かぶれの世界(新)

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メディアの堕落

2005-09-21 23:53:39 | ニュース
昨年から日米の選挙の報道を追っかけて報道の仕方がかなり違うことを実感した。日本の政治や経済が特殊だというけど、メディアも負けず劣らず特殊だと思わずにはいられない。一方的に悪いとはいわないが、少なくともこれでは世界から尊敬され引用される報道にはならないと思わずにはいられない。全体にその傾向が強いのだが特にテレビが情けない。私の見た報道人は世界のメディアから評価され引き抜かれることはまずなさそうだ。

テレビ報道がニュースショウ化したのは米国が先行している。米国滞在時に起こったモニカ・ルインスキーの報道は異常だった。彼らもスキャンダルは大好きだ。しかし、米国には夫々テレビ局の(時には米国の)良心を代表するといわれるアンカーマンがおり本質を鋭く追求して行き報道の質を高め、又それが当然のように期待されそれが故に尊敬され、ジャーナリズムに関わる人の目標になっている。新聞も著名な記者がいて同じような仕組みがある。ところが、日本のテレビでまともに見えるアンカーは、私と意見は異なるが筑紫氏くらいしか思いつかない。

今回の衆院選でも争点を深く理解しているとはとても思えない芸能人やアナウンサーが薄っぺらい知識や正義感を振りかざし、コメンテータの受け売りを朝から晩まで繰り返していた。素人はちょっと複雑になると「評論家」といわれている人達の意見に頼らざるを得ないが、彼らがまた酷い。本筋に切り込まずマージナル・イシューの揚げ足取りばかりで、まるで仲間外れにされ拗ねている様な評論をする者が殆どだった。1面のヘッドラインで論じなければならないことを省略して、16面の所謂「穿った見方」だけを尤もらしく喋る。選挙結果が示したメッセージをデータに基づき真面目に分析し報じたテレビ番組は、私が見た範囲では視聴率1%以下の時間帯のNHK BS1放送だけだった。民意が何だったのかの認識が報道にとっても最も重要だと思うのだが。

わかりやすい例を挙げると、数日まえから自民党の新人が派閥に入らないよう党が教育・情報交換の場を作るという報道があった。それは「小泉党」を作り首相の立場を強めると2,3のコメンテータが言うのを見た。普段口を揃えて派閥に批判的な人達が一体どうしたのか。実は派閥の情報源を持っていてその既得権益が侵されることを心配したのかと勘繰りたくなる。彼等はもしかしたら隠れ抵抗勢力なのか。これが将来の派閥の動きにどういう影響を与えるか、効果があるのかをまず論評するのが本筋でないのか。その上で得意の裏の狙いのウンチクを論じるべきではないのか。

しかし一方的に非難できない同情すべき点もある。ジャーナリストの多くは長い間政治家や官僚の作文に聞き飽きて文字通りに取ることを諦め、裏の意味ばかり必死で追いかける性格が遺伝子に組み込まれてしまったと思う。多分、諦めたところで堕落が始まったのだと思う。テレビのニュースショウ化はジャーナリズムの規律に欠け結果的に堕落を加速させた。私は青っ白いと言われるかも知れないが、ジャーナリストの役割は政治家の言葉を重く取り事実として伝え、それを文字通りに実行するよう追跡報道し圧力をかけていくのが守るべき一線だと考える。

嘗てベトナム戦争時代、米国政府の発表の言葉と現実の乖離をクレディビリティ・ギャップと呼び、銃弾に倒れる記者が続いたがメディアは真正面から切り込んで事実を報道し追及して行った。イラク戦争ではブッシュ政権支持のFOXテレビが優先され戦場から生の映像が米国民に伝わりにくかったが、カトリーナでは全チャネルが被災状況を刻々と伝えブッシュ非難が一気に高まった。映像のもつ影響をどう生かすか今一度良く考え報道の姿勢を見直してもらいたい。■


コメント (2)
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