小沢民主党幹事長の個人事務所や政治資金を管理する団体「陸山会」、ゼネコン「鹿島建設」の家宅捜索が始まったというニュースを横目で見ながらこの記事を書いている。陸山会が購入した土地の資金4億円の出所を突き止めるのが目的のようだ。
国民に期待された政権交代で、経験不足から右往左往しながらも何とか進めようとしている政治改革が頓挫するかもしれない。足元では世界同時不況からようやく抜け出そうとし、来年度予算を審議直前の極めて重要な時期に、こんなことで政治が混乱している暇は無いはずだ。
日本経済が縮小し雇用が回復せず、限られた財源を使って誤った政策を打つ余裕の全くない最悪のタイミングで起こった。何で今か、日本はついてない。
現実問題として、鳩山首相の政治資金問題と合わせ次の国会で厳しく追及され、混乱で審議が止まるのが最悪の事態だ。最悪ケースは両者とも一旦権力の座に着いてしまうと、その座にしがみつくことが最大の目的になり支持率が低下、外交の停滞や経済政策への悪影響が出ることだ。
かねてから小沢氏の権力志向を好意的に報道するメディアはなかった。これまで報じられてきた小沢的なる手法には私も危惧する。しかし、彼が強く主張する政策、特に政策決定プロセスは高く評価されて良いものが多々あると私は考える。何で今か、もう一度問うて見たい。
国民の大多数が期待して選んだ新政権のトップ2が、政治家として最も巨額の個人資産と政治資金を持っており、その扱いが極めて不透明だったのは偶然なのか、それともそれだけの資金が政権のトップにつくための必要条件だったのか、詳細は藪の中だ。選んだ側にも責任があるが。
何で今か、私は一部で指摘されるような検察の方針が恣意的で変ったとは思わない。これだけ巨額の不透明な資金が、国家の最高権力者だといって放置したのでは検察が信頼を失うという、という強い危機感と決意の程を感じる。議論がそっちに向うと三流国になりそうだ。
総選挙の時点に戻れば、民主党代表が小沢氏から鳩山氏に交代した時点で、高い支持を受けて政権交代を実現した。しかし、この問題を明確に決着しなかったことが今日の強制捜査につながった。このままで民主党の自浄能力が働かないと、派閥が機能した自民党より酷いかもしれない。
鳩山氏や小沢氏の信頼は相当に傷ついた。私は、民主党は最悪ケースでも党の信頼を失わないで、混乱を未然に防ぎ国を守る「プランB」を具体的に作っておくことを強く勧めたい。危機を乗り越えるしたたかな自浄能力を見せてこそ、政権交代を選んだ国民の期待に応えることだ。■