華(1898-1977)は詩人として活躍した千佳慕の実兄です。そして山名文夫(1897-1980)は主にポスターなどを手がけたデザイナー。精華の親友でもあり、千佳慕の師でもあったそうです。いきなり三名の名前が挙がってくるので少しややこしいのですが、この展覧会では熊田千佳慕の画業をメインにして、精華、文夫の交流などを絵や詩で紹介します。二本立ての内容です。
まずは熊田千佳慕の絵画からいきましょう。ケント紙の上で際立つ水彩の美しさ。生々しく表現された蝶の羽や触角などはとても写実的ですが、さすがに絵本作家というだけあってどこかほのぼのとした虫たちの世界を描いています。「みつばちマーヤの冒険」(1993-96)で見る、マーヤの頭の上結ばれた可愛らしいピンクのリボン。お話に則って、虫たちが闘う様子を描いた作品もありました。そしてその一方で、近作の「あじさい」(2005)のような作品もある。細密画とでも言えば良いのでしょうか。この味わいはとても新鮮です。
熊田千佳慕の描いた挿絵が載った絵本も展示されています。こちらは、クッションの転がるカーペットの上でくつろぎながら閲覧可能です。(一応、子ども向けの展示かと思いますが、靴さえ脱いであがれば問題ありません。)当然ながらこれらは書店でも手に入ります。私も、かつては知らず知らずに彼女の描いた挿絵を眺めていたのかもしれません。そう思うと、どこか懐かしい印象も受けました。
熊田精華と山名文夫についての展示は、熊田千佳慕を紹介したコーナーと比べると小さくなっています。こちらは二人の間で交わされた書簡や、山名の手がけたポスターなどが中心です。資生堂資料館所蔵の作品が多いとのことで、その関連の広告なども展示されていました。
熊田千佳慕の絵画はかなりの数です。淡い水彩による可愛らしい花や虫たちに囲まれた展覧会。9月3日までの開催です。
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「mayu 『mayu展』他 トーキョーワンダーサイト 7/8
トーキョーワンダーサイト(文京区本郷2-4-16)
「Emerging Artist Support Program 2006 vol.2」
7/8-30
前々からワンダーサイトで定点観測している展覧会です。今回もワンダーウォール公募展から選ばれた若手アーティストが紹介されています。出品者は、奈良エナミ、大沼真由子(mayu)、近藤恵介の計3名でした。
パッと見て華やかなのは、大沼真由子(mayu)の手がけたボトルキャップのインスタレーションです。壁面いっぱいに、まるで星空の天の川のように並んだ白いボトルキャップ。その各キャップには、色とりどりのハートや丸、さらには家の形をしたようなシールが張られています。それらはあたかもキラキラと輝く星のようです。また、キャップがキャンバスに整然と並んだ作品も展示されていました。(シールではなく、直接キャップに模様がペイントされています。)その他、まるでクッキー生地をキャンバスにのせたような粘土の作品にも同じような模様が象られています。となると、この模様が何なのかが気になるところです。その答えは、無数のポートレート写真が貼付けられた作品にありました。(それぞれの人物の吹き出しに要注目です。)作者しか解読出来ないという「mayu語」。要するに暗号でしょうか。それがキャップの表面に描かれているわけなのです。少しついていけない部分もありますが、このポップな世界観はなかなか魅力的です。見ていて心地良くなるような作品でした。
奈良エナミのアクリル絵画も美しい作品です。スケートボードをしている若者などをモチーフにした作品が5点。ベージュ色のキャンバスの上には、芝色や深緑などの渋い色彩が瑞々しくのっています。スケートボードのダイナミックな動きと、その背景に見える森や丘が無理なくまとまっていました。特にその色遣いに惹かれます。
近藤恵介のひねりのある絵画も見入ってしまいました。こちらは絵画の前に立ちながら、半ばその謎解きをするような作品です。ちょっとした思考テストの出来る作品とでも言えば良いのでしょうか。
今月末までの開催です。無料です。
*関連エントリ
「Emerging Artist Support Program 2006 vol.1」(「山本挙志『いってかえる』他」) 4/23
「Emerging Artist Support Program 2006 vol.2」
7/8-30
前々からワンダーサイトで定点観測している展覧会です。今回もワンダーウォール公募展から選ばれた若手アーティストが紹介されています。出品者は、奈良エナミ、大沼真由子(mayu)、近藤恵介の計3名でした。
パッと見て華やかなのは、大沼真由子(mayu)の手がけたボトルキャップのインスタレーションです。壁面いっぱいに、まるで星空の天の川のように並んだ白いボトルキャップ。その各キャップには、色とりどりのハートや丸、さらには家の形をしたようなシールが張られています。それらはあたかもキラキラと輝く星のようです。また、キャップがキャンバスに整然と並んだ作品も展示されていました。(シールではなく、直接キャップに模様がペイントされています。)その他、まるでクッキー生地をキャンバスにのせたような粘土の作品にも同じような模様が象られています。となると、この模様が何なのかが気になるところです。その答えは、無数のポートレート写真が貼付けられた作品にありました。(それぞれの人物の吹き出しに要注目です。)作者しか解読出来ないという「mayu語」。要するに暗号でしょうか。それがキャップの表面に描かれているわけなのです。少しついていけない部分もありますが、このポップな世界観はなかなか魅力的です。見ていて心地良くなるような作品でした。
奈良エナミのアクリル絵画も美しい作品です。スケートボードをしている若者などをモチーフにした作品が5点。ベージュ色のキャンバスの上には、芝色や深緑などの渋い色彩が瑞々しくのっています。スケートボードのダイナミックな動きと、その背景に見える森や丘が無理なくまとまっていました。特にその色遣いに惹かれます。
近藤恵介のひねりのある絵画も見入ってしまいました。こちらは絵画の前に立ちながら、半ばその謎解きをするような作品です。ちょっとした思考テストの出来る作品とでも言えば良いのでしょうか。
今月末までの開催です。無料です。
*関連エントリ
「Emerging Artist Support Program 2006 vol.1」(「山本挙志『いってかえる』他」) 4/23
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京橋界隈?
「月刊ギャラリー」の7月号を読んで初めて知りました。東京・京橋に点在する画廊が14軒ほど集まって開催されるイベントです。期間は今月3日から15日(土)まで。8月にはオークションも予定されているようです。ちなみにこの「京橋界隈」は今年で12回目を数えるとか。私がギャラリーへ行き始めたのはつい最近のことなので分かりませんが、この手の地域密着型アート系イベントでは草分けだそうです。
「第12回京橋界隈2006」(公式HP)
「Kaleidscopic Gallery Scene」(「京橋界隈」関連情報)
と、ここで紹介しておいて言うのも何ですが、この「京橋界隈」は、公式サイトの情報だけを頼りにすると、何とも不思議で、全貌の掴みにくいイベントです。会期中、オークション以外に何か特別の企画があるわけでもなく、共通するテーマもない。取りあえず、期間中に京橋の14軒のギャラリーがオープンしていて、何らかの展覧会が開かれているというだけのようにも見えます。ただ各画廊には、この企画のパンフレットが置かれているそうです。まずはそれを手にしてグルグルと京橋を歩いてもらおうというのが、このイベントの主旨なのかもしれません。銀座と日本橋に挟まれてやや影の薄い京橋ではありますが、これだけ画廊が集まっているのだということを宣伝する意味合いもありそうです。
何はともあれ、見知らぬ画廊へ足を伸ばすのには良い機会です。早速、最終日にでも出かけてみようかと思います。(ロゴ画像はHPから拝借致しました。)
「第12回京橋界隈2006」(公式HP)
「Kaleidscopic Gallery Scene」(「京橋界隈」関連情報)
と、ここで紹介しておいて言うのも何ですが、この「京橋界隈」は、公式サイトの情報だけを頼りにすると、何とも不思議で、全貌の掴みにくいイベントです。会期中、オークション以外に何か特別の企画があるわけでもなく、共通するテーマもない。取りあえず、期間中に京橋の14軒のギャラリーがオープンしていて、何らかの展覧会が開かれているというだけのようにも見えます。ただ各画廊には、この企画のパンフレットが置かれているそうです。まずはそれを手にしてグルグルと京橋を歩いてもらおうというのが、このイベントの主旨なのかもしれません。銀座と日本橋に挟まれてやや影の薄い京橋ではありますが、これだけ画廊が集まっているのだということを宣伝する意味合いもありそうです。
何はともあれ、見知らぬ画廊へ足を伸ばすのには良い機会です。早速、最終日にでも出かけてみようかと思います。(ロゴ画像はHPから拝借致しました。)
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「照屋勇賢 - 水に浮かぶ島」展 すみだリバーサイドホール・ギャラリー 7/8
すみだリバーサイドホール・ギャラリー(墨田区吾妻橋1-23-20)
アサヒビール本社1階ロビー(墨田区吾妻橋1-23-1)
「アサヒ・アート・コラボレーション 『照屋勇賢 - 水に浮かぶ島』展」
6/17-7/18
昨年の横浜トリエンナーレにも出品していた照屋勇賢の展覧会です。会場はすみだリバーサイドホール・ギャラリーとアサヒビール本社ロビー。ともに浅草駅から吾妻橋を渡ってすぐのところにありました。フィリップ・スタルクによる金色のオブジェが有名な建物です。
やはり一番目立つのは、ビニールハウスの中で飛び交う美しいオオゴマダラ(大胡麻斑蝶)です。沖縄以南のみで生息するオオゴマダラを、特設のビニールハウスでさなぎの段階から飼育し、さらにはふ化させるというプロジェクト。現在では見事にふ化して、そのシルクのように透き通った羽をひらひらと舞わせています。数えてみるとちょうど10羽いました。人に馴れてしまったのでしょうか。しばらく立っているとすぐに寄ってきます。ちなみにこの蝶が、さなぎの段階でふ化を待っていたのは、ビニールハウスの中に今も置かれている自転車でした。(しかもそれは会場前の放置自転車です。)本来なら美しい自然の中にて舞う蝶が、自転車の合間を窮屈そうに飛んでいる。その奇妙な組み合わせも印象的でした。
照屋がデザインしたお菓子は何とも涼し気です。その名も「Dessert Project」。ガラスの冷蔵庫に入ったカラフルなパフェが2つ並んでいます。そしてそのモチーフは、もちろん沖縄の海と空、さらには大地です。海に見立てた真っ青なゼリーの上には、ケーキのスポンジなどによって出来た沖縄の山がぽっかりと浮いています。また空には砂糖の雲がプカプカと靡いている。既に制作されてから数週間が経過しているので、おそらく食べることは無理かと思いますが、一口味見をしたくもなる美味しそうな作品です。
「結い」と名付けられた衣装は見逃せません。一見、カラフルな南国の花などがデザインされているかと思いきや、よく見ると上には軍用機が飛行し、そこから無数の落下傘部隊が降下する様子が描かれています。紅型という沖縄の伝統技法によって表現された基地の街沖縄の今。そう言った社会への眼差しもまた、照屋の作品に占める大きな要素かと思います。
うっかりすると見逃してしまいますが、この展覧会は隣のアサヒビールの本社1階ロビーでも同時開催されています。こちらではマクドナルドの紙袋をくり抜いて作られた森が見応え十分です。袋の図柄に合わせて美しく切り抜かれ、そして立つ木々。精巧な作りにも見入るところですが、木を素材とした紙袋の中で生まれる木の存在は、その消費のあり方をも批判しています。社会問題とリンクさせつつ、作品の美感も伴っている部分は「結い」と同様です。心に残りました。
アサヒビール主催の展覧会と言うことで、ビールにちなんだ作品も展示されていました。今月18日までの開催です。これはおすすめしたいと思います。
アサヒビール本社1階ロビー(墨田区吾妻橋1-23-1)
「アサヒ・アート・コラボレーション 『照屋勇賢 - 水に浮かぶ島』展」
6/17-7/18
昨年の横浜トリエンナーレにも出品していた照屋勇賢の展覧会です。会場はすみだリバーサイドホール・ギャラリーとアサヒビール本社ロビー。ともに浅草駅から吾妻橋を渡ってすぐのところにありました。フィリップ・スタルクによる金色のオブジェが有名な建物です。
やはり一番目立つのは、ビニールハウスの中で飛び交う美しいオオゴマダラ(大胡麻斑蝶)です。沖縄以南のみで生息するオオゴマダラを、特設のビニールハウスでさなぎの段階から飼育し、さらにはふ化させるというプロジェクト。現在では見事にふ化して、そのシルクのように透き通った羽をひらひらと舞わせています。数えてみるとちょうど10羽いました。人に馴れてしまったのでしょうか。しばらく立っているとすぐに寄ってきます。ちなみにこの蝶が、さなぎの段階でふ化を待っていたのは、ビニールハウスの中に今も置かれている自転車でした。(しかもそれは会場前の放置自転車です。)本来なら美しい自然の中にて舞う蝶が、自転車の合間を窮屈そうに飛んでいる。その奇妙な組み合わせも印象的でした。
照屋がデザインしたお菓子は何とも涼し気です。その名も「Dessert Project」。ガラスの冷蔵庫に入ったカラフルなパフェが2つ並んでいます。そしてそのモチーフは、もちろん沖縄の海と空、さらには大地です。海に見立てた真っ青なゼリーの上には、ケーキのスポンジなどによって出来た沖縄の山がぽっかりと浮いています。また空には砂糖の雲がプカプカと靡いている。既に制作されてから数週間が経過しているので、おそらく食べることは無理かと思いますが、一口味見をしたくもなる美味しそうな作品です。
「結い」と名付けられた衣装は見逃せません。一見、カラフルな南国の花などがデザインされているかと思いきや、よく見ると上には軍用機が飛行し、そこから無数の落下傘部隊が降下する様子が描かれています。紅型という沖縄の伝統技法によって表現された基地の街沖縄の今。そう言った社会への眼差しもまた、照屋の作品に占める大きな要素かと思います。
うっかりすると見逃してしまいますが、この展覧会は隣のアサヒビールの本社1階ロビーでも同時開催されています。こちらではマクドナルドの紙袋をくり抜いて作られた森が見応え十分です。袋の図柄に合わせて美しく切り抜かれ、そして立つ木々。精巧な作りにも見入るところですが、木を素材とした紙袋の中で生まれる木の存在は、その消費のあり方をも批判しています。社会問題とリンクさせつつ、作品の美感も伴っている部分は「結い」と同様です。心に残りました。
アサヒビール主催の展覧会と言うことで、ビールにちなんだ作品も展示されていました。今月18日までの開催です。これはおすすめしたいと思います。
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「ロビン・ロード個展」 資生堂ギャラリー 7/8
資生堂ギャラリー(中央区銀座8-8-3 銀座資生堂ビル地下1階)
「ロビン・ロード個展」
6/6-7/30
ベルリン在住のアーティスト、ロビン・ロードの日本初個展を見てきました。ストリートカルチャー風のパフォーマンスを映像で公開します。展示室の大きな壁面がスクリーンです。
コンクリート剥き出しの壁の前に立つのは、ストリートファッションに身を纏った一人の若者でした。彼が手にしているのは白いチョーク。それを自在に操って壁に絵を描いていきます。(その様子をコマ送りで映像化。)チョークが植物の種となって地面(壁)へまかれ、じょうろで水やりすると瞬く間に成長する。やがてそれがいつの間にかベットになっていました。後は彼がその前で寝るだけです。チョークの動きが植物やベットを表現し、そこにリアルなじょうろや人物が絡んでいく。彼が乗る車もチョークで制作されました。どれも約1分ほどの短い映像でしたが、ともかくチョークによって次から次へと新たな空間が創造されていきます。まさに画家としてチョークで絵を描き、まるで魔術師のように生命を与えていく。壁の前にてモノと場が生成されていきます。
少々物足りなさが残ったのも事実ですが、何が起るのかというハプニング的な要素も見逃せない点かと思いました。ぶらり立ち寄るにはピッタリの展覧会かもしれません。今月末までの開催です。
「ロビン・ロード個展」
6/6-7/30
ベルリン在住のアーティスト、ロビン・ロードの日本初個展を見てきました。ストリートカルチャー風のパフォーマンスを映像で公開します。展示室の大きな壁面がスクリーンです。
コンクリート剥き出しの壁の前に立つのは、ストリートファッションに身を纏った一人の若者でした。彼が手にしているのは白いチョーク。それを自在に操って壁に絵を描いていきます。(その様子をコマ送りで映像化。)チョークが植物の種となって地面(壁)へまかれ、じょうろで水やりすると瞬く間に成長する。やがてそれがいつの間にかベットになっていました。後は彼がその前で寝るだけです。チョークの動きが植物やベットを表現し、そこにリアルなじょうろや人物が絡んでいく。彼が乗る車もチョークで制作されました。どれも約1分ほどの短い映像でしたが、ともかくチョークによって次から次へと新たな空間が創造されていきます。まさに画家としてチョークで絵を描き、まるで魔術師のように生命を与えていく。壁の前にてモノと場が生成されていきます。
少々物足りなさが残ったのも事実ですが、何が起るのかというハプニング的な要素も見逃せない点かと思いました。ぶらり立ち寄るにはピッタリの展覧会かもしれません。今月末までの開催です。
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「林靖子展」 ギャラリー悠玄 7/8
ギャラリー悠玄(中央区銀座6-3-17)
「林靖子展 - "vento dell' ovest" - (ピエモンテの小さな町にて)」
7/4-8(会期終了)
イタリア北西部、ピエモンテ州のとある小さな町で描かれた美しい日本画が展示されていました。日本画家、林靖子の新作展です。ゆったりとした空間に、質感に長けた大小約15点の風景画が並んでいます。
圧巻なのは縦74センチ、横273センチにも及ぶ「La quiete」です。雄大に連なる山々と白い水をたたえた大きな湖。それがまさに日本画ならではの瑞々しい質感によって表現されています。湖面から立ち上がっているのは水蒸気でしょうか。水面近くには白い顔料がたっぷりと配され、それが黒い山の深みへと溶け込んでいきます。また湖畔からは、所々に描かれた建物がぼんやりと浮かび上がってきました。しっとりと体にまとわりつくような湿り気と静寂。あたかも自分がその場に立っているかのような気持ちにさせられます。
一枚の大きなキャンバスに描かれているのではなく、五枚合わさって画面が構成されているのも良いかと思いました。キャンバス毎の切れ目が、まるで屏風画の折り目のような役割を果たしています。一枚の絵画ではこうはいかないでしょう。縦に伸びる黒い筋が、横への広がりと奥行き感を与えている。ちょうど、雄大な大自然を目の当たりにした時の圧倒感。そのスケールの大きさがジワジワと伝わってきました。
現地の趣きある建物を描いた作品も素敵です。どれも寂し気で、何やら孤独感も漂っていますが、それが作品の質感と良く合っています。丁寧に描かれた細い線による建物はクレーのようでもありました。儚く、脆いその瞬間が画面に閉じ込められてます。
一人でじっくりと見入りたいような重みのある日本画でした。またこれからの作品も拝見してみたいです。
「林靖子展 - "vento dell' ovest" - (ピエモンテの小さな町にて)」
7/4-8(会期終了)
イタリア北西部、ピエモンテ州のとある小さな町で描かれた美しい日本画が展示されていました。日本画家、林靖子の新作展です。ゆったりとした空間に、質感に長けた大小約15点の風景画が並んでいます。
圧巻なのは縦74センチ、横273センチにも及ぶ「La quiete」です。雄大に連なる山々と白い水をたたえた大きな湖。それがまさに日本画ならではの瑞々しい質感によって表現されています。湖面から立ち上がっているのは水蒸気でしょうか。水面近くには白い顔料がたっぷりと配され、それが黒い山の深みへと溶け込んでいきます。また湖畔からは、所々に描かれた建物がぼんやりと浮かび上がってきました。しっとりと体にまとわりつくような湿り気と静寂。あたかも自分がその場に立っているかのような気持ちにさせられます。
一枚の大きなキャンバスに描かれているのではなく、五枚合わさって画面が構成されているのも良いかと思いました。キャンバス毎の切れ目が、まるで屏風画の折り目のような役割を果たしています。一枚の絵画ではこうはいかないでしょう。縦に伸びる黒い筋が、横への広がりと奥行き感を与えている。ちょうど、雄大な大自然を目の当たりにした時の圧倒感。そのスケールの大きさがジワジワと伝わってきました。
現地の趣きある建物を描いた作品も素敵です。どれも寂し気で、何やら孤独感も漂っていますが、それが作品の質感と良く合っています。丁寧に描かれた細い線による建物はクレーのようでもありました。儚く、脆いその瞬間が画面に閉じ込められてます。
一人でじっくりと見入りたいような重みのある日本画でした。またこれからの作品も拝見してみたいです。
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「ルオーとローランサン」 松下電工汐留ミュージアム 7/8
松下電工汐留ミュージアム(港区東新橋1-5-1 松下電工ビル4階)
「ルオーとローランサン - パリの踊り子たち - 」
4/29-7/9(会期終了)
もっと早く行けば良かったのですが、会期終了日の前日に見てきました。松下電工汐留ミュージアムで開催されていた「ルオーとローランサン」展です。
一見しても分かるように、ルオー(1871-1958)とローランサン(1883-1956)の作風はかなり異なります。しかしともに生粋のパリっ子で、活躍していたのもエコール・ド・パリの同時代です。その繋がりから、両者が共通のモチーフとして追求し続けた「踊り子」をキーワードに作品を並べていきます。また二人は、同じロシアバレエ団の舞台や衣装を手がけていたこともあるそうです。(会場ではそれも紹介されています。)ともに大成功を収めたとのことですが、バレエと言ってもどこか内省的な姿に見えるルオーの踊り子と、もっと開放的で、まさにダンスの動きの巧みに表現したローランサンの違いは歴然です。興味深く見ることが出来ました。
ところで、ルオーはこの美術館などでも良く拝見しますが、ローランサンについてはこれまであまり接したことがありません。となると、やはりまとめて見ることで新しく得られるイメージのようなものがわいてきます。元々ローランサンには、淡く、また軽いタッチの作品であるという先入観(余計な)を持っていましたが、実際に見ると、グレーを多用しているせいか、画面はどことなくくすんでいて重く、思いの外、色が鮮やかに抜けて来ません。特に初期の作品は造形も平面的で、画面全体がかなりのっぺりとしていました。ただ、キャリアを重ねていくうちに立体感が生まれ、また色遣いにも明るさが増していきます。それにしてもこのグレーの使い方は少々意外です。むしろルオーの厚塗りのグリーンの方が、華々しく輝いているように見えるくらいでした。グレーとピンクが重なり合う色彩感。かなり独特です。
汐留ミュージアムでは既に会期を終えてしまいましたが、7月14日からは長野県の蓼科湖畔にあるマリー・ローランサン美術館へ巡回(10/1まで)するそうです。この夏、そちら方面へお出かけの際には少し立ち寄ってみるのも良いかもしれません。
「ルオーとローランサン - パリの踊り子たち - 」
4/29-7/9(会期終了)
もっと早く行けば良かったのですが、会期終了日の前日に見てきました。松下電工汐留ミュージアムで開催されていた「ルオーとローランサン」展です。
一見しても分かるように、ルオー(1871-1958)とローランサン(1883-1956)の作風はかなり異なります。しかしともに生粋のパリっ子で、活躍していたのもエコール・ド・パリの同時代です。その繋がりから、両者が共通のモチーフとして追求し続けた「踊り子」をキーワードに作品を並べていきます。また二人は、同じロシアバレエ団の舞台や衣装を手がけていたこともあるそうです。(会場ではそれも紹介されています。)ともに大成功を収めたとのことですが、バレエと言ってもどこか内省的な姿に見えるルオーの踊り子と、もっと開放的で、まさにダンスの動きの巧みに表現したローランサンの違いは歴然です。興味深く見ることが出来ました。
ところで、ルオーはこの美術館などでも良く拝見しますが、ローランサンについてはこれまであまり接したことがありません。となると、やはりまとめて見ることで新しく得られるイメージのようなものがわいてきます。元々ローランサンには、淡く、また軽いタッチの作品であるという先入観(余計な)を持っていましたが、実際に見ると、グレーを多用しているせいか、画面はどことなくくすんでいて重く、思いの外、色が鮮やかに抜けて来ません。特に初期の作品は造形も平面的で、画面全体がかなりのっぺりとしていました。ただ、キャリアを重ねていくうちに立体感が生まれ、また色遣いにも明るさが増していきます。それにしてもこのグレーの使い方は少々意外です。むしろルオーの厚塗りのグリーンの方が、華々しく輝いているように見えるくらいでした。グレーとピンクが重なり合う色彩感。かなり独特です。
汐留ミュージアムでは既に会期を終えてしまいましたが、7月14日からは長野県の蓼科湖畔にあるマリー・ローランサン美術館へ巡回(10/1まで)するそうです。この夏、そちら方面へお出かけの際には少し立ち寄ってみるのも良いかもしれません。
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「ぐるっとパス2006」 戦況報告!
先日の記事でも少し触れましたが、2ヶ月前に購入した「ぐるっとパス」の有効期限が過ぎてしまいました。折角なので、ここにどれだけ廻れたのかということを記録しておきたいと思います。
「ぐるっとパス2006」 5/3(購入)~7/2(有効期限)
フリーパス(無料入場)
山種美術館(緑雨の景観)
三鷹市美術ギャラリー(高島野十郎展)
東京オペラシティアートギャラリー(武満徹展)
ブリヂストン美術館(雪舟からポロックまで)
東京藝術大学大学美術館(芸大コレクション展/常設展示)
泉屋博古館分館(近代陶磁器にみる東と西)
大倉集古館(播磨ゆかりの江戸絵画展)
目黒区美術館(素顔の伊東深水展)
東京国立近代美術館工芸館(所蔵作品展 花より工芸)
東京国立近代美術館(常設展示)
東京都写真美術館(世界報道写真展06)
朝倉彫塑館
国立西洋美術館(常設展示)
国立科学博物館(常設展示)
松岡美術館(エコール・ド・パリ展)
葛西臨海水族園
割引券
出光美術館(出光美術館名品展1)
東京都現代美術館(カルティエ現代美術財団コレクション展)
府中市美術館(アートとともに 寺田小太郎コレクション展)
東京国立博物館(常設展示)
以上、計20カ所です。こうして並べてみると、やはり無料で入場出来る施設に偏っています。あとはもちろん美術館が殆どです。こればかりは趣味の問題なので致し方ありません。
さすがにボロボロになりました。
このパスによって、初めて足を伸ばした施設も僅かながらありました。それは朝倉彫塑館と松岡美術館です。松岡の展覧会については昨日のエントリにアップしたので繰り返しませんが、朝倉彫塑館は大きな石と池のある中庭がとても印象的でした。これからの暑い季節に、目で涼をとるにもピッタリの場所かと思います。
企画展目当てで美術館へ行っていた私にとって、常設展だけ見るというのも珍しい経験です。特に東博はいつも企画展だけでいお腹いっぱいになってしまい、常設の方は流し目で見ることが多いのですが、今回はじっくり拝見することが出来ました。疲れていない状態で法隆寺宝物館を見たのは初めてかも知れません。あの静謐な雰囲気に身も心も癒される思いでした。
それこそ子どもの頃以来と言っても良いくらい久々だったのは、上野の国立科学博物館です。いつの間にやら立派な新館が完成しています。もちろん展示も一新されていました。かつては恐竜と宇宙のコーナーが大好きで、何度か来た記憶があるように思いますが、今こうして改めて見ると、全体的にお金がかかっているわりには今ひとつ展示に希求力がないようにも感じました。これはちょっと残念です。
さて最後にはやはりお金に触れなくてはいけません。ぐるっとパス2006の収支報告です。
無料入場分の観覧料 9340 + 割引券による割引額 500 - ぐるっとパス代 2000
= 7840 (円)
どうやら8000円近くは得をしたようです。こうして見ると改めてお値打ちなパスだということが分かります。
ほぼ毎回チェックしているオペラシティとブリヂストン、それに大倉集古館だけでほぼ2000円の元はとれます。また展覧会のシーズンとなる、秋の初めの頃にもう一度購入して使ってみようかと思います。
またスタンプラリーも20個完成したので応募してみました。この手の懸賞には弱いのですが、とりあえずは当たることを祈りたいです。
「ぐるっとパス2006」 5/3(購入)~7/2(有効期限)
フリーパス(無料入場)
山種美術館(緑雨の景観)
三鷹市美術ギャラリー(高島野十郎展)
東京オペラシティアートギャラリー(武満徹展)
ブリヂストン美術館(雪舟からポロックまで)
東京藝術大学大学美術館(芸大コレクション展/常設展示)
泉屋博古館分館(近代陶磁器にみる東と西)
大倉集古館(播磨ゆかりの江戸絵画展)
目黒区美術館(素顔の伊東深水展)
東京国立近代美術館工芸館(所蔵作品展 花より工芸)
東京国立近代美術館(常設展示)
東京都写真美術館(世界報道写真展06)
朝倉彫塑館
国立西洋美術館(常設展示)
国立科学博物館(常設展示)
松岡美術館(エコール・ド・パリ展)
葛西臨海水族園
割引券
出光美術館(出光美術館名品展1)
東京都現代美術館(カルティエ現代美術財団コレクション展)
府中市美術館(アートとともに 寺田小太郎コレクション展)
東京国立博物館(常設展示)
以上、計20カ所です。こうして並べてみると、やはり無料で入場出来る施設に偏っています。あとはもちろん美術館が殆どです。こればかりは趣味の問題なので致し方ありません。
さすがにボロボロになりました。
このパスによって、初めて足を伸ばした施設も僅かながらありました。それは朝倉彫塑館と松岡美術館です。松岡の展覧会については昨日のエントリにアップしたので繰り返しませんが、朝倉彫塑館は大きな石と池のある中庭がとても印象的でした。これからの暑い季節に、目で涼をとるにもピッタリの場所かと思います。
企画展目当てで美術館へ行っていた私にとって、常設展だけ見るというのも珍しい経験です。特に東博はいつも企画展だけでいお腹いっぱいになってしまい、常設の方は流し目で見ることが多いのですが、今回はじっくり拝見することが出来ました。疲れていない状態で法隆寺宝物館を見たのは初めてかも知れません。あの静謐な雰囲気に身も心も癒される思いでした。
それこそ子どもの頃以来と言っても良いくらい久々だったのは、上野の国立科学博物館です。いつの間にやら立派な新館が完成しています。もちろん展示も一新されていました。かつては恐竜と宇宙のコーナーが大好きで、何度か来た記憶があるように思いますが、今こうして改めて見ると、全体的にお金がかかっているわりには今ひとつ展示に希求力がないようにも感じました。これはちょっと残念です。
さて最後にはやはりお金に触れなくてはいけません。ぐるっとパス2006の収支報告です。
無料入場分の観覧料 9340 + 割引券による割引額 500 - ぐるっとパス代 2000
= 7840 (円)
どうやら8000円近くは得をしたようです。こうして見ると改めてお値打ちなパスだということが分かります。
ほぼ毎回チェックしているオペラシティとブリヂストン、それに大倉集古館だけでほぼ2000円の元はとれます。また展覧会のシーズンとなる、秋の初めの頃にもう一度購入して使ってみようかと思います。
またスタンプラリーも20個完成したので応募してみました。この手の懸賞には弱いのですが、とりあえずは当たることを祈りたいです。
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モーツァルトの妻、コンスタンツェの写真が発見される
モーツァルトの未亡人の写真を発見=ドイツ(yahoo)
モーツァルトの妻、コンスタンツェの写真がドイツで発見されたそうです。もちろん撮影されたのは、モーツァルトの死後から約半世紀ほど経過した1840年。彼女と親交のあった作曲家ケラーの自宅での一コマだそうです。この時のコンスタンツェは既に78歳。(ちなみに彼女が亡くなるのはこの2年後です。)どうでしょうか。肖像画と見比べて見るのもまた一興です。(「悪妻」から「良妻」への変化が読み取れる?!)
写真へのリンク。(前列左からコンスタンツェ、ケラー、ケラー夫人だそうです。)
モーツァルトの妻、コンスタンツェの写真がドイツで発見されたそうです。もちろん撮影されたのは、モーツァルトの死後から約半世紀ほど経過した1840年。彼女と親交のあった作曲家ケラーの自宅での一コマだそうです。この時のコンスタンツェは既に78歳。(ちなみに彼女が亡くなるのはこの2年後です。)どうでしょうか。肖像画と見比べて見るのもまた一興です。(「悪妻」から「良妻」への変化が読み取れる?!)
写真へのリンク。(前列左からコンスタンツェ、ケラー、ケラー夫人だそうです。)
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「エコール・ド・パリ展」 松岡美術館 7/2
松岡美術館(港区白金台5-12-6)
「エコール・ド・パリ展」
4/29-9/3
松岡美術館へは今回初めて行ってきました。白金台の外苑西通りから一歩裏へ入った、閑静な住宅街に建つ美術館です。重厚感のある佇まいが印象的でした。
美術館の創立者は、現松岡グループの創業者である松岡清次郎氏(1864-1989)です。と言うことで、所蔵品はもちろん氏の蒐集したコレクション。かつては新橋の自社ビル内に美術館を設けていたようですが、2000年にこの地へ移って来ました。二階建てながらもゆったりとした広い館内には、古代オリエントからガンダーラ・インド美術、それに東洋青磁やフランス近代絵画などがズラリと並べられています。ちなみにこの「エコール・ド・パリ展」は、そのコレクションの一部であるフランス近代絵画の中から構成されたものです。キスリング、シャガール、藤田、ユトリロ、ヴラマンクなどの絵画が展示されています。常設の古美術を合わると、予想以上に見応えのある展覧会でした。
シャガールの幻想的な絵画や、乳白色の藤田にモディリアーニの女性肖像画などの落ち着いた作品も優れていましたが、まず挙げたいのはデュフィの海景画、「信号所」(1924)です。深い青みをたたえた波打つ海。波がまるで魚の鱗のように表現されています。そして海にはぽっかり汽船が浮かんでいる。画面右側の陸地には人が海を眺めている様子も描かれています。とても強いタッチにて絵具がおかれているので、水や空気の透明感はまるで伝わってきませんが、その分、海の重みがどっしりと感じられます。ズシリと心に迫るような風景画です。
最近惹かれているヴラマンクにも印象深い作品がありました。まずはこの「嵐の前の風車」(1930)です。遠目から見ると、それこそ海景画のように海が描かれているようにも思えますが、深い緑は嵐の前で風に波打っている大地です。そしてそこに浮かぶように描かれた風車。小屋か積み藁のようなものが前景に描かれています。奥から手前へ轟々と抜けていく風。まさに暗雲漂う空と、荒々しい大地。白いタッチが効果的です。また画面中央には、そんな嵐を背に背にして歩く二人の人が見えました。帰路を急いでいるのかもしれません。
非常に激しい作品なので大きく好き嫌いが分かれるかと思いますが、同じくヴラマンクの「スノンシュ森の落日」(1938)も強いインパクトを与えられます。落葉した木々が寒々と立っている。その不気味な表現にも目を奪われるところですが、ともかくその奥にて沈み行く夕陽が強烈です。ドキツい朱色にて真ん丸に描かれた夕陽。そこから発せられた強い光線が木々を侵しています。一歩間違えれば崩壊してしまいそうな危うい構図感ではありますが、ギリギリの線で絵としてかろうじてまとまっています。その夕陽の眩しさに思わず仰け反ってしまうような作品でした。
9月3日までの開催です。今後は常設展と合わせて、企画展もチェックしていきたいと思います。
「エコール・ド・パリ展」
4/29-9/3
松岡美術館へは今回初めて行ってきました。白金台の外苑西通りから一歩裏へ入った、閑静な住宅街に建つ美術館です。重厚感のある佇まいが印象的でした。
美術館の創立者は、現松岡グループの創業者である松岡清次郎氏(1864-1989)です。と言うことで、所蔵品はもちろん氏の蒐集したコレクション。かつては新橋の自社ビル内に美術館を設けていたようですが、2000年にこの地へ移って来ました。二階建てながらもゆったりとした広い館内には、古代オリエントからガンダーラ・インド美術、それに東洋青磁やフランス近代絵画などがズラリと並べられています。ちなみにこの「エコール・ド・パリ展」は、そのコレクションの一部であるフランス近代絵画の中から構成されたものです。キスリング、シャガール、藤田、ユトリロ、ヴラマンクなどの絵画が展示されています。常設の古美術を合わると、予想以上に見応えのある展覧会でした。
シャガールの幻想的な絵画や、乳白色の藤田にモディリアーニの女性肖像画などの落ち着いた作品も優れていましたが、まず挙げたいのはデュフィの海景画、「信号所」(1924)です。深い青みをたたえた波打つ海。波がまるで魚の鱗のように表現されています。そして海にはぽっかり汽船が浮かんでいる。画面右側の陸地には人が海を眺めている様子も描かれています。とても強いタッチにて絵具がおかれているので、水や空気の透明感はまるで伝わってきませんが、その分、海の重みがどっしりと感じられます。ズシリと心に迫るような風景画です。
最近惹かれているヴラマンクにも印象深い作品がありました。まずはこの「嵐の前の風車」(1930)です。遠目から見ると、それこそ海景画のように海が描かれているようにも思えますが、深い緑は嵐の前で風に波打っている大地です。そしてそこに浮かぶように描かれた風車。小屋か積み藁のようなものが前景に描かれています。奥から手前へ轟々と抜けていく風。まさに暗雲漂う空と、荒々しい大地。白いタッチが効果的です。また画面中央には、そんな嵐を背に背にして歩く二人の人が見えました。帰路を急いでいるのかもしれません。
非常に激しい作品なので大きく好き嫌いが分かれるかと思いますが、同じくヴラマンクの「スノンシュ森の落日」(1938)も強いインパクトを与えられます。落葉した木々が寒々と立っている。その不気味な表現にも目を奪われるところですが、ともかくその奥にて沈み行く夕陽が強烈です。ドキツい朱色にて真ん丸に描かれた夕陽。そこから発せられた強い光線が木々を侵しています。一歩間違えれば崩壊してしまいそうな危うい構図感ではありますが、ギリギリの線で絵としてかろうじてまとまっています。その夕陽の眩しさに思わず仰け反ってしまうような作品でした。
9月3日までの開催です。今後は常設展と合わせて、企画展もチェックしていきたいと思います。
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「若冲と江戸絵画」展、ポストカード販売予想 1-3
「若冲と江戸絵画」展のコレクションブログが面白いキャンペーンを企画しています。詳細はそちらのブログを参照していただきたいのですが、私も早速、参加してみることにしました。と言うことで予想は1-3です。理屈はありません。単なる勘です。
どのポストカードも欲しいものばかりですが、やはり私が一番気になるのはNo.12の「鳥獣花木図屏風」です。と言うよりも、もう早く実物を見たくてたまりません。本当に待ち遠しい!
キャンペーンは17日まで行われているそうです。それにしてもTB(http://d.hatena.ne.jp/jakuchu/20060705/p1)で応募という形式はなかなか器用です。東博もよく考えました。タイトルのお約束事に注意(!)して、是非皆さんも気軽にやってみてはいかがでしょうか。(既にTBが19件もついていますが…。)
*画像は三の丸尚蔵館で見た「紫陽花双鶏図」です。
P.S. どうやらこのブログからはTBが上手く送れないようです。これは残念…。(mizdesignさんがコメントにてTBの方法を教えて下さいました!ありがとうございます!)
どのポストカードも欲しいものばかりですが、やはり私が一番気になるのはNo.12の「鳥獣花木図屏風」です。と言うよりも、もう早く実物を見たくてたまりません。本当に待ち遠しい!
キャンペーンは17日まで行われているそうです。それにしてもTB(http://d.hatena.ne.jp/jakuchu/20060705/p1)で応募という形式はなかなか器用です。東博もよく考えました。タイトルのお約束事に注意(!)して、是非皆さんも気軽にやってみてはいかがでしょうか。(既にTBが19件もついていますが…。)
*画像は三の丸尚蔵館で見た「紫陽花双鶏図」です。
P.S. どうやらこのブログからはTBが上手く送れないようです。これは残念…。(mizdesignさんがコメントにてTBの方法を教えて下さいました!ありがとうございます!)
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「坂本繁二郎展」 ブリヂストン美術館 7/2
ブリヂストン美術館(中央区京橋1-10-1)
「坂本繁二郎展」
6/16-7/8
ブリヂストン美術館で開催中の、洋画家坂本繁二郎(1882-1969)の回顧展へ行ってきました。独特の淡い色彩による、牛、馬などをモチーフにした絵画に惹かれます。予想以上に見応えのある展覧会でした。
ともかく牧牛や馬を描いた作品が優れています。フランス留学の前に描かれた「海岸の牛」(1914)や「牛」(1915)などの味わい深さ。どっしりと佇んでいる牛たちの存在感と、ピンクや赤を交えた色彩の重み。「牛」では、その毛並みがあたかも浮き出てくるかのように表現されています。まだ後の作品に見られるようなパステル調の色彩はありませんが、それでもかなり魅力的です。そしてこの色の魅力は、同時期に描かれたモノトーン調の「牛」と比べれば歴然としています。坂本の絵画にとってなくてはならない要素です。
試行錯誤を繰り返しているようにも見えたフランス留学期においても、その色彩だけは確かに発展したようです。これ以前に見せていたピンクには白が混じり、さらには限りなく水色に近い青が画面を覆ってくる。またタッチは全体的に大胆となっていきます。面的な表現が多用されているとも言えるでしょうか。「帽子を持てる女」(1923)などはその一例です。構図が私にはあまり魅力的に見えませんが、その色彩はこの後の活動をハッキリと見通しています。そしてそれが帰国後の馬や牛の作品へ繋がるのです。
この展覧会のハイライトは、やはり3番目の「美しき郷里と馬」のコーナーではないでしょうか。半ば爽やかとも言えるような瑞々しい色彩感を見せる「放牧三馬」(1932)の美しさ。白馬を中央にして、三頭の馬が群れる構図です。またこの作品にだけに限りませんが、坂本の油彩画はどれも画肌に深みが感じられます。一見、華やいだ、軽いタッチのようでも、実際には絵具の質感に適度な重みがある。絵具の匂いすら立ち上がってきそうな生々しさを感じさせます。あたかも漆職人が器へ色を付けるかのように、キャンバスに色を丁寧に塗り重ねていった。そんな職人芸的な味わいも、また魅力の一つなのかもしれません。
確立したパステル調の色彩による静物画も興味深いものがあります。馬や牛の作品と比べるとややその魅力が落ちるようにも思えましたが、能面や箱などを素朴に描いた作品には、見ていてホッとさせられるような温もりを感じました。また晩年に描いたものでは、「達磨」(1964)がとても可愛らしい表情を見せています。口を真一文字に閉じただるまが一つ。既に願いがかなったのか、クッキリとした丸い両目がこちらをジーッと見つめています。そしてその背景には、まるで天女の羽衣のような模様が描かれている。雲でしょうか。まただるまは、それ自体がぼんやりと照り出しているかのようにやや赤みがかって光っています。これは惹かれる作品です。
先にも触れましたが、画像や印刷では分かりにくいようなマチエールに魅力のある作品です。また、まとめて見ることで、改めて画家の魅力を再発見出来るような展覧会でもあります。(以前に近代美術館で開催された須田国太郎展のようです。)今週の土曜日までの開催ですが、これはおすすめしたいです。
「坂本繁二郎展」
6/16-7/8
ブリヂストン美術館で開催中の、洋画家坂本繁二郎(1882-1969)の回顧展へ行ってきました。独特の淡い色彩による、牛、馬などをモチーフにした絵画に惹かれます。予想以上に見応えのある展覧会でした。
ともかく牧牛や馬を描いた作品が優れています。フランス留学の前に描かれた「海岸の牛」(1914)や「牛」(1915)などの味わい深さ。どっしりと佇んでいる牛たちの存在感と、ピンクや赤を交えた色彩の重み。「牛」では、その毛並みがあたかも浮き出てくるかのように表現されています。まだ後の作品に見られるようなパステル調の色彩はありませんが、それでもかなり魅力的です。そしてこの色の魅力は、同時期に描かれたモノトーン調の「牛」と比べれば歴然としています。坂本の絵画にとってなくてはならない要素です。
試行錯誤を繰り返しているようにも見えたフランス留学期においても、その色彩だけは確かに発展したようです。これ以前に見せていたピンクには白が混じり、さらには限りなく水色に近い青が画面を覆ってくる。またタッチは全体的に大胆となっていきます。面的な表現が多用されているとも言えるでしょうか。「帽子を持てる女」(1923)などはその一例です。構図が私にはあまり魅力的に見えませんが、その色彩はこの後の活動をハッキリと見通しています。そしてそれが帰国後の馬や牛の作品へ繋がるのです。
この展覧会のハイライトは、やはり3番目の「美しき郷里と馬」のコーナーではないでしょうか。半ば爽やかとも言えるような瑞々しい色彩感を見せる「放牧三馬」(1932)の美しさ。白馬を中央にして、三頭の馬が群れる構図です。またこの作品にだけに限りませんが、坂本の油彩画はどれも画肌に深みが感じられます。一見、華やいだ、軽いタッチのようでも、実際には絵具の質感に適度な重みがある。絵具の匂いすら立ち上がってきそうな生々しさを感じさせます。あたかも漆職人が器へ色を付けるかのように、キャンバスに色を丁寧に塗り重ねていった。そんな職人芸的な味わいも、また魅力の一つなのかもしれません。
確立したパステル調の色彩による静物画も興味深いものがあります。馬や牛の作品と比べるとややその魅力が落ちるようにも思えましたが、能面や箱などを素朴に描いた作品には、見ていてホッとさせられるような温もりを感じました。また晩年に描いたものでは、「達磨」(1964)がとても可愛らしい表情を見せています。口を真一文字に閉じただるまが一つ。既に願いがかなったのか、クッキリとした丸い両目がこちらをジーッと見つめています。そしてその背景には、まるで天女の羽衣のような模様が描かれている。雲でしょうか。まただるまは、それ自体がぼんやりと照り出しているかのようにやや赤みがかって光っています。これは惹かれる作品です。
先にも触れましたが、画像や印刷では分かりにくいようなマチエールに魅力のある作品です。また、まとめて見ることで、改めて画家の魅力を再発見出来るような展覧会でもあります。(以前に近代美術館で開催された須田国太郎展のようです。)今週の土曜日までの開催ですが、これはおすすめしたいです。
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